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株主なんか恐くない (2005/06/06)
1.さあ、ムラカミ総会が始まる
明星食品社長の永野博信は、その日の事を今でも鮮明に記憶している。
2004年7月16日。3日前に梅雨明けした途端、真夏日に襲われた関東地方は、その日も朝からうんざりするような日差しが照りつけていた。
午後11時過ぎ、永野の机の電話が鳴る。電話の向こうの男はやや甲高い口調で、まとまった量の明星食品株を取得したので大株主として千駄ヶ谷の明星本社にお邪魔したいなどと、まくし立てた。
当時、株価の割安な明星に目を付けた投資ファンドの米スティール・パートナーズが10%超を握る大株主として登場していた。「面倒なことにならなければ良いが」と思いが永野の脳裏をよぎった。
午後2時半、エアコンが程よく効いた本社2階の特別会議室で、永野はその男と向かい合う。男は改めて「ムラカミ・ヨシアキ」と名乗った。
「開口一番、株主利益をもっと大事にしろと言われた。資本、資産の効率化を図れ、と。だから株式の持合をやめろとか、原宿に近い一等地で商売している必要ないんだからビルを売れとか。外食事業は関係ないから飲食事業の子会社を切り離せとか、囲炉裏炉言ってきた」
「1時間20分か30分。一方的にしゃべりまくって帰った。お前なんかクビに出来ると言わんばかりのニュアンスで。あの日は正直、眠れなかったですよ」
酷暑の2004年夏。経営者・永野と、株主・村上世彰のジリジリするような関係の始まりだった。
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