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太陽系の謎解明へ「ディープ・インパクト」 彗星“爆撃”し飛散物質分析
来月4日 NASA壮大計画
「ディープ・インパクト」といっても映画の題名や競走馬の名前ではない。人類史上初めて、彗星(すいせい)の内部を直接調べようという米航空宇宙局(NASA)の彗星探査計画だ。米独立記念日の七月四日、重さ三百七十キロの銅製の衝撃弾(インパクター)を彗星に撃ち込み、飛び散った内部物質の観測を目指す。約四十五億年にわたって彗星の内部に閉じ込められてきた原始太陽系の構成物質に、米国らしい壮大な手法で光をあてる。(溝上健良)
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「タイムカプセルのふたを開けるような試みです」。国立天文台すばる望遠鏡(米ハワイ島)広報担当の布施哲治さんはそう解説する。
彗星は地球や火星のような惑星になれなかった星くずで、原始太陽系を構成したガスやちりが凍りついた小天体。大きな楕円(だえん)軌道を描いて太陽への接近を繰り返すうちに、「汚れた雪だるま」のように表面は焼けただれ、炭のように黒っぽい殻ができている。
この殻を壊して、中に保存されているはずの新鮮な氷の成分を調べることで、太陽系や惑星の起源に迫るのが「ディープ・インパクト」の目的だ。
ターゲットの「テンペル第1彗星」は、縦約十五キロ、横五キロの細長い形でニューヨーク・マンハッタン島ぐらいの大きさ。太陽から離れているので、ハレー彗星のような尾はない。ほぼ五年半の周期で火星と木星の間の楕円軌道を公転しており、地球に近づいたところを狙い撃つ。
今年一月に打ち上げた「ディープ・インパクト」の探査機は、四億三千万キロの行程を順調に飛行しており、七月三日には銅製の衝撃弾(直径一メートル、長さ一メートル)を、八十八万キロ先の彗星の核に向けて発射する。銅を撃ち込むのは、飛び散った彗星の物質と区別するためだ。
衝突は米東部夏時間で七月四日午前一時五十二分(日本時間午後二時五十二分)。日本は日中なので衝突時の観測は無理だが、国立天文台のすばる望遠鏡をはじめ、ハワイ・マウナケア山頂にある各国の大型望遠鏡が、テンペル第1彗星に向けられる。地球から観測できるように、衝撃弾は太陽光が当たっている側に撃ち込む。最短で五百キロまで接近する「ディープ・インパクト」の探査機からも、観測データを地球に送ってくる。
人類史上初の「深い衝撃」によって、どんなことが起きるのか。
大まかなシナリオとしては、最大でサッカー場規模のクレーターができ、そこから内部の氷が解けて構成物質が噴出する−と考えられる。
その通りになれば、噴き出した物質が太陽の光を受けて彗星が明るさを増し、衝突から数時間後の様子を日本で観測することもできそうだ。
国立天文台などは夕方から観測を試みる。明るさは十等星くらいで、「熟練したアマチュア天文家が、都市部ではない星空のきれいなところで挑戦すれば、なんとか彗星そのものは見えるはず」という。
ただし、シナリオ通りにいかない可能性もある。計画自体が初めてで、目標の彗星の実態も詳しく分かっているわけではない。研究者にとっても本当のところは「やってみなければ分からない」のだ。「衝撃弾がブスッと彗星の中に突き刺さってしまうかもしれないし、衝突せずにかすめてしまうかもしれない」(布施さん)。中には「衝突で彗星が割れてしまう」と考える専門家もいるという。布施さんは「どんな結果が出るか、予想は非常に難しい。楽しみにしていてください」と、人類にとって未知の“インパクト”に期待を寄せている。
http://www.sankei.co.jp/news/morning/26iti002.htm