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刑事法講座《実践編》
あなたが逮捕された時《自分を守るために》
職務質問撃退マニュアル
善良な市民であっても、いつ職務質問されるかわかりません。素直に協力すれば済む話なのですが、ごく一部に悪質ともいえる職質があることも事実です。そんな時、あなたならどうするだろうか。
まず、警察官が「職務質問」の権限を有している法的根拠は、警察官職務執行法にあります。その2条1項において「異常な挙動、その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、もしくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者、または既に行われた犯罪について、もしくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる」と規定されています。つまり、「異常な挙動の人」「犯罪を犯したり、もしくは犯そうとしていると思われる人」「犯罪について、知っていると思われる人」に対してのみ停止させ質問することができるのです。また、「必要な最小の限度において用いるべきものであって、その濫用にわたるようなことがあってはならない」と1条2項において規定されており、警察官といえども、何の理由もなく職務質問をする権限を持っているわけではありません。
そして、2条3項において、「刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所もしくは駐在所に連行され、もしくは答弁を強要されることはない」と記してあります。これは、職務質問が「任意」であり、決して「強制」できないことの根拠です。市民には質問に答える義務など存在しないのです。しかし、「答えなければ公務執行妨害で逮捕する」などと言い、半ば答弁を強要するケースもごく希にありますが、これは一般市民の無知を利用したもので、実際には職務質問を断ったからといって逮捕されることはありません。職務質問が公務であることは確かですが、それを断ることも市民の「当然の権利」であり、公務執行妨害罪になりません。
また、警察官は、市民から身分証の提示を求められたら、速やかに提示しなければなりません(警察官服務規定)。この場合、警察手帳の表紙部分ではなく、警察官の写真が張ってあるページを見せることになります。また、テレビドラマなどで用いる警察手帳には、表紙に「警察手帳」と書いてあることが多いのですが、本物には各都道府県警察名が書いてあります。悪質な職務質問をされたら、まず相手の身分(名前、所属部署、役職、階級など)を確認し、職務質問するに足りる正当な理由の提示を求めましょう。それを拒否されたら、警察署などに苦情を出すことで、何らかの対策がとられるはずです。
これまで説明したように、職務質問の際に行われることは「停止・質問・同行」の3つであるが、いずれも「任意」であり、嫌なら断っても良いのです。
職務質問に対する応答のモデル
警:「ここで何してるの?」
私:「あなたこそ、ここで何してるの?」
警:「職務質問です」
私:「職務質問をするに足りる正当かつ合理的理由を説明してください。それがなければ、職権の濫用であり、人権の侵害です」
警:「名前を教えて下さい」
私:「その前に、あなたが警察官である証拠(警察手帳)を見せて下さい」
警:「何もしてないなら答えられるでしょ」
私:「何もしてないから答える必要はありません」
警:「答えないと公務執行妨害だよ」
私:「職務質問はあくまで任意であり、答える義務はありません。逮捕するなら逮捕令状を持ってきて下さい」
警:「何もしていないなら証拠を見せろ」
私:「何もしていない証拠など存在しません。私が何かしたというなら、証拠を見せて下さい。あなたには挙証(証拠を示す)責任があるのですから」
警:「ちょっと交番まで来てもらえる?」
私:「お断りします。今、忙しいんですよ。もし遅刻したら、あなたが責任取ってくれますか?」
このように法律を少しでも勉強しておけば、いらぬ嫌疑をかけられてしまっても、おどおどせずに直ぐに対応することができます。これはあくまで、ごく希に存在する悪質な職務質問に対抗する手段の提示であり、職務質問を拒否することを勧めているわけではありません。できることなら、しっかりと協力しましょう。市民の協力なしに、犯罪のない町は作れません。
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