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横浜事件の再審支持、「有罪」60年の扉開く(読売新聞)【戦時下の言論弾圧を暴く重大な勝利だ!】
http://www.asyura2.com/0502/senkyo8/msg/929.html
投稿者 happyblue 日時 2005 年 3 月 11 日 00:05:24: BaRfZQX6fAfSk

@横浜事件の再審支持、「有罪」60年の扉開く(読売新聞)

 再審の重い扉が再び開いた――。戦時下最大規模の言論弾圧と言われる「横浜事件」で、東京高裁は10日、1審・横浜地裁決定に続いて、再審開始を認めた。治安維持法による有罪判決の言い渡しから60年。冤罪(えんざい)を訴え続けた元被告たちはすべて他界している。「歴史の重い階段を一つ、しっかりのぼった」。過去と向き合う姿勢を示した司法に、元被告の遺族たちには新たな希望が広がった。

 再審を請求した元中央公論社社員・木村亨さん(故人)の妻・木村まきさん(56)らは午前10時半、東京・霞が関で記者会見を開き、「あまりにおいしい物を食べると、言葉に詰まることがありますが、今はそういう実感です」と、決定文を見つめながら笑顔で、喜びを表現した。

 「はじめ、決定文を見たときは、(抗告)棄却という言葉が目について、これまで、棄却ばかり言われてきたので、一瞬負けたのかと思いました」と苦笑した。その上で、「戦後60年の年に、歴史の重い階段を一つ、しっかりとのぼったと実感しています」と感慨深く語った。

 さらに、高裁決定が警察官の拷問を認めた点について、「やっと肝心のところが認定されてうれしい。国は謝罪して欲しい」と、強い口調で訴えた。

 また、弁護団は「決定を歓迎するとともに、充実した再審公判の速やかな実現と再審無罪を目指して奮闘する」との声明を発表。森川金寿弁護団長は「こてんぱんに検察側の主張を粉砕した決定だった。たくさんの人々の力が集約され、勝利を得られた」と述べた。

 横浜事件では、1986年以降、これまで4回の再審請求が申し立てられた。

 1次、2次請求は、無罪を主張する元被告らが、拷問の有無などを争点に掲げたが、裁判所は「当時の裁判記録が消失し、事実確認ができない」などとしていずれも請求を棄却。「時の壁」が立ちはだかった。

 流れが変わったのは、弁護団が「判決時点で治安維持法は失効していた」として、「法適用の誤り」を最大の争点に据えた第3次請求から。横浜地裁は03年4月、この主張を認め、再審開始を決定した。これに対し、この日の東京高裁決定は拷問があったと認め、自白の信用性に疑問があるとして再審開始を認めた。

 1次請求を起こした1人である木村さんは「共産主義を宣伝した」という容疑で逮捕され、45年9月に有罪判決を受けた。取り調べについて、木村さんは著作集で「こん棒や竹刀で殴られて調書に押印させられた」と振り返っている。「国にわびさせるまでは死ねない」と再審請求の中心となって活動していたが、3次請求1か月前の98年7月、82歳で死去。その遺志を遺族が引き継いだ。

 ◆再審制度の趣旨、最大限に尊重◆

 東京高裁は、1審とは全く異なる角度から、戦時体制の代名詞とも言える治安維持法違反で、終戦後に処罰された元被告側の訴えを認め、再審に道を開いた。同法による言論・思想弾圧で広く行われていた特高警察の拷問と自白の強要を重くみた判断だ。

 横浜事件の第1次、第2次再審請求で、再審の道を阻んできたのは、終戦直後の混乱で裁判資料が失われ、再審を開始すべきケースかどうかの判断ができない、などの理由だった。このため、第3次請求で弁護団は、「『民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障害を除去すべし』との条項を含むポツダム宣言の受諾が、民主主義に反する治安維持法を無力化した」とする法律論を前面に掲げた。

 横浜地裁は、思い切った法律解釈でこれに応え、再審開始の道を開こうとしたが、そもそも「事実認定の誤りによる冤罪を正すのが再審制度であり、法解釈論は再審の理由になじまない」との有力な反論があった。

 そこで同高裁が着目したのは、横浜事件の捜査に当たった警察官が、暴力的な取り調べを行ったとして特別公務員暴行傷害罪で有罪判決を受け、確定しているという事実。この事実と、自らが体験した拷問について語った元被告らの陳述書を合わせて評価すると、確定判決を揺るがす「新証拠」と認められると判断した。

 元被告の遺族たちが、戦後60年を経ても、再審を求めてやまないのは、「戦後、思想弾圧の象徴として否定された治安維持法での有罪判決が、なぜ取り消されないのか」という元被告らの思いを引き継いでいるからだ。それに応えるべく、訴訟資料の紛失という壁を乗り越え、治安維持法下の捜査の実態に正面から切り込んだ高裁の決定は、「誤判からの救済」という再審制度の趣旨を最大限に尊重したものとして評価されるだろう。(恒次 徹)
(2005/3/10/15:41 読売新聞) 
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20050310i410.htm

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