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国民保護法で進む有事体制づくり 武力攻撃より原発震災への対策を急ぐべきだ  【田島五郎 】
http://www.asyura2.com/0502/senkyo9/msg/1115.html
投稿者 愚民党 日時 2005 年 6 月 18 日 06:11:26: ogcGl0q1DMbpk

国民保護法で進む有事体制づくり

武力攻撃より原発震災への対策を急ぐべきだ

http://www.bund.org/opinion/20050625-1.htm

田島五郎

@自治体で住民避難のマニュアル作り

 全国の自治体で「国民保護計画」づくりが進んでいる。昨年6月に成立した「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」(国民保護法)に基づく、住民の避難マニュアルづくりだ。国民保護法は、「武力攻撃事態等における」と明記されているとおり、まさに外国などからの武力攻撃(@着上陸侵攻、Aゲリラや特殊部隊による攻撃、B弾道ミサイル攻撃、C航空攻撃)に備える戦時の法律である。  

 国民保護法の施行を受けて、政府は今年の3月25日に「国民の保護に関する基本指針」を発表、この指針に従って今年度中に各省庁や都道府県、市町村は来年度中に計画を策定することになっている。計画策定後、各自治体は警報の発令や避難訓練等を行うこととされており、政府は早ければ今夏にも自治体住民を交えた訓練を実施する予定だ。  

 また、NBC(核・生物・化学)兵器による攻撃を受けた場合の避難方法や応急措置を記したパンフレットを作成し、国民の危機管理意識を高めるという。消防庁は、武力攻撃の際に通信衛星で各自治体の防災行政無線を自動的に立ち上げサイレンを鳴らすシステムの開発に着手した。  

 なんとも恐ろしい時代を迎えたものである。武力攻撃事態が全くありえないなどと言うつもりはない。理不尽な攻撃が行われた場合には、住民や関係機関が協力して避難・救助を行うのは当り前だ。最低限の備えをしておくことも大切であろう。  

 だが、その想定やマニュアルにどれだけリアリティがあるのかと考えると、はなはだ疑問が残る。鳥取県では、国民保護法を先取りして03年7月に独自に住民避難マニュアルを作っている。それに基づき@弾道ミサイルが着弾した場合、A艦船からの上陸侵攻が予想される場合の2つの有事を想定し図上訓練を行ったところ、県東部3町村の住民約2万6千人を隣の兵庫県に避難させるまでに11日間もかかることがわかったという。また避難する住民と自衛隊の車両が交錯し、道路が混乱状態に陥ることも明らかとなった。  

 国が国民保護計画の策定について自治体の担当者らに行った説明会では、ある担当者がミサイル攻撃について「10分で着弾するのにどう防ぐのか」と問うたところ、政府の説明は「1発目をかわすのは難しいが、2発目や3発目には警報も意味がある」というものだった。  

 JCOの臨界事故を経験している茨城県の担当者は「原子力施設にミサイル攻撃があったら何百万人も避難するが、それだけの人数を収容できる避難先はない」とその非現実性を指摘。米軍基地を抱える神奈川県の担当者は「住民の避難経路を設定する際に、米軍施設はとても悩ましい」と、

 避難の際に基地が障害になることを訴えた。  いくらマニュアルを作ってみたところで、ミサイル攻撃を防ぐこともできないし、攻撃を受けたあとの避難には膨大な日数がかかってしまう。有事の際には道路は自衛隊や米軍が優先して使用することになるため、住民の避難は後回しにされる。基地を抱える街では基地が住民の行く手を阻み避難を妨げる。こうしたことが実際上おきうることだ。マニュアルを作って訓練をすれば多少の「改善」は期待できるかもしれないが、住民の生命を守るのにどれだけ寄与するかは疑わしい。国民保護計画を作ったからといって、攻撃のリスクが下がるわけではないのだ。  

 このマニュアルが真価を発揮するのは、「武力攻撃事態のおそれあり」としてあらかじめ備える必要が生じたとき、つまりそろそろ攻撃が始まるということが想定されるほどに相手国との関係が悪化し、双方が戦争態勢に突入する場合であろう。その時には、軍事展開に有利なように住民をすみやかに避難(=排除)させる必要が生じてくる。  

 「国民保護」とは聞こえがいいが、有事法制は日米共同作戦を遂行するための戦時の法整備にほかならない。有事法制の柱の一つに「米軍行動円滑化法」が定められていることからもそれは明らかだ。住民の救援よりも敵との戦いが優先事項であり、国民保護法は、地域住民が自衛隊や米軍の足手まといにならないようすみやかに避難させることを主な目的にしているものなのである。  

 来年2月に熊本で行われる日米共同図上演習では、陸上自衛隊、米陸軍第1軍団、在沖米海兵隊に加えて、九州・沖縄などの自治体担当者が参加し、住民避難や住民の移動制限なども想定したシミュレーションを行う計画だという。有事に向けた態勢作りは静かに始まっているのである。

A戦時訓練への動員がはじまる

 今後、自治体職員などに対して、武力攻撃を想定した避難誘導などの訓練への参加が求められるであろう。町内会や自治会などに対しても、参加が要請されるかもしれない。国民保護法では「(国民は)協力を要請されたときは、必要な協力をするよう努めるものとする」「協力は国民の自発的な意思にゆだねられる」と、決して強制ではないことを明記している。  

 実際の運用ではどうだろうか。国旗国歌法制定の際、政府は「強制をするものではない」と繰り返し説明してきた。現実には、文部科学省は学習指導要領に基づき国旗掲揚・国歌斉唱を徹底するよう求め、実施状況を毎年調査することで締め付けを強化してきた。  

 東京都を筆頭に各教育委員会は、国旗掲揚・国歌斉唱を職務命令として教職員に通達し、処分をちらつかせながら「服従」を迫った。その結果、ほとんどの公立学校で日の丸が掲げられ、君が代が歌われるようになったのである。  

 同じことが、国民保護法についても行われる可能性は高い。関係してくるのは自治体職員だけではない。政府は武力攻撃事態の際に国民保護の役割を担う「指定公共機関」に160の事業者を選定している。指定された放送局や電気・ガス事業者、バス・トラック・タクシーなどの運輸業者、医師会などは「国民保護業務計画」を今年度中に策定しなければならない。  

 自然災害などへの対応を定めた災害対策基本法での指定公共機関(62事業者)の約2・5倍の機関が武力事態を想定したマニュアルを作らなければならないことになる。これ以外に、各自治体がそれぞれ指定公共機関を指名するようになれば、自然災害対策よりもはるかに多くの労働者が、戦時訓練に動員されることになる。  

 日本民間放送労働組合連合会は、「(武力攻撃事態になったという)政府の判断をそのまま受け入れ、その指示のままに放送を行うのであれば、かつて『大本営発表』を垂れ流した戦前のメディアと何ら変わるところはない」と指定公共機関への指定に反対している。  

 イラク戦争では、様々な形で情報統制・情報操作が行われた。アメリカ国内では米軍から見た映像だけが毎日流され、イラク人の目から見た戦争の現実は報道されることはなかった。イラク攻撃は「大量破壊兵器がある」という大本営発表を鵜呑みにして合理化された。イラクに派遣された自衛隊に対する取材も、いまだ厳しく制限されている。それらに対する真摯な反省抜きに、戦時動員体制がすすめられていくのはあまりに危険だ。  

 繰り返すまでもないが、これは戦時法である。自然災害への訓練とは位相を異ならせるものなのだ。テロやゲリラはともかくとして、侵攻や弾道ミサイルによる攻撃などは、地震などのように突然襲ってくるものではない。ほとんどの場合、それにいたる政治外交的プロセスが存在する。そこでの対応次第で、攻撃を避けることも可能になる性格のものだ。「国民保護」を真剣に考えるならば、攻撃を避ける努力をこそ政府はやるべきなのだ。  

 ところが、小泉首相の靖国参拝や、歴史教科書をめぐる問題など、逆に対立を煽るようなことばかり繰り返しているのが現実だ。攻撃を避けるという最大の防御をないがしろにしたまま、有事への備えを進めるなどというのは、本末転倒もはなはだしい愚策だといわざるをえない

B治安は本当に悪化しているのか

 武力攻撃事態の切迫性はそれほど高まっているのだろうか。平時から備えが必要だというのは一般論としてはその通りだろう。だがそのためには資金と人材が必要になる。  

 財政が困窮し、職員も減っている中で、武力事態に備えて24時間職員を配置して食糧を備蓄し、戦時の避難訓練を行うというのはあまりに負担が大きすぎるという声も自治体から上がっている。  

 内閣府が今年1月〜2月に行った「社会意識に関する世論調査」によれば、「今の日本で悪い方向に向かっている分野」として「治安」と答えた人が約48%に達し、98年の調査開始以来、初めてトップとなったという。こうした社会不安の中で、武力攻撃やテロの脅威が煽られているというのが実際のところだろう。  

 体感治安の悪化に反し、実際の犯罪は減少傾向にある。なぜそのような逆転現象が生じているのだろうか。02年に社会安全研究財団が行った「犯罪に対する不安感等に関する世論調査」によると、1年前と比べて日本で治安が悪化していると答えた人は61%に達しているが、自らの居住地域で治安が悪化したと答えた人は11%にすぎなかった。身の回りでは治安の悪化は感じないが、「テレビや新聞でよく取り上げられるから」治安が悪化しているように感じているという姿が、そこからは浮かび上がってくる。  

 『日本警察崩壊』などの著書のある小林道雄氏は、体感治安が悪化している背景には警察自身の問題があると指摘している。80年代まで、警察は検挙率維持のために自転車やバイクの窃盗犯を捕まえるのに精を出していた。そうすれば、とりあえず高い検挙率が保持できるからだ。  

 ところが88年に警察はこうした悪弊を改め、凶悪事件に捜査の重点を移すようになる。当然ながら検挙率は低下。その穴を埋めようと今度は、届けのあった事件のいくつかをもみ消し、事件数を減らすことで検挙率を高めようとしてきた。しかしそれも、桶川事件の発覚などによりできなくなり、これまでもみ消していた事件もカウントされることになる。事件数は増加するが、検挙数に変わりはないため必然的に検挙率は悪化する。これが検挙率低下の実態だというのだ。  

 事件の凶悪化についても同様だ。検挙率維持に汲々としていた時は「強盗傷害事件」を「窃盗および傷害事件」として処理するなど、凶悪犯罪の発生を少なく見せかけていた。最近では、万引きが見つかり逃げようとして店員に怪我をさせただけで「強盗致傷」として少年を逮捕するなど、意図的に凶悪事件に仕立て上げている。凶悪事件や少年犯罪の増加、検挙率の低下などを煽ることで、警察官の増員を図ろうとしているというのだ。  

 つまり、凶悪犯罪の件数も検挙率もほとんど変わってはいないのだが、警察内部のお家の事情で「数字が変化」しているだけなのである。それをあたかも「安全神話」が崩壊したかのように報じているのだ。その結果、身の回りではさほど治安の悪化を感じていないにもかかわらず、「日本はどうも治安が悪化しているようだ」という気に人々をさせてしまっているのである。  

 こうした中で、安全を守るためには多少の自由の制限もやむをえないという風潮が作られつつある。「テロ対策」という名目なら何でも許されるような社会的雰囲気だ。立川の自衛隊官舎へのビラ入れに対する弾圧をはじめとして、反戦を掲げる者は様々な手段で弾圧する。国旗・国歌の強制に見られるように、相互監視を強め異分子をあぶり出し排除する。なんとも生活しにくい世の中になったことか。  

 意図的に作り出される治安悪化、テロの恐怖というものに惑わされることなく、個々人が正しい情報を見極め対処することが必要な時代を迎えている。

C原発震災こそ「今そこにある危機」

 今の日本が直面する現実的な危険は何か。それは、地震や台風など、相次ぐ自然災害だ。温暖化の影響によると見られる台風の異常発生で、昨年は各地で大きな被害を受けたことは記憶に新しい。新潟県中越地震、福岡県西方沖地震など、この数年大きな地震も明らかに増えている。いまや日本列島が地震の活動期に入ったことは、多くの専門家の一致する見方だ。  

 このような事態への対策こそ、国が取り組むべき喫緊の課題ではないのか。とりわけ、地震による原発震災の危険性は日増しに高まっている。最もその危険性が高いと指摘される浜岡原発の直下では、巨大地震発生に向けたカウントダウンが始まっている。  

 研究によれば東海地震のような海溝型の巨大地震の前には、M6〜7クラスの中規模の直下型地震が繰り返し起っていたことがわかっている。新潟県中越地震や福岡県西方沖地震がその中規模地震であるとするならば、今後海溝型の巨大地震に向かってますます地震が頻発することになる。地震の活動期を迎えた地震列島日本には、たくさんの原発や原子力施設が稼動している。それこそ「今そこにある危機」だ。  

 政府が示した国民の保護に関する基本指針では、原子力施設が武力攻撃を受けた場合のことも記されている。  地域を定めない警報が発令されたときは、「すべての原子力事業者は、ただちに原子炉の運転停止に必要な措置を講ずる」とし、武力攻撃事態では、経産相は「ただちに原子炉の運転停止を命ずる」という。原子力施設がそれだけ危険なものだという認識を政府も持っているということだろう。  

 しかし警報が発令される前に原子力施設が武力攻撃を受けた場合はどうするのか。世界最強の軍事力を誇るアメリカですら、航空機によるテロ攻撃を防ぐことはできなかった。原発の屋根に航空機が突っ込めば、原発はひとたまりもない。いくら万全の警備を敷いても、原子力施設が攻撃対象とされる危険をなくすことは不可能なのだ。  

 巨大地震は航空機などによる武力攻撃に匹敵する破壊力を持っている。揺れ方しだいで、いとも簡単に原発をメルトダウンさせてしまうかもしれないのである。  

 テロ攻撃などと違って、地震被害は広範囲におよぶ。建物が倒壊し、橋が崩れ、道路が寸断される。あちこちで火災が発生し、通信も遮断される。国民保護計画で想定する事態をはるかに超え、避難経路もずたずたになっている状況のなかで、住民はただ逃げ惑うことしかできない。真剣に考えれば、原発震災の際には住民を安全に避難させることなどできはしないのだ。  

 放射能被害の影響は想像を絶するものがある。チェルノブイリ原発事故から19年を過ぎても、いまだその被害は収束を迎えていない。ウクライナの民間組織「チェルノブイリ身体障害者同盟」によれば、チェルノブイリ原発事故の影響で死亡した人は、過去19年間で150万人以上にのぼるという。ウクライナ国内の被曝者は約350万人、うち放射能遺伝で被曝した児童が120万人に達する。  

 ロシア政府も最近、被曝者名簿を作成し、ロシア国内の被曝者を145万人、うち児童が22万人と発表した。原発1基の事故によって被曝者総数は500万人を数え、150万人以上の命が奪われたのである。  

 幼少時に被曝した若者たちは今、結婚し家庭を築く年齢を迎えている。そしてその多くが「甲状腺の病気などが遺伝するために子どもを産めない」という深刻な悩みを抱えているのである。原発事故というのは、未来世代に対しても多くの犠牲を強い続けるものなのだ。  

 原発事故を防ぐことはそう難しいことではない。原発をなくせばいいのである。それが決して不可能でないことは、脱原発を選択したEU諸国が、自然エネルギーの普及などの努力によって実証しつつある。「平時から備える」というのならば、地震の活動期に入ったこの日本で、原発をなくすことの方がよほど建設的な選択だろう。  

 原子力安全基盤機構の試算によれば地震で浜岡原発が壊れメルトダウンを引き起こす可能性は40年間で2・4%にも達する。交通事故で死亡する確率の6倍だ。それへの対処をないがしろにしたまま、なぜ今戦争への準備なのか。本気で「国民」を守る気があるなら、まず原発をとめるべきだ。    

(フリーライター)


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