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各種世論調査によると、首相にふさわしい人として安倍晋三氏の名前がトップにあがっている。朝日新聞の世論調査(1/31付記事)では回答者の11%が、また毎日新聞(2/13付記事)の調査では22%の人が安倍氏の名前を挙げており、どちらの調査でも首相にふさわしい人の1位となっている。
内閣支持率、最低の33% 女性で急落 本社世論調査(1/31 朝日新聞)
次の首相候補の名前を国会議員の中から挙げてもらったところ、安倍晋三・自民党幹事長代理が11%で1位、次いで岡田克也・民主党代表が7%、小沢一郎・民主党副代表が4%、菅直人・民主党前代表が3%。民主党の国会議員の名前を挙げた割合が14%で、自民党の国会議員の名前を挙げた人の13%を上回ったが、最も多かったのは名前を挙げなかった人で、全体の66%にものぼった。
世論調査:「首相にふさわしい人」安倍氏トップ、首相2位(2/13 毎日新聞)
毎日新聞は11、12の両日、全国世論調査(電話)を実施した。「今、首相に最もふさわしいと思う政治家」を尋ねたところ、自民党の安倍晋三幹事長代理が22%で1位、小泉純一郎首相は17%で2位だった。
しかしこれまでの安倍氏の言動を見る限り、残念ながら安倍氏には首相としての資質が備わっていないと言わざるを得ない。私がそう考える理由は次の3点である。(1) 安倍氏は、他人に要求する基準を自分は満たさない、言わば他人に厳しく自分に甘いダブルスタンダードであること。(2) 巧妙にレトリックを弄することによって、しばしば自分に都合のいいように「ごまかし」を図っていること。(3) 自分の推論を、根拠が乏しいにもかかわらず現実であると信じ込んでいること。
以下、順番に詳しく見ていくことにする。
(1) ダブルスタンダード
以前、1/19付の記事「安倍氏のダブルスタンダード」や、1/23付の記事「NHK番組改変問題:VAWW-NETジャパン、安倍氏に対して公開質問状」で書いたように、安倍氏は内部告発を行った長井チーフプロデューサに対して、主張内容の具体的な根拠の説明を要求する通知書を送付し、到達後3日以内の回答を求めている。
しかしVAWW-NETジャパンから安倍氏に対して、1/20付で送付された「安倍晋三氏宛公開質問状」では、「1月25日までに回答をいただきますよう、お願い申し上げます」と書かれているにもかかわらず、現時点までに安倍氏が回答した形跡はない(安倍氏の公式ホームページであるあべ晋三のホームページには、平成17年1月17日に朝日新聞に向けて発した通知書の写しと回答や平成17年1月21日に朝日新聞に向けて発した通知書(その2)写し等は掲載されているが、VAWW-NETジャパンに対する回答についての記述はない。またVAWW-NETジャパンのホームページ上でも、安倍氏からの回答があったという報告はない)。
つまり安倍氏は、他人に対して質問するときには期限を切って回答を要求しているにもかかわらず、逆の立場になると期限内の回答をしていないようなのである。
また、次の(2)にも少し関係するが、安倍氏はVAWW-NETジャパンが主催した女性国際戦犯法廷の検事のうち北朝鮮国籍の2人について、テレビの生放送中で実名を挙げて北の工作員だと断言した。しかしその具体的な根拠は何も示さず、抗議や発言の撤回を求められても「(工作員ということを)確信をもって申し上げている」というに止まり、ここでもまた自らの発言が正当であることの証明を行っていない。しかし安倍氏は、内部告発を行ったNHKの長井チーフプロデューサについて、「長井さんがそれが正しいというのであればそれを証明していただきたい。でなければそれは是非とも謝罪をしていただけなければならないと思いますね」と語っている(1/13 報道ステーション)。つまり安倍氏は、他人に対しては発言内容の証明を求め、それができない場合には謝罪まで求めているにもかかわらず、逆の立場に立たされると「確信をもって申し上げている」と言うだけで、発言内容を証明できていないにもかかわらず、謝罪するつもりも無いようだ。
このような、他者に対して要求する水準を自分では満たさない、他人に厳しく自分に甘いダブルスタンダードは、もしそれを総理大臣の立場でされたらたまったものではない。さらに言えば、このようなダブルスタンダードを総理大臣の立場で他国に対して行われたならば重大な外交問題を引き起こしかねない。
つい先日も、年金問題について公開の場で討議することを求める民主党について、安倍氏は公開の場ではなく非公開の与野党協議で扱うことが適切だと語っていた。しかし思い起こせば、NHK番組改変問題について安倍氏は、公開の場で討論することを盛んに求めていたはずである(NHK特番問題:安倍幹事長代理「公開討論を」(1/27 毎日新聞))。2つの問題についての態度が、なぜこうも違うのか。理解に苦しむ。
(2) 巧妙なレトリックによる「ごまかし」
もし、NHK番組改変問題について、今ごろになって朝日新聞が「安倍氏と中川氏は、NHKに圧力をかけたと言われている人たちです」などと書いたらどうなるだろう。圧力をかけたと最初に主張した当の朝日新聞が、後になって「〜と言われている」などという言葉で客観報道を装うならば、おそらく相当な批判を受けるはずである。それは、巧妙に言葉を変化させることで、最初に情報を流布させたのが自分であることをごまかすことに他ならないからだ。
ところがこれと同じ「情報源のごまかし」を実際に行っているのが、安倍氏である。先にも少し触れたが、安倍氏は1月13日の「報道ステーション」生放送中に次のように述べている。
(女性国際戦犯法廷の)検事にですね北朝鮮の代表者が2人なっているんですね。この検事は●●●氏と●●●氏(放送では具体的な氏名を挙げている)って人がなっているんですが、この2人はですね、これはもういわゆる"工作員"として認定されていて、その後日本はビザを発給していないんですよ、この人物達には。いわゆる"工作活動をしている"という認定が有ったんですね。
ところがそれから約1ヶ月後の2月14日、「NEWS23」に生出演した際には、この2人について「北朝鮮の工作員と言われる人も検事役で出ている」と、微妙に発言を修正している。また最近の「諸君」や「正論」の4月号でのインタビュー記事でも同様の発言を繰り返し、もともとこの話を言い出したのが自分であることをごまかしている。
このような安倍氏の「ごまかし」は、実は今回が最初ではない。2002年5月13日に早稲田大学の授業にゲストとして呼ばれた安倍氏が、「核兵器の使用は憲法上、問題ない」などと発言をしたことを「サンデー毎日(2002.6.2号)」がスクープし、大きな問題となった際にも、安倍氏は国会答弁等で巧妙な「ごまかし」をしている。
この件について安倍氏はまず国会の答弁で、大学の教室にサンデー毎日が盗聴器と盗撮ビデオを仕掛けたて記事にしたと、何ら根拠を示すことなく断定した。つまり事実上、国会という正式な場で、サンデー毎日の関係者が大学の教室に不法侵入したと証拠も示すことなく断定したのである。当然のことながら安倍氏のこの発言に対して、そのような事実を示す具体的な証拠を示すよう野党議員から質問が出された。しかし書面(質問主意書)や国会の質疑で、再三にわたって証拠の有無が問われたにもかかわらず、安倍氏は質問を巧妙にはぐらかし、ついに証拠の有無について答えることはなかった。
たとえば民主党の長妻議員から「(盗聴器と盗撮ビデオを週刊誌が仕掛けたという)物的証拠というのはあるのですか」と問われた安倍氏は、「委員(長妻氏のこと)から既に質問主意書を四回、そして、武力攻撃事態対処法を審議すべきこの貴重な委員会でさらに御質問をいただいているわけでございますから、委員は恐らくそれをやった実行犯について確証を思っておられるのだろう」などと答弁している。さらに「では、(物的証拠は)あるんですか、ないんですか」とさらに畳み掛けられると、「そこには学生の諸君と教授しかいない。では、委員(長妻氏)は学生がやったと言っているのですか?」などと議論をすりかえている。
これら一連のやりとりは、衆議院武力攻撃事態への対処に関する特別委員会議録(平成14年7月3日水曜日)に掲載されているが、これを読むと、安倍氏がいかに自分に都合のいいようにレトリック弄して「ごまかし」を行うかが分かり、興味深い。
さらに、答弁にも出てきた「質問主意書」も見てみることにしよう。一問一答形式の答弁では不十分でも、物的証拠の有無について十分に検討する時間的余裕があるはずの書面では、それなりに内容のある回答となっているかもしれないからだ。しかし4回にもわたって提出された質問主意書とそれに対する回答とを読むと、そのような期待はあっさりと裏切られる。
大学の教室に週刊誌が盗聴器と盗撮ビデオを仕掛けたとする、安倍官房副長官の国会発言の根拠に関する再質問主意書(平成十四年六月二十五日提出質問第一一四号)
一 物的証拠はあるか、物的証拠はないか、どちらかでお答え願いたい。
二 回答できない場合は、その理由をお示し願いたい。
これに対する回答書では、質問内容と関係のない「政府の大陸間弾道弾(ICBM)の憲法解釈等」について長々と書いたうえで、次のように答えている。
衆議院議員長妻昭君提出大学の教室に週刊誌が盗聴器と盗撮ビデオを仕掛けたとする、安倍官房副長官の国会発言の根拠に関する再質問に対する答弁書(平成十四年七月二日受領答弁第一一四号)
御指摘の答弁は、主催者が取材を認めていなかった場における同副長官の発言等が関係者の許可なく報道されたこと等を踏まえて行われたものと承知している。
証拠があるかないか「どちらかでお答え願いたい」という質問に対する回答が、これである。まさか安倍氏は、日本語の読解能力に欠けているなどということは考えにくい以上、意図的にごまかしを図っているとしか考えられない。
このような、巧妙なレトリックによって自分の都合のいいように「ごまかし」を図ることは、これもまた、もし総理大臣の立場でされたらたまったものではないし、他国との間に重大な外交問題を引き起こしかねない。
(3) 自分の推論に対する強い信じ込み
安倍氏は、「報道2001」や「サンデープロジェクト」に出演した際、NHK番組改変問題について「4年前の問題がなぜ今ごろ取り上げられるのか。大きな構図で動いている。海老沢会長はじめNHK批判が高まっている今を狙い、また、北朝鮮に対して、経済制裁等厳しい対応をしている私と中川大臣への狙い撃ちという意図を感じる」「今回の報道は思想的な背景があり、私のイメージダウンを図り、目障りな安倍・中川を消し去りたいという意図があると思う」などと語り、この問題の背景には北朝鮮の謀略があると示唆している。どうやらこれは単なるレトリックではなく、安倍氏は本気でそう信じているようだ。たとえば彼は、公式ホームページで次のように書いている。
朝日新聞の記事『NHK番組に中川昭・安倍氏「内容偏り」 幹部呼び指摘』に関し(1/12付投稿)
(問題の発端となった1/12付朝日新聞記事について)これは拉致問題に対する鎮静化を図り北朝鮮が被害者としての立場をアピールする工作宣伝活動の一翼も担っていると睨んでいた。告発している人物と朝日新聞とその背景にある体制の薄汚い意図を感じる。
夕刊フジ 連載記事「挑戦する政治2」(2/5付投稿)
公安関係者によると、北はいま朝鮮総連などを通じて、制裁阻止のための工作活動を必死に展開しているという。
(中略)
朝日新聞が先月、私と中川昭一経済産業相(前拉致議連会長)を狙い撃ちして、「NHK番組に政治介入した」という捏造記事を掲載したが、こうした流れの中にあると考えれば、すべての謎は解けると思う。
しかし冷静に考えてみよう。もし安倍氏の推理が正しいとすると、VAWW-NETジャパンも朝日新聞社もNHKの内部告発者も、ともに連携しながら北朝鮮の手先となって、日本で工作活動をしていることになる。ここまでくると、もうトンデモ本の世界である。ここでもまた、「サンデー毎日」の時と同じように、根拠の乏しい自分の推論を強く信じ込み、それをあたかも事実であるかのようにテレビ番組やホームページで繰り返し訴えている。
どうやら安倍氏には、自分に批判的な人たちは、不法な手段を使っているとか、あるいは北朝鮮の手先であるなどと思い込む傾向があるようだ。以前にも、次のような信じられないような発言をしている。
報道機関に工作と安倍氏 細田長官は「認識ない」(2004 7/8 共同通信)
自民党の安倍晋三幹事長は八日の大阪市内での街頭演説で、北朝鮮への制裁を念頭に置いた特定船舶入港禁止特別措置法の成立に関連し「北朝鮮は法律をつくらせないよう大変なお金を使った。工作も行った。新聞社、テレビ局にも、学者、評論家、コメンテーターにも(工作を)行った」と述べた。ただその根拠には言及しなかった。
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他人に厳しく自分に甘いダブルスタンダード、巧妙なレトリックによる「ごまかし」、根拠が乏しい自分の推論に対する強い信じ込み。どれを1つ取ってみても、国内的にも国際的にも重大な問題を引き起こしかねない問題であり、総理大臣としての資質を疑うのに十分である。
いくら世論調査で人気があるとはいえ、安倍氏は総理大臣としてふさわしい人とは思えない。