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●新じねんサイトの『日々雑感』にアクセスいたしましたら
【我等何をなすべきか 加藤一郎】が紹介されておりました。
新じねん
http://csx.jp/~gabana/index.html
読んでいて、昭和2年は現在の21世紀の日本と状況が同じではないかと実感いたしました。
いま国会では緊張感が喪失したふぬけな論戦とやらが、パフォーマンスとして
タレントよろしくNHKから垂れ流されております。
しかし日本列島各地の庶民の憤怒はにえたぎっております。
これまでの家族・共同体や価値観が崩壊の危機にあえんでおります。
人間が壊れようとしております。
深部からのたぎる怒りと怨念のマグマが噴出口をもとめ、表土に爆発しようとしております。
【如何なる事が始まるか、見ているがいい】
【 民衆は無智であると云ふ。咽喉を扼して声を出さないと申すは者は何者であるか。無智なる者が自分の価値に眼覚めた時、如何なる事が始まるか、見ているがいい。】
これが日本深部からの叫び声であります。
自分の価値、おのれの起源、おのれはいかなる価値をつくりだせるのか・・・
自分とは何者か。おのれとはいなかる階級なのか。
これまでの生活がやっていけなくなったとき、現実の重み、そして
この社会のリアリティ。底割れしている日本。
50歳代の離婚がいたるところで増えております。【略奪愛】
もはや主婦も安定した位置ではなくなってしまいました。
21世紀日本経済の深部で・・・
いかなることがはじまっているのか・・・昭和2年。
餓死のニュース。2005年。
第2節 「平民新聞・雲南付録」
富野が一郎と出雲大社で結婚式をあげたのは昭和二年八月十日、立会人は二人の木次高等小学校の恩師藤原藤之助だった。当時富野は島根女子師範附属原井小学校教員。一郎は木次で父政市の大工を手傳っていた。一郎は大正十四年頃から昭和のはじめにかけて「平民新聞」「山陰改造」の発刊、執筆、木次町借家人同盟の結成、政治研究会島根支部の結成、全農県連などの活動に参加しており、飯石傳太郎には一郎が容認できない存在と思いこまれていた。
昭和二年一月二十日発行の「平民新聞雲南附録・青年運動」(平民新聞第六号附録、編輯発行印刷人、福田理三郎、発行所松江市南田町八九平民新聞社、定価弍銭、青年運動発行編輯事務所、政治研究会島根支部木次班、木次町加藤一郎方)の二頁には一郎の次の文章がある。
『 我等何をなすべきか
加 藤 一 郎
親愛なる青年諸君。
青年は世の光であると云われています。詰らない因襲に左右されることなく、最も良心の鋭敏に働くのは青年時代であると云われています。
私たちはこの、今の社会に対して鋭い批判と良心を抱いておられる青年諸君に話しかけてみたいのです。
思うに今の時代ほど不合理に満ち矛盾に満ち、 随って苦悩に充ちた世も少ないでありませう。試みに毎日の新聞紙を手にとって御覧なさい。少しでも心のある人間であるならば涙なくして読むことの出来ないやうな記事が何とまあ少なからぬ事でせう。あるお爺さんは生活苦の為に自殺しました。敢て自殺をしなくても死期の近ずいている老人が、自殺しなければならなくなったのはよくよくの事であると云はなければなりません。ある失業労働者は生活に困った末、僅かばかりの盗みをして直ちに警察へ送られて仕舞います。餓死するか盗みをするかと言ふ場合、誰が盗みをしないと保證し得ませう。
其他あらゆる悲劇、犯罪、兇行、これ等は一体何に原因しているのでありましょうか。言うまでもありません。それは貧しいが故にです。貧乏だからです。貧しくなくって生活に苦しむ必要がなかったなら、誰が好んで自分を殺すことをしませう。私どもは、あらゆる悲劇の殆ど全部が経済的な事情を原因にしていることを認めない譯にはゆきません。
では此の貧乏と言ふ人類の大敵から、我々は逃れる事が出来ないでありませうか。
此頃上は内務省のお役人から、小学校の先生に到る迄、しきりに消費節約と言ふ事を強調されます。一寸聞くと却々よさそうですけれど、実は我々の生活を知らない偉いお役人の頭で創り出した空想に過ぎません。考へても御覧なさい。およそ世界中で一番よく働くといはれる日本の百姓の生活状態はどうでありますか。一年中真黒になって働いて、白い御飯すら食べられない状態ではありませんか。一年中米を作る為に働いている百姓が米を食べる事すら出来ないとは何たる皮肉でありませう。しかもこれは偽りのない現在の事実であります。
こんな生活、こんな惨めな生活の無産者に、誰が消費節約を説く事が出来ませう。節約する金があるなら、お役人を煩はさずとも、とうの昔に節約して金持にでもなって居ります。
して見ると、我々は貧乏といふこと、貧乏といふものを遂に我々の社会から駆逐する事は出来得ないのでありませうか。
否、否。それは出来得ない事ではありません。それは我々の決心如何によっては、寧ろ容易にすら出来る事であるのです。
ではどうしたら、どうしたら、このあらゆる悪の根源であるところの貧乏、即ち経済的欠乏から逃れることができるでありませうか。
方法、それは実に簡単です。即ちこの不合理な社会組織を改革して、健全で合理的な社会を建設すること、是れです。
一体、今の社会組織の特色は、その個人主義的、弱肉強食的なる点にあります。他人が飢えて自殺しようが俺はかまはん、俺に責任はない、とかういう風な考へ方が資本主義社会の特徴であります。
ところで、世にこれほど間違った考へも余り少ない。たとへ、彼の不幸が自分の責任でないにしても、是を助けるは人情の自然であります。まして、我々の社会にあっては、無産階級の不幸は必然的に有産階級の責任であります。この事は有産階級やその提燈持の御用学者が極力拒否するにかかはらず、動かす事の出来ない一大真理であることを否まれないのであります。
では、何故に無産階級の不幸は有産階級の責任であるか、それはかうです。
無産階級、それは生産階級という事を意味する。有産階級、即ちブルジョアジーの食膳に上がる山海の珍味も、輝やかしい着物も、壮麗な邸宅でも、実にプロレタリアの血と汗と涙の結晶でないものはありません。一日でも全プロレタリアがその尊い労働を中止したならば、忽ちに、我地球は生色を失ひ、食ふ事も、着ることも、まして文化とか称するものはそれこそ夢の様にけし飛んでしまふでありませう。
これほど尊い生産階級プロレタリアを遇するに、ブルジョアは何の恩賞を以って答へたか。
貧乏と言ふ十字架、餓死といふ鉄鎖、無智という恩典、これが彼等の恩賞のすべてであります。
此事実を知って、尚何等の義憤を感じない人間は、人間として、人間に非ずといはねばなりません。
御用学者は申します。資本家は資本を提供し労働者は労働を提供して世の中はやってのけるのだ。資本家の生活はその資本の当然の報償である。と。これが、我々が先祖代々から欺かれてきたブルジョア哲学の御本尊であります。
私共は答へる。それは実に美しい詭辯である。そもそも資本家の資本といふものは何によって得たものか。略奪と搾取、これをおいて何處に資本の出處があるか。彼等の生活は実に他人の命を掠め、血を搾った結果に外ならぬのであります。
かく言へばとて、私共は必ずしもブルジョアジーを憎むものではない、ただ、同胞の不幸に対する無関心と、制度の悪に対する無感覚と、更に不正な自分の立場についての無智を憎むのであります。寧ろ憐れに思ふのであります。
さて、私共は既に我等の生活の不幸の原因を知り、この不幸の責任が何處にあるかを明瞭にした。そして不合理な社会を改革して合理的な社会を建設すべきであることを知った。
では如何にして此事をなしうるのであるか。これが私が諸君に語りたい最も重要な問題なのです。ブルジョア萬能の今の社会ではあらゆる権力、つまり法律も教育も警察力も、すべてがブルジョアの、○○○○なのであります。彼等は現状を維持しやうとしている、要するに彼等の欲するものは正しい社会でなくして、彼等のみの利益を擁護する社会なのであります。
これに対抗すべき我がプロレタリアの陣営はどうであるか。長い被搾取生活の結果、我等の兄弟は疲労しきって居ります。加ふるに無智であります。更に、我等は一切の権力を持たないのであります。けれども諸君、私共は絶望する必要はない。人類の大半は被搾取階級であります。搾られ奪はれている階級であります。この共通の利害、共通の感情を持っている兄弟が、お互の為に人類の為に、固く手を握り、団結して立ったならば、世に為し得ない事がありませうか。
萬国の労働者団結せよ、とは敢てマルクスを待たずとも、我々の解放運動の唯一最大の信絛であらねばなりません。
我等何をなすべきか。
起って、我等の為に人類の為に、戦ふべきである!』
また、同紙に無署名だが、一郎の手によると思われる次のような発刊の辞が第一頁にあるる。
『 創刊の言葉
時勢は常に生々流転する。昨日の奇蹟は今日の平凡語であった。今日の危険思想は明日の常識である。あらゆる尊敬すべき真理はその當初に於てすべて危険視せられざるはなかった。危険とは、真理が甘んじて受くべき荊の冠である。
今僕達は敢えて郷土の山河に危険思想の洗禮を与えんとする。眠れる大衆を呼び覚まさんとする。
僕達の運動は決してディレッタントの暇潰しの運動ではない。又インテリゲンチャの運動の如く「民衆よ」と呼びかける必要もない。 僕達自身、虐げられた民衆の一人であるからである。
民衆は無智であると云ふ。咽喉を扼して声を出さないと申すは者は何者であるか。無智なる者が自分の価値に眼覚めた時、如何なる事が始まるか、見ているがいい。
すべてはこれからである。我等は愛と相互扶助の輝やかしい世界を渇仰する。(一九二六・一)』
http://fish.miracle.ne.jp/dawnkato/7heimin.htm