現在地 HOME > 日本の事件16 > 866.html ★阿修羅♪ |
|
『鉄道事故の再発防止を求めて』─日米英の事故調査制度の研究─
安部誠治【監修】鉄道安全推進会議【編】 1998.05.01刊
あなたやあなたの家族が鉄道事故に遭われたら
もし、あなたの家族やあなたが鉄道事故に遭われたら、どうされますか。
なぜこんな事故にまきこまれたのか、その原因は何なのかを知りたいと思われるはずです。
鉄道事故が起きると、日本では通常、警察が捜査を行います。しかし、警察は被害者に全くといってよいほど情報を教えてくれません。というのは、警察の捜査は、被害者に事故原因を説明したり、事故の原因を明らかにして再発防止に役立てるために行われるのではなく、事故の刑事責任を追及するために行われるからです。すなわち、犯人探しを行うのが警察の捜査の目的なのです。
警察以外に、運輸省や鉄道会社も独自に調査を行うことがありますが、それらの調査も公平中立とは言いがたい面があり、また肝心な情報はなに一つ公開してくれません。
つまり、もっとも大切にされるべき被害者が、ないがしろにされているのです。これでは民主主義と人権の国とは言えません。
欧米では、鉄道事故の調査は公的な事故調査機関によって国民公開のもとに進められ、徹底した情報公開が貫かれています。そして、事故調査によって得られた教訓は、鉄道の現場にフィードバックされ、再発防止のために活用されています。
私たちTASK(鉄道安全推進会議)は、このような日本の現状を変えようとしています。事故の被害者がいやされ、かつ事故の教訓が活かされて鉄道の安全が守られる国にするためです。
もし、あなたやあなたの家族が鉄道事故に迫われたら、たぶん途方にくれてしまわれるのではないでしょうか。
誰かに相談しようと思っても、自動車事故の場合とは違って、どこにも相談の窓口はありません。
そんな時は、私たちTASK(鉄道安全推進会議)にご一報下さい。私たちは、鉄道事故に関わるさまざまな疑問、悩み、心配事のご相談にのることができます。また、あなたとともに関係機関にはたらきかけることもできます。
----------------------------------------------------------
マスコミの事故報道─新聞を中心に─
1.事故直後の新聞報道
事故後連日にわたって、事故原因の推定を含む信楽事故関連の記事が新聞紙上を賑わした。しかし、総じて県警捜査員からの断片的な情報の収集であったり、専門家のコメントから事故原因を推測するというものであって、事故原因について核心をとらえたものではなかった。
(略)
2.マスコミ報道の問題点
信楽事故に関するマスコミ報道は、事故原因がまだ明らかになっていない時期には憶測記事やニュースが氾濫し、過熱ともいえる報道合戦が行われたが、その後県警の捜査結果が発表されて以降は、マスコミの熱気は急速に冷めてしまった。信楽事故は終わったのではない。今日もなお刑事裁判、民事裁判は継続している。そして、それらの裁判のなかで鉄道の安全の確保のために大いなる教訓となりうる多くの事実が明らかにされていっている。しかし、粘り強く報道を継続している地元紙の京都新聞など一部の例外を除いて、最近では新聞やテレビなどで信楽事故関連のニュースが報じられることはほとんどなくなった。
総じていえば、信楽事故に関する新聞を中心としたマスコミ報道は、事故の凄惨さを全国に伝え、国民の安全に関する関心を高めたという点では評価できるが、事故原因の究明や再発防止策の提言、継続的な報道などの点では満足できるものではなかった。また、事実に基づいた報道という点でも多くの課題を残した。
(略)
加えて、国民には、もっぱらマスコミ報道を通じてしか事故に関する情報が与えられない。その意味でマスコミ情報は重要である。ところが、現場の記者の努力にもかかわらず、調査の権限をもった警察や事故調査の役割が期待される運輸省からは、的確な情報がマスコミに提供されない。そのため、マスコミは半ば憶測に基づいた報道を行ったり、数少ない情報に飛びついて、十分な検証をしないままにそのタレ流しを行うといったケースが目立った。
(略)
県警の捜査が着手されたばかりで、未だ事故原因について皆目分からない時点での報道ということは理解できるが、この記事はのちに判明した事実に照らすと、誤報とはいわないが虚報であった。これらの報道に接した遺族をはじめとする国民は、これらの惰報に振り回され、必要以上に心理的不安をつのらせる結果となった。
(略)
--------------------------------------------------------------------