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【政治面】2005年06月16日(木曜日)付
古賀発言、遺族会に波紋 継続求め緊急会議へ
日本遺族会の会長である古賀誠・元自民党幹事長が、小泉首相の靖国神社参拝について「近隣諸国に配慮が必要だ」などと発言したことが波紋を広げている。一部報道で発言が、首相の参拝自粛を求める「遺族会の新見解」とされたこともあって、遺族会は17日に緊急の会議を開き、改めて首相の靖国参拝を求める立場を確認する。古賀氏の発言には、「アジア重視」をポスト小泉に向けた対立軸にしようとする思惑もにじんでいる。(野嶋剛)
「全国に困惑が広がっている。都道府県の人たちを集め、状況を正しく説明させてほしい」
遺族会専務理事の水落敏栄参院議員(自民)が古賀氏にこう言ったのは13日夜。問題になった11日の遺族会の非公式幹部会合の2日後だった。
複数の関係者の話を総合すると、自ら正副会長ら幹部を非公式に招集した11日の会合で古賀氏が言ったのは、(1)新たな国立追悼施設には反対する(2)首相の参拝はありがたいが、近隣諸国にも気配りと配慮が必要だ(3)A級戦犯の分祀(ぶんし)問題では政治が宗教に介入すべきではない――だった。
ただ、出席者の受け止め方は「個人的感想」から「会長としての話」まで分かれた。事態がこじれたのは、発言の位置づけがはっきりしないまま、首相に参拝自粛を求めた「遺族会の見解」と一部で報じられたためだ。
翌12日から遺族会の本部や支部に会員から「配慮とは参拝自粛を意味するのか」「首相はきぜんとして靖国に参拝すればよい」といった抗議が相次いだ。
水落氏の要請を、古賀氏は13日の時点で了承。同日、記者団にも「発言は私見だ」と語った。
日本遺族会は、首相の参拝実現を運動の柱に掲げてきた。01年の自民党総裁選のさなか、小泉首相は靖国神社参拝を公約した。首相就任後も4年連続で参拝を続けている。遺族会内部で首相に対して「恩人」との声があるのはそのためだ。
一方、遺族会の立場から古賀氏が、首相に「助け舟」を出したこともあった。02年2月、会長に就任した古賀氏は「8月15日の前後の参拝にこだわるのではなく、心の問題だ」と語り、4月の中韓両国訪問の際は「(遺族会としては)終戦記念日にはこだわらない」とサインを送った。
首相は政権2年目のその年、01年のような終戦記念日近くを避け、4月に参拝する道を選んだ。
●ポスト小泉にらむ?
もっとも、遺族会の内部から反発が噴き出したことを考えると、古賀氏発言が、ただ靖国問題解決への環境整備を狙ったものとは考えにくい。
古賀氏は、首相の参拝を推進する基本的立場は変えていない。だが、最近になって「(中国の参拝中止要請に)『内政干渉でけしからん』というだけですむのか」と繰り返し語る。外交路線についても「アジア重視」への転換を唱えている。
同時に、かつて同じ派閥だった「親中派」の加藤紘一元幹事長とも頻繁に接触を重ねる。日中関係改善の糸口を探るために20日から訪中する加藤氏の求めで、同行する堀内派の若手議員の人選にもかかわった。
古賀氏の発言は、与党内で高まる首相に参拝中止を求める声と連動しているかに見える。古賀氏も、参拝を明言する安倍晋三幹事長代理らとは違う勢力の結集へ流れをつくろうとしたのではないか――。党内には「ポスト小泉」選びとの関係で、そう解説する声が少なくない。
「遺族会の見解」ではないにしろ、同会会長である古賀氏が首相の靖国参拝自粛を求めた重さは消えていない。党内のベテラン議員は、こう漏らした。「古賀さんはちょっと、先走りすぎてしまったかな」
◇ ◇
◆キーワード
<日本遺族会> 戦没者遺族による全国組織。47年に日本遺族厚生連盟として創設され、53年に財団法人となった。正確な会員数は公表していないが、公称「100万世帯」。主な活動は、遺族の処遇改善。「英霊の顕彰事業」として首相の靖国神社参拝を求めているが、公人・私人の区別は問わず、8月15日にもこだわっていない。
同会の政治団体には「日本遺族政治連盟」があり、実際の選挙運動を行う。参院に2人の同会出身議員を出し、衆院でも遺族出身などの複数の重点候補を支援する。自民党有数の支持団体だが、「参院全国区で100万票」と言われた集票力は会員の高齢化で、弱体化が指摘されている。
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◆日本遺族会と首相の靖国神社参拝
47年 日本遺族厚生連盟設立
53年 財団法人日本遺族会に
59年 千鳥ケ淵戦没者墓苑が完成
62年 A級戦犯として終身刑判決を受け、後に釈放された賀屋興宣元蔵相が会長に
78年 靖国神社が東条英機元首相らA級戦犯14人を合祀(ごうし)
80年 遺族会出身の板垣正氏が参院全国区で約92万票で当選
85年 中曽根首相が初の公式参拝
86年 中曽根首相が近隣諸国の反発を理由に参拝見送り
93年 太平洋戦争を「侵略戦争」と呼んだ細川首相に対し、「自衛戦争だ」と抗議
96年 橋本首相が誕生日に参拝
01年 参院比例区で遺族会出身の尾辻秀久氏が約26万票で当選
小泉首相が就任、8月13日に参拝。遺族会は謝意を表明
02年 福田官房長官の懇談会が「無宗教の国立の戦没者追悼施設が必要だ」と提言をまとめたが、遺族会は反対
04年 参院比例区で遺族会出身の水落敏栄氏が約17万票で当選
http://www.asahi.com/paper/politics.html
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