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政府・与党は、メディア規制の条項などが激しい批判を浴び、03年に廃案となった人権擁護法案を今国会に再提出する方針を固めた。問題のメディア規制の条項を凍結したうえで提出するというが、いずれ凍結が解除される可能性は極めて大きい。憲法で保障されている言論の自由を脅かす「欠陥法案」の再提出など、言語道断だ。
人権擁護法案は、02年の通常国会に提出された。差別や虐待などによる人権侵害をなくそう、という趣旨そのものに異論は出なかったが、救済機関の「人権委員会」を法務省の外局に置くことや、メディア規制につながる報道関係条項には強い批判が起きた。
人権委を法務省の外局に置くことについては、刑務所内での暴力など法務省管轄の施設での人権侵害事案に対し独立性を確保して処理できるのかどうか、疑問の声が多く出された。
報道関係条項は、「過剰な取材」に対し、取材停止の勧告などを行うとしており、言論の自由が脅かされる危険性をはらんでいる。国民の間からも、政治家などが報道機関の疑惑追及をかわすための条項だとの批判もあった。国内世論だけでなく国連人権高等弁務官も、この2点に懸念を表明する書簡を日本政府に提出した。
マスコミ側に反省すべき点があったのも事実だ。このため日本新聞協会は、集団的過熱取材の苦情を受け付ける制度を設けるなどの措置をとった。各報道機関もそれぞれ社内に第三者機関を設け、報道や取材上の問題点を洗い出すなど、自ら努力をしている。
しかし、今回再提出される法案は、骨格そのものが旧法案と変わらない。違うのは(1)メディア規制に関する報道関係の条項を凍結し、解除には新たな法律が必要(2)法律施行から一定期間経過後に見直しを行う−−という点だ。
92年に成立したPKO(国連平和維持活動)協力法は当時、反対論が強かったPKF(国連平和維持軍)本体業務への参加を凍結したが、01年に凍結を解除しPKF参加に道を開いた。凍結は解除が前提であることはPKO協力法の例からも明らかだ。人権擁護法案に盛り込む見直し条項は、凍結の解除の布石そのものではないか。
メディア規制を「凍結」することで、マスコミ側をけん制し、常時監視下に置こうという政府・与党の意図が透けて見えるようだ。いかにも姑息(こそく)なやり方だ。
なぜいま人権擁護法案なのか、というのがそもそもの疑問だ。マスコミ界では、NHK特集番組をめぐり朝日新聞とNHKが提訴をちらつかせながら互いに非難と抗議を繰り返している。
この問題では、自民党の安倍晋三幹事長代理と中川昭一経済産業相も関係し、朝日新聞の取材と報道のあり方を批判している。そうした中での法案の再提出は、国民の目に政府・与党がマスコミ側の混乱に乗じて法案成立を狙っていると映る。
メディア規制を内包する法案提出には断固反対する。
http://www.mainichi-msn.co.jp/column/shasetsu/news/20050213k0000m070109000c.html