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小泉政権がアラブ世界を軽視しているし、イラク派兵に見るアメリカ追従路線が、日本の運命を損なっている見本として、東京新聞の特報記事は非常に教訓的だ。
<以下引用>
アブダビの子弟 学校受け入れ
日本出遅れ 仏独中即応
原油価格の高騰が続く。そんな中、日本最大の原油輸入先、アラブ首長国連邦(UAE)の中核、アブダビ首長国の日本人社会が揺れている。昨年末、同首長国の皇太子が日本など四カ国の現地校への自国子弟の入学を要望。他国が素早く動く中、日本大使館の腰は重かった。あわてたのは国際競争で劣勢の日本の石油業界。「国益を損ないかねない」と官への不信を露(あら)わにしている。 (田原拓治)
「正直、官の怠慢に怒り心頭だ。民間の現場は他国との競争に四苦八苦。UAEでも日本の石油開発企業との長期契約がこのまま続く保証はない。会うことすら難しい相手側トップからの要望は千載一遇の好機だったのに」。日本の石油業界関係者はこう憤る。
UAEは日本のエネルギー政策の最重要拠点だ。国別原油輸入先のうち、二〇〇四年は総輸入量の25・1%を占め、第一位。さらに総輸入量の一割にあたる自主開発油田(日の丸油田)分では、58%と圧倒的だ。そのUAEの連邦予算の九割を担うのが大油田を抱えるアブダビ首長国だ。
■“雲の上”の皇太子要望
騒動の発端は昨年十二月にさかのぼる。同首長国の皇太子府から日本、フランス、ドイツ、中国の各大使へ「(各国の子どものための)コミュニティー校へアブダビの子弟を受け入れてほしい」と要望があった。
UAEは英国の旧保護領で、米国の対テロ戦争も支持している。「でも、対米英関係は形式的なもの。本音ではイラクを見て米英を警戒しており、むしろ独仏やアジアとの関係を重視している」(湾岸外交筋)
その結果が「米英抜き」の四カ国の選択だった。特にムハンマド皇太子は日本の教育を評価。「日本方式で遠慮なくやってほしい。将来は卒業生を日本の大学に進学させ、両国友好の柱にしたい」という意向すら語っていたという。
UAEの在留邦人は約千六百人。その三分の一がアブダビ在住で、日本人会は現地駐在の石油会社所長らが幹部を務めている。アブダビ日本人学校(小中、生徒児童数四十五人)は一九七八年設立(九五年に文相認定)で、附属(ふぞく)幼稚園(園児十四人)もある。現地での扱いは「大使館付属校」で敷地は首長国が無償貸与。運営理事会の実体は日本人会とみてよい。
アブダビ首長国のムハンマド皇太子はUAEのナンバー2に等しい。「石油権益更新などをめぐり、事務所にお百度参りしてもまず会えない」(現地関係者)人物だけに、要望に対し仏は二十人、独は十二人の受け入れを即答し、この九月からは受け入れを開始。現地校のなかった中国はアブダビ教育長たちが北京を訪れ、アブダビ側の資金による学校建設を決めた。
一方、日本側の対応はどうだったのか。ことし一月の大使公邸新年会で、辻本甫駐UAE大使から日本人会の幹部に皇太子府からの要望は伝えられたが、その後、放置。七月に首長国側から「日本だけ返答がない」と大使館に再び打診があり、大あわてになった。だが、動き始めたのは夏休み明けの九月からだった。
「立ち消えになったと思っていたら、先方から連絡があったので日本人会で話し合ってほしい、と七月に大使に言われた」と業界関係者は不満を隠さない。
とりわけ、自主開発油田に携わる日本の業界が「出遅れ」にあわてたのは、そのうちの一社で石油大手コスモ石油系列のアブダビ石油(本社・東京)の権益が二〇一二年には更新を迎えるからだ。国際競争はし烈で、競争相手は英国のBPや仏のトタール、米国のエクソンモービルなどメジャーばかり。年三割の勢いで輸入量が伸びる中国の追撃も脅威になっている。
■『官の油断』に業界憤り
大使館側の報告以降、現場の保護者たちの間でも議論がわき上がった。「どうしてこれまで報告がなかったのか」「日本の子どもは集団生活をしつけられているが、現地の子どもたちは順応できるのだろうか」
首長国側は宗教(イスラム)、アラビア語教育は日本人学校とは別に独自で担うとしているが、会合では「幼稚園段階ではアラビア語のできる教員はいない。どう手当てするのか」などといった懸念も漏れた。
結局、これまでの議論では、日本語のできない子どもの小学校以上での受け入れは難しいとして、来年九月から幼稚園(三歳六カ月以上)に数人を受け入れる方針。独仏に一年遅れることになったが、首長国側も同意しているという。
ただ、この問題は東京の石油大手、経済産業省にも伝わり、政治ルートへ働きかけも検討された。「皇太子の兄弟の閣僚たちからの『日本の民間は友好に尽力してくれて感謝している。だが、政府(大使館)の動きは問題だ』といった話も広がった」(業界関係者)
大使は日本人学校の名誉理事長だが、主体は民間。しかし、「相手からすれば一足飛びに学校に話はもってこられない。窓口と責任はあくまで大使館だ」(同)と外務省の「失策」をなじる声すら上がった。
こうした声に対し、辻本大使は事態の経緯と判断の理由を次のように語る。
「そもそも、この話は知人である皇太子の友人が私の所へぷらりと来て、話したのが始まり。率直に言って、外国人生徒を受け入れるのは日本人学校にとり大変な負担だし、大学まで行くのは至難の業。思いつきでは無理だと押し返した。日本人家庭へのホームステイや日本の大学留学など、他の交流手段を提案した」
■大使『慎重に時間かけた』
「大使の立場で日本人会に現地の子弟を受け入れては、と言えば、義務と受け取られかねない。その分、慎重に時間をかけた。最初の話の後、相手側に会ってもその話は出ず、七月に橋本(龍太郎元首相)総理特使が訪れ、皇太子らと会談した際も相手側からこの問題についての反応はなかった。デリケートな問題だったが、日本の国益が脅かされることはないと思う」
ただ、ビジネスの最前線に立つ石油業界関係者の一人は「日本には競争国の持つ軍事協力といった手段はない。その条件下で相手側が資金負担をしてでも協力を求めてきた提案を放置したことは、従来の関係強化の努力だけでなく、将来の関係をも台無しにしてしまいかねない」と訴える。
ちなみに外務省は現在、UAEを含めアラブ主要国の駐在大使にアラブ専門家(アラビスト)を配置しておらず「対アラブ外交軽視」という批判もある。
今回の問題について、イラク戦争に反対し一昨年、外務省を辞めた元レバノン大使の天木直人氏は「辻本君は同期だが、彼は殿様タイプの外交官ではない」と前置きしつつ、こうみる。
「日本のエネルギー安全保障の観点からみて、彼の判断は誤っている。その判断に対し、忠告しなかった部下たちの外交センスも疑う。いまからでも遅くはない。大臣クラスが現地へ行き、失点を挽回(ばんかい)すべきだ」
<メモ>アブダビ首長国
アラブ首長国連邦(UAE)の首都がある首長国。UAEは1971年、6首長国が連邦(翌年に別の首長国も参加)を結び、独立した。人口はUAE全体で404万人。豊かな産油国で原油の確認埋蔵量は世界第5位。アブダビのザイド首長が独立後、UAE大統領を長く兼務してきたが、昨年11月に死去。世襲した長男のハリファ新首長(前皇太子)がUAE大統領も継承し、三男のムハンマド軍参謀総長がアブダビの新皇太子(兼軍副総司令官)となった。教育制度は日本と同じ6・3・3・4制。
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