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(回答先: Re 非常におもしろい情報 投稿者 戦争屋は嫌いだ 日時 2005 年 2 月 18 日 04:46:16)
現職警官 内部告発へ決断 出世したいなら…裏金づくりに加担
愛媛県警の鉄道警察隊にいた仙波敏郎巡査部長(56)が、警察の裏金づくりを実名で告発したのは先月二十日のことだ。その四日後には、内勤となる通信指令室への異動が内示された。裏金についての実名での内部告発は、これまでOBからはあっても、現職からは皆無だった。その事実が組織の「禁」の厚さを物語る。決断させたのは何だったのか。松山市に仙波巡査部長を訪ねた。 (早川由紀美)
■「事情勘案」と4日後に窓際
愛媛県警本部十階にある通信指令室が、仙波さんの一月二十七日からの新しい「職場」だ。一一〇番通報を受ける席とは別に、新たに持ち込まれた机の前で、勤務時間の午前八時三十分から午後五時十五分まで「ずっと、窓から松山城を眺めている」と仙波さん。
「時々『目を通してください』とA4判の資料が渡される。来月の何日に無線講習があるとか、職場体験で中学生が来ますとか。穴の開くほど見ている」
これが、県警が「本人の職務経歴・事情等を総合的に勘案して行ったものであり、いわゆる『報復人事』などというようなものではない」と説明する異動先での内実だ。
「食堂に入ると、それまでわいわいしていたのがしんとする。せっかくくつろいでいるのに、邪魔したらいけんから二日行って、行くのをやめた」
県警と仙波さんの「裏金」をめぐる相克は三十年以上前にさかのぼる。
「二十四歳で巡査部長に昇任した直後、三人の名前と住所が書いてあるざら紙を会計課長から渡された。領収書に書き写せと言われた。私文書偽造は三月以上五年以下の懲役となる犯罪だ。『何でですか』と聞くと『組織のためだ』と言われたが断った」
翌年も断ると、署長に呼ばれて「君は組織の敵か、味方か。組織のためには交際費が必要だ」としかられたという。
■裏金捻出の手口 道警などと同様
捜査協力者に謝礼を払ったという体裁の領収書を偽造し、捜査用報償費(県費)、捜査費(国費)から裏金を捻出(ねんしゅつ)する手法は、すでに裏金問題が発覚した北海道警などの事例でも明らかになっている。道警の内部調査によると、一九九八−二〇〇三年度の捜査用報償費、捜査費の総額二十二億八千万円のうち、裏金総額は約十億七千万円に上る。
その後も、領収書作成を依頼されては断るということの繰り返しが続いた。七年後、警部補昇任試験を受けた。二次の面接後、当時勤務していた署の次長に「君は通らんよ。領収書書いてないから」と告げられた。
「犯罪者が通って、そうでないと通らんのですか」
「君がトップになって仕組みを変えればいい」
「領収書を書いてトップになれと」
「そうだ」
仙波さんは、この時点で昇任をあきらめた。警備、刑事への誘いがあったときも「領収書は書かない」と言うと、話はなくなった。
愛媛県警の捜査費不正支出問題 昨年5月、大洲署の元会計課員が地元テレビ局に証言。県警は、大洲署での捜査費31万円の不正支出を認めたが、裏金づくりや私的流用について否定、同署以外での不正はなかったと発表した。県監査委員による特別監査が実施されているが、県警は捜査上の秘密保持などを理由に会計資料の全面開示をしていない。北海道警では昨年、元釧路方面本部長の原田宏二氏が実態を証言。道警は裏金づくりを認め、捜査目的外の支出と認定された額と利子を合わせた約9億1600万円を現職幹部やOBが返還する。福岡県警も2億円余を返還する。
「領収書が踏み絵なんだと分かった。警察に入ったときは、ノンキャリのトップになりたいと思ったが、現場で生きていこうと決意した。転勤の繰り返しで、二男は二年生の時点で三つ小学校を替わった。三十二年間、巡査部長のままというのは全国で一番長いと思うが、それは私の誇りだ」
現在、同県警の三十五歳以上の職員で領収書を書いていないのは、仙波さんを含め二人だけという。現場も苦しんでいるという。
「定年間際の会計課長が泣きながら帳簿類を燃やしているのを見たことがある。その署では年間一千二百万円の裏金を捻出していた。四百万円は署員の親睦(しんぼく)などに使われ、残り八百万円は署長が持っていった」
昨年十二月、県警本部前でオンブズえひめの弁護士らと出くわしたことがきっかけで、裏金のからくりを公にする決断の、背中を押された。しかし、実名での会見には、一つの逡巡(しゅんじゅん)があった。消防署に勤めていた仙波さんの長男は十年前、上司を刺殺して服役中だ。
「自分が表に立てば、息子のことで火だるまになるのは分かっている。自分はいいが、周囲の人々にかえって迷惑をかけるのではないか」
仙波さんの会見後、新聞に県警を批判する投稿をした人などに、この事件のことなどに触れた文書が、匿名の差出人から郵送されている。
「会見をする前に、兄弟やおふくろには縁を切ってくれ、僕のことは忘れてくれと頼んだ。中央省庁出身の兄は『中央省庁でも正義感をかざした人は結局負けて辞めていった』と話していたが、最後には『やるなら途中でやめるな』と言ってくれた」
三男は長男の事件後、つき合っていた彼女の親から「人殺しの家の者は敷居をまたぐな」と言われた。それでも三男は「本音としてはまたぶり返されるのは嫌だけど、これまで十年耐えてきたから、これからも耐えるよ」と了承してくれたという。
■議会や公安委 一つも動かず
仙波さんの高校時代の同級生で、「仙波さんを支える会」をつくった東玲治さん(56)は「彼の抱えている事情からすれば、目立つことは避けたいはずだ。信憑(しんぴょう)性を疑わしめるキャンペーンが張られるだろうという予測はついた」と話す。
会には「報復人事で苦痛を受けた」として仙波さんが起こした国家賠償請求訴訟を支えるためのカンパが百万円余寄せられる一方、「極悪息子や共産党と一緒に暮らしてください」などの誹謗(ひぼう)のはがきも届く。
「彼の姿勢は二十四歳から一貫している。信用に値すると思っている。四年前に亡くなった彼の奥さんは、立ち上がれないような状態でも救急車を呼べず、自力で運転して病院に行ったと聞いている。長男が勤めていた消防署から救急車を呼べなかったんです。自分も妻をなくし境遇が似ている。彼も自分も今、残された人生をどう生きるかだけを考えている」
東さんは警察の裏金疑惑について「本来、今ある公の仕組みの中で解明されるべき話だ」と指摘する。
「県議会だって百条委員会をつくって警察幹部を呼べばいい。県議会に費やされる予算は年間十五億円。公安委員会も監査委員会もあるのに、一つも働かない。今私たちが、こうやって裏金疑惑を解明しようとすることは、税金の二重払いのようなものだ」
仙波さんのもとには、現職の警官から、裏金づくりの証拠もいくつか寄せられている。仙波さんは「ある部局で三百万円の水増し請求があったという証拠の書類や、休日手当を不正に操作していることが分かる給与明細をもらった」と言う。
十六日、松山市内で裏金問題の報告集会が開かれた。制服姿の高校生らも交じる聴衆に、仙波さんは呼び掛けた。
「現場の者は苦しんどるんです。『裏金』とか『税金泥棒』という厳しい言葉を現場の人間に掛けるのはやめてほしい。そういう声を掛けるなら、裏金を使っている幹部にしてほしい」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050219/mng_____tokuho__000.shtml