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「市民の力で政治を変える新聞」ACT(アクト)への寄稿。
公共放送NHK抜本的改革は放送団体による時間の分割
〜市民の電波メディアに関する主権者意識が不可欠〜
木村愛二(68歳・武蔵野市在住)
私は、元・日本テレビ社員であり、メディア関係の著書が多いが、NHKに関しても、『NHK腐蝕研究』(1981年、汐文社)、『電波メディアの神話』(1994年、緑風出版)がある。
『NHK腐蝕研究』は初版2刷、5千部を売り切り、目下、絶版、木村書店から改訂新版の発行を準備中であるが、その全文をインターネットで無料公開している。以下のURLである。
http://www.jca.apc.org/~altmedka/nhk.html
NHK関連の情勢激動の折から、短い文章で、NHK抜本的改革を論ずるのは困難であるが、与えられた紙面の範囲内で、中心的な問題のみを、拙著、『NHK腐蝕研究』から抜粋し、要約する。
拙著の第五章「NHK《官廷》の華麗なる陰謀を撃つ」の中には、海外放送事情の紹介に「操作」と題する項目がある。「操作」としたのは、当局とNHKが都合の悪い事例を積極的に紹介しないからである。
郵政省電波監理局(当時)は、海外放送事情について、おもにアメリカを参考とし、ついで「ヨーロッパ諸国のうち代表的な英国、フランス、西独の放送事業の現況」(『通信白書』)を報告するというやり方を取っている。もちろん、なにが「代表的」なのかは、まったく説明されていない。
ところが、日本の放送界の現場で、海外に関心のある人々が眼を向けているのは、オランダ、イタリアである。スウェーデンも面白いが、オランダとイタリアを代表として、簡略に紹介する。
イタリアの放送協会RAI改革要綱では、(1)経営評議会のメンバーを増員し、野党代表を加える、(2)評議会は『放送政策国民会議』を設け、地域代表や労組代表も参加させる、(3)テレビ2系統、ラジオ3系統の番組部門を独立させ、とくにそのニュースについては、たがいに独自の編集を行わせる」となっている。
オランダの放送事情は、政権まで左右したというのだから大変である。評論家の志賀信夫は、オランダの現地におもむき、一九七〇年十二月と翌月の『TBS調査情報』誌に「所かわれば……オランダ放送物語」を連載した。『テレビの使い方』(エルム一九七六発行)にも、その見聞記はおさめられている。
NHKの発行資料、『放送文化』(1969・6)も、「オランダ新放送法、その背景」をのせていた。それによると,「一九二三年から二五年までに成立した5つの放送組織(プロテスタント系2、カトリック、中立、労働党系各1)が5本の柱としてオランダの放送制度を長く支えてきたとあり、その放送制度の歴史がラジオ発足以来のものということがわかる。
つづいて同誌は3年後にも「岐路に立つオランダ放送制度」をのせ、別表(上記のURLに画像あり)のような放送団体の状況を報じている。そして、オランダの現在の放送制度は、1923年にラジオ放送局を設立した民間会社が、「経営不振のために間もなく放送事業から手を引き、聴視者団体がその肩代りをした」ところに出発点を持つことなどを教えてくれる。放送団体の会員は、その団体が発行する雑誌などを購読し、電波発信の場としての放送局維持のために、受信料を払うのであるが、むしろ、積極的に、送信料と考えるべきである。
いま、NHKは、受信料不払いの激増に直面している。これはまさに、千載一遇の好機なのである。「受信料不払い」とか「支払停止」を提唱する向きもあるが、それだけでは消極的である。
オランダの前例に見習って、放送の中身にも責任を持つ視聴者団体をつくり、会員数に応じて放送時間を配分するようにすれば良いのである。そのためには、市民の電波メディアに関する主権者意識が不可欠である。