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郵政民営化の「そもそも論」 投稿数アップのお願い
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投稿者 NJ 日時 2005 年 8 月 21 日 15:32:08: OUBoEzfQNTDYo

09 郵政民営化の「そもそも論」http://www.geocities.jp/dokodemodoa_jp/09somosomo.htm

(下の引用には元ページの明快な図表が取り込めず、不本意な表示となっています。
元ページに当たられることを、お勧めします。)

郵政民営化については、当初、小泉さんの私的懇談会である「郵政三事業の在り方について考える懇談会」で、2001年6月から2002年9月まで議論され、2002年9月6日に今の公社となんら変わらない特殊会社を含む経営形態の3類型を示した玉虫色の報告書を提出して幕を閉じました。

その報告書のなかには、「郵政事業改革実現のための『時間軸』設定」という項目があり、その中で時間軸についての考え方が述べられています。

まず、それについて考えてみましょう。

「郵政事業改革にあたっては、財政構造全体、特に政府債務の管理・処理に関する基本方針がまず明示されなければならない。」


今回の郵政民営化にあたっては、確かに与党の了承も得ずに「基本方針」が示されました。

しかし、それはただ単に郵政の経営形態や民営化のメリットだけを記述したものであり、とても「財政構造全体、特に政府債務の管理・処理に関する基本方針」といえるものではありません。

「郵政事業改革実現のための『時間軸』の設定にあたっては、金融市場改革、民間金融機関の収益基盤の確立および特殊法人等改革との整合性も同時に求められる。こうした政府の経済全般に関わる改革決意との整合性を欠いた場合には、国民の改革への期待は高まらないだけでなく、当初想定されていた改革の効果は得られないと覚悟すべきである。ただし、郵政事業改革のペースを落とすのではなく、むしろ相互刺激による相乗効果で関連する諸改革、とりわけ財政構造改革を加速させるべきである。」

まず、「金融市場改革、民間金融機関の収益基盤の確立」については、2002年9月の内閣改造で、柳沢伯夫金融担当大臣を更迭してまで、経済と金融の担当大臣を兼務した竹中さんが、盟友の木村剛氏と一緒に作成した「金融再生プログラム」によって、大手行に対して片っ端から不良債権処理を迫ったため、大手行の不良債権処理はほぼ当初の目標に達したようです。

しかし、まだ、郵貯と競合する地域金融機関の不良債権にはほとんど手が付けられておらず、4月のペイオフ全面解禁を控えて、とても民間金融機関の収益基盤が確立したとは言えない状況です。

また、「特殊法人等改革との整合性」については、郵政民営化に対する出口改革不足の批判を受けてか1月28日に開催された経済財政諮問会議で、やっと2002年12月から「凍結」されていた政府系8金融機関改革などについての議論を再開させたようですが、本格的な議論は4月からはじめるようです。

3月10日に開催された経済財政諮問会議でも議論されたようですが、朝日新聞(3月11日)によると銀行族の小泉さんのお膝元である財務省首脳が「国の役割を否定するのか」と激怒して「徹底抗戦」を指示したとのことなので、そう簡単には議論が集約できるとは思えません。

「公社は、国の直轄事業からの脱却を目的として制度設計されたものである。郵政事業改革を進めるうえで郵政公社による経営革新、事業環境変化への対応状況を見極めることが必要である。
 なお、公社の成果の最終的な見極め期間については、日本経済全体の持続性確保の観点から、政府が進める他の改革との相互関連を考慮し、総合的に判断されることとなる。」

「郵政公社による経営革新、事業環境変化への対応状況の見極め」については、ご存知のとおり公社化されて、まだ、2年しか経っておらず、第1期の中期経営計画の結果すら分からない状況です。

このように時間軸だけみても小泉さんは自らが設けた私的懇談会の報告さえ無視した形で、今回の「郵政民営化」を打ち出してきているのです。

 

それでは、どのようにして、この議論が政府議論の俎上にあがったのでしょうか?

「郵政三事業の在り方について考える懇談会」が2002年9月6日に閉幕して以降の経済財政諮問会議で、初めて郵政改革に関する資料が提出されたのは2003年1月20日の会議でした。

その会議で牛尾 治朗(ウシオ電機(株)代表取締役会長)、奥田 碩(トヨタ自動車(株)取締役会長)、本間 正明(大阪大学大学院経済学研究科教授)、吉川 洋(東京大学大学院経済学研究科教授)の4名連名で提出された資料の「平成15年の経済財政諮問会議の課題」と題した有識者議員提出資料のなかに「郵貯・財投を含めた公的な資金循環メカニズムを改革する」との文字が入っていました。

そこで小泉さんは、「私の内閣の使命は、『官から民へ』、『民間にできることは民間へ』、『中央から地方へ』である。郵政改革、財投改革、特殊法人改革は、公的部門の改革であり、将来必ず成果が出る。税金の無駄遣いを防止する改革につながっていくものだ。」と持論を述べています。

また、本間さんは、「国民資産の有効活用については、郵貯・簡保・公的年金の資金が拡大しており、今の枠組みでの運用を超えた形で、もう一度、国民経済上の資金の流れを検討する必要がある。経済がグローバル化して、資金が高い収益率のところに流れ、地域経済では、貯蓄よりも外に流出する金額が多く、必ずしも十分に資金が供給されておらず、奥田議員が指摘された問題も起こり得る。国全体の有効な資金配分をどう実現するかという将来に向けての問題もきちんと議論する必要がある。次回は、数字等も御紹介させていただきたい。」

これに対して当時総務大臣の片山さんは「郵貯は一時拡大して、270兆円近くまでいったが、ここ数年の定額貯金満期の影響で、現在は約230兆円台で、将来は200兆円台と見込んでいる。それでも大きいという議論があり、そこをどうするかは考える必要がある。また、相当の国債を安定的に満期まで持っている。国債管理政策との関係も含めて、複眼的に幅広く議論していく必要がある。」と述べています。

そして、2003年1月30日には「日本経済の低迷と資金循環」と題した有識者議員提出資料が同じく4名連名で提出されました。

9−1図 日本経済の低迷と資金循環(有識者議員提出資料)

日本経済の低迷を映す資金循環の変化

<資金循環から分かる3つの事実>

  1.民間需要の萎縮で、民間部門の貯蓄超過が拡大。

  2.その貯蓄もリスクを回避し、安全資産に。

  3.結果、公的部門経由の資金が急増。                             (P2)

改革の必要性

  1.経済の活性化・デフレ克服と雇用創出

    ・機動的なマクロ政策、不良債権処理、産業再生、税制改革

    ・規制改革・特区、新産業分野、雇用拡大プログラム、人間力 等

  2.家計の将来不安の払拭

    ・社会保障サービスの総合設計 等

  3.徹底した歳出削減と行政のスリム化、地方の自立に向けた国と地方の見直し

    ・「新財政システム」の構築 等

  4.国民資産の有効活用  →次頁                                (P3)

将来の成長に繋がる資金の流れへ

  1.公的債務(国債・地方債・財投債等)の戦略的な管理

  2.郵貯・財投を含めた公的な資金循環メカニズムの改革

  3.公的年金の積立金運用のあり方の検討

  4.証券市場改革によるリスクマネーの供給促進                        (P4)


(P5)

9−1図がその資料ですが、3頁目に「2.郵貯・財投を含めた公的な資金循環メカニズムの改革」という項目が挙げられており、竹中さんが「本日、有識者議員から紹介のあった資料はまさしく本邦初公開だ。本間議員と跡田先生がかなり苦労をされ作成して下さった。是非、御活用いただきたい。」と絶賛していますが、私はこの資料が今後の郵政民営化議論の足がかりになったと考えています。

この資料は、2頁の「資金循環から分かる3つの事実」で述べられているように1990年度から2001年度にかけて民間需要の萎縮し、家計貯蓄も安全資産に偏重していったため、公的部門経由の資金が急増したということを示す資料です。

現在、郵政民営化の「そもそも論」として、新たに「郵政じり貧論」が出されていますが、そもそもは「公的部門経由の資金が急増」したこと、つまり、「郵貯・簡保の肥大化」に端を発しているのです。

この資料の2〜4頁については、5頁の資料を基に作成されていますが、私はそもそもこの資料から郵政民営化の「まやかし」が始まっていると思います。

なぜ、2003年1月の会議に提出する資料なのに1990年度(平成2年度)と2001年度(平成13年度)を比較しなければならなかったのか?

2001年度(平成13年度)は、財投改革が行われて、郵貯・簡保が財政投融資から切り離された年です。

9−2図 銀行の国債等保有と貸出残高

9−2図からも分かるように財投改革の議論が始まっていた2000年度(平成12年度)末から郵貯の財投・国債等残高は減少しており、1990年度(平成2年度)とまだ郵貯残高が多かった2001年度(平成13年度)だけを単純に比較した資料は恣意的なものを感じざるを得ません。

これは、当時総務大臣だった片山さんの「郵貯は一時拡大して、270兆円近くまでいったが、ここ数年の定額貯金満期の影響で、現在は約230兆円台で、将来は200兆円台と見込んでいる。」との発言も無視した形になっていたのです。

それとこの資料は民間部門と公的部門が一緒くたにされていますが、「3 資金の流れを官から民へ」でも述べたように、本来、公的部門と民間部門の資金循環はそれぞれの部門で信用創造が行われており、分けて考えなければなりません。

皮肉なことに全銀協を事務局とした金融調査研究会(座長:貝塚啓明中央大学研究開発機構教授)でまとめられた「政策金融改革のあり方について(提言)」の中に「マクロ経済と資金の流れ」の2001年と1990年の比較と2003年と2001年の比較の資料が掲載されていましたのでその数値を使用して私なりにより分かりやすく資料を作り変えてみました。

ちなみに同提言の中にも「すでに一部には現れ始めている。家計の郵便貯金・簡易保険の保有残高は2001年から2003年のわずか2年の間で20兆円ほど減少した。また、同期間に郵便貯金・簡易保険の国債・地方債・財投債の保有残高は30兆円ほど低下した。」との記述があります。

9−3図 マクロ経済と資金の流れ(2001年と1990年の比較)

9-3図を見れば、確かに官の資金循環が拡大して、民の資金循環が縮小していることが分かります。

1990年から2001年の11年間の間に民間主導の信用創造である銀行の貸出残高が761兆円から580兆円と181兆円減っているのに対して、官主導の信用創造である国及び地方の債務残高は266兆円から673兆円と407兆円も膨れ上がっています。

その間に郵貯・簡保・年金から政府に流れる資金も152兆円も増えており、官の信用創造の入り口の一端を担っていたのは間違いありません。

しかし、ここで重要なのは、Fの国債・財投債です。

Fは民の資金循環から官の資金循環へと資金が入り込んでいる部分ですが、この国債・財投債も82兆円から209兆円と127兆円も膨らんでいるのです。

この民間から流れ込んだ資金127兆円は、郵貯・簡保・年金から流れ込んだ152兆円と比べても25兆円しか違わないのです。

つまり、公的部門経由の資金が急増しているのは、民間金融機関もその半分近くを担っており、何も郵貯・簡保が入り口の役割をしているからだけではないのです。

それでは、財投改革が行われた2001年以降がどうなっているか見てみましょう。

9−4図 マクロ経済と資金の流れ(2003年と2001年の比較)

9−4図がその資料ですが、この図を見れば一目瞭然だと思います。

財投改革が行われた2001年から2003年の2年間の間に、郵貯・簡保・年金から政府に流れる資金は27兆円も減少しているにもかかわらず、国及び地方債務残高は25兆円も増加しています。

その上、民間主導の信用創造の一端である銀行貸出残高は、わずか2年間の間に60兆円も減少しているのです。

そして、国及び地方債務残高が更に膨らんでも国が破綻していない理由は、民間金融機関から政府に流れ込む資金(F国債・財投債)が209兆円から242兆円と33兆円も増加しているからなのです。

それでは、郵貯・簡保を民営化すれば、「資金が官から民へ流れる」のでしょうか?

9−5図 マクロ経済と資金の流れ(もし2003年に郵貯・簡保・年金が民営化していたら?)

<マクロ経済と資金の流れPDF版>

9−5図は、もし、現在の状態で郵貯・簡保・年金を民営化すればどうなるのかという資料ですが、確かに家計から民間金融機関に流れる資金は519兆円増加しますが、民間金融機関から政府に流れる資金も376兆円も増加してしまいます。

そして、民間金融機関が郵貯・簡保に代わり政府の資金供給をするという非常に歪な官の資金循環が形成されてしまうのです。

運用資産のポートフォリオの一端に位置する程度の多少の国債であれば、民間金融機関にも必要なのかもしれませんが、国債の償還を国債で賄っているという自転車操業を行っている中での膨大な政府債務を民間金融機関でファイナンスするというのは野口悠紀雄氏が言われるように民間金融機関にかかる負担が重過ぎます。

現在の民間金融機関は、日銀によってジャブジャブと供給される資金と厳しい金融庁検査、企業の資金需要低下にともない資金の運用先に困った挙句、国債の購入に走っています。

しかし、一端、金利上昇に向かい国債が値下がりすれば、それは新たな不良債権となって銀行経営を圧迫してしまうのです。

 

@及びAの民間の資金調達については、企業が調達できなければ、一企業の破綻で済みます。

しかし、Fの政府の資金調達については、政府が調達できなければ、国が破綻してしまいます。

国が破綻すれば、間違いなくアルゼンチンのようなハイパーインフレが訪れて、預金封鎖などが行われ国民の貯蓄は政府に没収されてしまいます。

また、金利が跳ね上がるため企業の資金調達がままならなくなり、次々と企業が破綻して国民が路頭に迷うことになるのです。

そして、Fの資金の流れが膨らめば膨らむほど、そのリスクは高まるのです。

もうお分かりだと思いますが、単純に郵貯・簡保を民営化したら「資金が官から民へ流れる」というのは、馬鹿げた話であり単なる「郵政民営化ありき」のマヤカシに過ぎないのです。

それどころか郵貯・簡保を民営化すれば、Fの資金の流れが一気に膨らむため、日本国の破綻リスクも一気に高まることになります。

一応、政府は国債管理政策に配慮するため、民営化前の旧貯金は承継法人なるものを作ってその貯金分の資産を国債などの安全資産で運用するようにしているようですが、現在のような超低金利から金利上昇期に向かえば、郵貯の集中満期があったように一気に預けかえられるのは目に見えており、ほとんど意味がないでしょう。

 

郵政民営化の「そもそも論」は、マクロ経済の資金の流れの正常化から始まっていたはずです。

以上で述べたようにマクロ経済の資金の流れの正常化は、民間主導の信用創造である民間貸出需要が増えて、国及び地方債務残高が減らない限り解決しない問題なのです。

そして、「民間主導の信用創造である民間貸出需要が増える」というのは、景気の回復を意味しており、これは国民が一番政策に求めている景気対策と合致しているのです。

また、「国及び地方債務残高の減少」は、財務省理財局が財投債及び政府保証債を発行することにより、財投改革で先送りされた出口改革と増税しか残された道はないのです。

政府は、郵政民営化の「そもそも論」を捻じ曲げてまで「民営化ありき」で議論を進めていますが、本来の「そもそも論」が崩れたからには、早急に郵政民営化の議論をやめて、国民が望んでいる景気対策、財投機関の統廃合などを行って「マクロ経済の資金の流れの正常化」を目指さなければならないと考えます。

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