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高岩 仁著「戦争案内」
この本の著者は、フリーの記録映画カメラマンで、記録映画「教えられなかった戦争」シリーズの製作者です。
(以下引用)
十一、日本の外務省とマスコミについての報告、日本に言論の自由はあるのか?
(前略)
最初のマレーシア編製作のとき、マレーシアから無事戻ってきて、国内取材に入った直後、朝日新聞に小さなこの映画制作に関する紹介記事が出ました。三行くらいのものだったと思います。そうしたらマスコミ六社から詳しい取材の申し込みがありました。朝日、毎日、神奈川、共同の新聞四社とフジ、NHKの放送二社でした。なかでもフジTVの担当者はとても熱心でした。キャスターが強い関心を持っていますので是非といっていました。私たちとしては、何の組織も無く、映画制作をしていますので新聞や、テレビで紹介してもらえれば、全国的な宣伝になるし、ありがたいことですから全面的に協力しました。取材してきた重要なことを詳しく伝えました。
しかし私たちが取材した内容を持ち帰って、各社で検討した結果でしょう。まず毎日新聞とフジTVが、うちの社では取り扱えないといって引き下がりました。どうやら戦争中の残虐行為は何とかパスしたようですが、戦後もアジアの人々が第二の侵略といっている、日本企業による環境破壊や人権無視の実態などを、私たちが取材してきていることが引っかかったようです。とくに、企業の実名をあげて取材しているのが駄目だったようです。考えてみたら当たり前ですね、これらマスコミの大スポンサーが、アジアで第二の侵略を引き起こしている企業ですから。
しかし朝日とNHKの女性記者は、とても熱心に取材してくれました。朝日の人は「こんな大事なことがもし新聞で扱えないとしたら、ジャーナリストとしての使命が果たせないではないですか」と張り切っていましたし、NHKの人も「朝のニュースワイドの時間に、五分間だけ自分の枠を持っていますから、五分以内にまとめれば大丈夫です」といって、私たちがとってきた映像を朝日の人と一緒に、全部熱心に見たり、私自身にも詳しくインタビューをしてくれました。
東京の初上映の一週間前に放映されると聞いてましたので、楽しみにしてその番組を見ました。ところが、五分あるはずの番組が三分ちょっとになっていて、しかも内容がアジア太平洋戦争中に、マレーシアで中国系住民に対する虐殺があった、と言うことを取材した映画の紹介になっていました。アジア太平洋戦争を必要として起こし、戦争で巨額の利益を得た財閥のこと、そして現在進行している第二の侵略のことが、全く消されていました。取材したNHKの記者はこの部分が今までにない、新しい大事な部分ですねといっていたのに。
そして続いて出された朝日新聞は、多少のニュアンスは違っていてもほぼ同じ内容になっていました。全体としては戦争は残酷だという内容紹介でした。ですから、いよいよ上映が始まってから、観に来てくださった観客の方から何度も言われました。報道で紹介されていた内容と映画がぜんぜん違うねと。
放映のあくる日、NHKの記者がしょんぼりしてあやまりに来ました。ただすみませんと言うだけでした。僕も気の毒で何も聞けませんでした。ずいぶん後で、NHKの社会部の記者が教えてくれましたが、放映直前になってデスクが怒鳴り込んできて、ずたずたに切ってしまって、どうにもならなかったのですということでした。
朝日の記者も気の毒でした、「私、朝日をやめようかと思うのです」といっていましたので、「こんなことでいちいち辞めていたのでは、どこに言っても勤まりませんよ。」と励ましましたが、本当に二人は気の毒でした。
(中略)
最後に私が感心した記者の方たちの仕事をご紹介します。シリーズ二作目のフィリピン編を見た新聞記者が、何人も外務省をたずねたようです。日本のODAで、あんなひどいことをしているのかと言う問いに、外務省の役人は口をそろえて「あの映画はみんな嘘だ」といったそうです。外務省の役人たちも、最初の上映会を観に来ていたようです。朝日新聞の社会部の記者が私の自宅をわざわざ訪ねてきて、「外務省の役人たちはみんな嘘だといっていますが、高岩さんとしては、自信はありますか」というので、「僕はそこにあるもの、起こっているものをそのまま撮ってくるだけで、嘘なんかつく必要はないですよ」と返事しました。
その朝日の記者はとてもまじめな人で、結局自費でフィリピンまで確かめにいきました。そしてフィリピンから興奮したような電話をくれました。「高岩さんの映画はみんな本当でした。自分で確かめました。私は日本に帰って、外務省の役人に対する抗議の記事を書きます。」といっていました。僕のところは朝日を取っていますので、期待してましたら、記事は出ましたが、ミンダナオのNGOの活動家が、北京の国際会議に出席して、環境問題の報告をするということだけしか出ていませんでした。やっぱり書けなかったんだと、がっかりしてましたら、彼は書いたんです。朝日の埼玉の方で配達された三版には出ていました。私のところに配達されるのは十二版です。結局遅い判のときには削られてしまったのです。
(中略)
「教えられなかった戦争」シリーズも三作目の、沖縄編は、東京都心の新聞・テレビは全く載せなくなりました。完成したときに、二度プレス試写会を設定して、450人の記者たちに招待状を出しましたが、みごとに一人も観にきませんでした。しかも沖縄編はキネマ旬報のベストテンの第一位に選ばれたのに、全く全国紙には紹介記事が載りませんでした。悔しいですが結果はてきめんです。前の二作品に比べて、普及が半分もいきません。このままでは次の作品の製作の見通しは全く立たない状態です。
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