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http://www.yomiuri.co.jp/ (読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20050521ic04.htm
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「日勤」でうまくなるはずない…運転名人が指摘
兵庫県尼崎市で起きたJR福知山線の脱線事故では、運転士の教育体制も問題として浮上しているが、
JRは旧国鉄時代から「世界一」の正確さを誇り、それを支えてきたのは高度な技量を持つ運転士たちだった。
東海道新幹線の一番列車や昭和天皇の特別列車を運転し、“名人”として名を馳(は)せた元運転士、
大石和太郎さん(72)は、「事故の最大の理由は、運転士の教育方法にあるのではないか」と指摘する。
「停止位置は1センチ以内、到着時刻は5秒以内」――。新幹線の特別列車の運転で、30代半ばだった大石さんに
課せられた許容範囲だった。数十メートルオーバーランし、1分以上も遅れていた尼崎の事故車両とは別世界のような数字だ。
しかも、「特別な列車でなくても、普段からみなさんその程度の誤差で運転していた」というから驚く。
現在と比べ、ブレーキやモーターの性能が大きく劣っていた時代。途方もない運転技術を生んだのは、“お師匠さん”と
呼ばれる指導運転士による4か月間の徹底的な指導だった。登用試験も厳しかった。速度計に覆いをかけ、線路と
砂利の流れで速度を推定しながら運転し、指示速度から時速1キロでも狂うと減点。車内に将棋の駒のようなブロックを立て、
荒いブレーキ操作で倒れたら、これも即減点だ。
JR西日本によると、現在でも運転士になるための技能講習は4か月間程度かけている。指導運転士と一緒の電車に
乗り込んで教わるのもほぼ同じだ。航空パイロット養成に使われるようなシミュレーターも導入されるなど、訓練環境は
近代化されている。その一方で、国鉄の分割民営化後、新規採用が一時見合わされたため、30歳代の運転士が
ほとんどおらず、先輩から若手への「技能伝授」が不足気味だという指摘が、現役運転士の間でも上がっている。
「ぼくの場合は40年以上も前の話ですから」。大石さんはそう前置きしながら、「師匠には『(停止位置を)飛び出すくらいで
なければうまくならない。見習いは飛び出すのが仕事だ』と言われるおおらかな雰囲気だった。今はミスに非常に厳しく、
十分な自信が持てないまま、過密ダイヤの持ち場を任されたのではないか」
また大石さんが特に違和感を覚えるのは、JR西日本でミスを起こした運転士に課された「日勤」教育だ。「厳しいペナルティーを
課せば心理的に追い詰められる。トイレ掃除や感想文で運転がうまくなるはずもない」と疑問を呈する。
今回の事故では、まるで定時運転そのものが元凶かのようにも言われているが、大石さんは「本来、定時運転は一番安全なはずだ」
と反発する。事故後の今月1日、著書「定刻発車 日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?」が文庫化(新潮社)された経済・
経営ライターの三戸祐子さんも「鉄道システムは、定時運転をしている時が最もシンプルで安全」と同意見だ。
欧米に比べて駅や線路などの設備に余裕がない日本で輸送量を増強するには、スピードアップしてピストン輸送するしかない。
それでも安全に走り続けるためには、事前のダイヤ作りや遅れを取り戻すプロセスに秒単位の緻密(ちみつ)さが求められ、
世界でも例を見ない正確な運行が生まれたのだという。「巨大システムにおける大事故の原因は常に複合的だ。事故の背後に
あったいくつもの原因を詳細に検討する必要がある」と三戸さんは話す。
(2005年5月21日14時38分 読売新聞)
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