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人権法案を問う 辛淑玉さんインタビュー
政府・与党が、二〇〇三年に廃案となった人権擁護法案の今国会再提出を目指している。人権救済機関を法務省外局につくり、メディア規制も行う法案に反対してきた民主党や部落解放同盟も、なんらかの人権救済法案づくりには賛成した。解放同盟と女性、在日外国人、障害者、学者、弁護士らは対案の「人権侵害救済法試案」をつくったが、もし与党案の修正協議が中心の条件闘争色が強まると、顧みられなくなる。
試案づくりに間接的にかかわった人材育成コンサルタントの辛淑玉さんは「人権の大義で戦争する米国を見れば、人権は権力者の新しい“カード”だ。カードを切った与党に今の反対勢力では勝てないが、大事なのは負け方だ」と言う。
(社会部・市川隆太)
――与野党協議でマイノリティー(少数者)の意見が反映されるか。
マイノリティーに関し、与野党とも無知。イラクの日本人人質事件後、民主党幹部に「在日外国人の私が人質になったら民主党は助けてくれるか」と質問したら、「世論が支持しない」と答えた。政治家は外国人を犯罪者予備軍か低賃金労働力として見ており、在日コリアンのように「国民」の枠からはずれた者、一票を持たない者は意識の中にもない。法案の中身も理解していないだろう。
――汚職政治家らへの取材を妨げるメディア規制条項もあり、問題だ。
分かる。でも、イラクでの人質をたたいた雑誌が「メディア規制反対」と叫ぶのを見ると吐き気がしたし、批判しない他社も人権を語れるのか。声を上げられぬほどたたかれた人のために闘って解決したことがあるのか。被害者は生き抜くのに精いっぱいで、メディア規制に反対する余裕もない。
ドメスティックバイオレンス、ストーカー、セクハラの被害者も、そう。彼女たちを救っているのは警察です、国家権力です。国家が最大の人権侵害をするという従来型発想だけでは、国家が保護する人権という新しい概念を理解できない。
法務省外局に人権委員会(仮称)をつくる、もってのほかの法案だが、人権救済が明文化されれば民事訴訟などで武器になる。たたかれている者は「小さなニンジン」でもうれしいし、転ぶんです。だから、与党案にだって飛びつきたくなる。東京都の管理職受験資格が否定されたように、在日コリアンも一貫して無権利状態。われわれマイノリティーは今、なんの保護もない「奴隷」なんですよ。
――にもかかわらず、与党案に反対の理由は。
自民党は憲法すら解釈で骨抜きにしてきたから、今度も「人権」を盾に良識あるメディアの息の根が止められる。物言えぬ社会になるばかりか、戦争への道につながる、とんでもない悪法です。反対運動の仕切り直しが必要。たとえ負けても「これはまずいぞ」と思わせる負け方ができれば、政府・与党の暴走は防げる。同時に、人権カードを使い、味方のふりをしつつ自らの既得権だけ考える人や組織は…、私は絶対に許さない。
――在日外国人に指紋押なつを強制した人たちが、今度は辛さんたちの人権を守ります、と言っている。感想を。
吐き気がします。悪夢ですよ。
◇ ◇
被差別部落出身者を中傷する悪質な差別はがき事件が、つい最近も起きた。許し難い差別をなくす法律の制定が急務となっている。それとともに、女性、障害者、在日外国人、難民、犯罪被害者、受刑者などの人権をどう守っていくのか。当事者の声を随時紹介する。
しん・すご 1959年、東京都生まれの在日3世。人材育成会社「香科舎(こうがしゃ)」代表。ビジネスショーなどの運営、官庁、企業の研修を手がける。人材育成、人権に関する講演などは年間百数十本に及ぶ。明治大学政治経済学部特別招聘(しょうへい)教授、神奈川県人権啓発推進会議委員。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20050306/mng_____kakushin000.shtml