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【2005年7月5日 JPL CICLOPS Imaging Diary 】
土星探査機カッシーニが、土星の衛星タイタンの南極に湖を思わせる地形を観測した。タイタン表面に口をあけたこの暗い地形の周辺は、これまでタイタンでは見つからなかった、なだらかな岸のような形状である。
タイタンの南極に発見された湖のような地形の画 像。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/Space Science Institute ) |
カッシーニイメージングチームの研究者によれば、メタンの雨が地上に届くほど強い嵐がこの地域で発生することは十分考えられるという。そしてタイタンの気温はとても低いため、表面で液体のメタンが蒸発するまでには相当の時間を要し、長い間メタンの湖が存在していてもおかしくないそうだ。
別の仮説としては、ここはかつては湖だったが、今では蒸発してしまい暗い堆積物だけがとり残されているというものがある。他にも、大きなくぼみに大気中から固形の炭化水素が降り積もってできたという考えもある。この場合、周辺のなだらかな地形は、降雨以外のプロセスでできる地形、例えば火山によるカルデラということになる。火山活動のある木星の衛星イオの溶岩湖に似ていると指摘する研究者もいる。
現在のところ、画像にも白く写っている雲に邪魔されてこの湖候補を詳しく調べることは難しい。しかし、今後数年かけてタイタンの季節が変化するにつれて、雲も移動する。その際に、カッシーニは、再びこの地形を調べることになる。また、39回予定されているタイタン・フライバイで、カッシーニは、タイタン表面で鏡のように光を反射する領域の探査も行うことになっている。もしも、鏡のようなまぶしい光の反射が発見されれば、それこそがタイタンに液体が存在する確固たる証拠となるはずだ。
土星の衛星は、木星のガリレオ衛星のように飛びぬけて明るいものはない。しかし、10等前後のものが数多くあり、口径20cmクラスの望遠鏡なら5〜6個の衛星が土星の周りに見えて、ガリレオ衛星以外明るい衛星のない木星系よりにぎやかである。中でも8等のタイタンは土星系最大の衛星(半径約2500km)で、窒素成分の大気を持ち、生命存在の可能性が指摘される興味深い衛星である。(最新デジタル宇宙大百科より)