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貧困層に届かぬ支援 スマトラ沖地震、あす半年
スマトラ沖大地震の震源
仮設住宅に入れず、海岸沿いの道路にテント小屋を建てて暮らす人びと=チェンナイで
高台に向かう避難訓練の参加者たち=インドネシア・スマトラ島のパダンで
スマトラ沖大地震と津波から26日で半年を迎える。被災地では復興が始まりつつあるが、政府の支援から抜け落ちた人たちも目立つ。インドでは仮設住宅にも入れない村民たちがテント村で暮らしている。被災地では少なくとも172万人が避難したままだ。防災の取り組みも始まったばかりで、余裕のない生活が続く。
●仮設に入れず、浜にテント
インド南部の大都市チェンナイ(マドラス)では、まだ仮設住宅に入居できず、がれきに埋もれるようにして暮らす人たちがいる。戸数が限られており、家主たちの入居を優先させたため、借家人の一部があぶれてしまった。
チェンナイ北部のアンナナガール村。竹の柱と梁(はり)を組み、古いシーツやサリーなどの布をかけた粗末なテントが浜に並ぶ。日中の気温は40度近い。約20世帯の約200人が、ぼろ布の陰にじっとしていた。
約1千世帯のうち約600世帯の家が津波で壊された。2月に完成した仮設住宅は、まず大家に入居票が発行された。ほとんどの被災者が入居したが、20世帯が「積み残し」になった。
地元州政府など自治体が被災実態を十分確かめなかったことが原因といわれる。「担当者が村に足を運んだが、被災者数や暮らしぶり、津波前の居住状況などを調べたことはない」と村民たちは話す。入居者の登録も「いつ、どこでするのか連絡がなかった。知らないうちに大家が登録していた」という。
州政府の担当者は「大家や借家人に関係なく、住む家を失った者は入る権利がある」という。実際、借家人も入居している。しかし、多くが複数の入居資格を持つ家主のあっせんや、運良く入居リストに載った人たちといわれる。空き家も幾つかあるが、再募集の動きはない。入居できなかった者への救済策は、現場では徹底されていない。
チェンナイ中部の沿岸の村でも、漁師から家を借りて住みついた約220世帯が、粗末なテント小屋で暮らしている。津波で身分証明書を失うなどしたため、入居権利が与えられなかった。
入居票は、政府による月1千ルピー(約2400円)の支援と、米などの物資配給を受ける資格がついている。いずれ政府が建てる恒久住宅の割り当ても、仮設の入居権がもとになる。大家には別の地区に住宅を持つ者もめだつが、権利を手放す家主は少ないという。
テント村の住民の多くが社会的な地位が最も低いカーストに属する人びとだ。「役人も来ない。人間扱いされていない感じ」と漁師のデシンさん(46)。非政府組織(NGO)や役所などは、仮設住宅で援助活動するので、食料や水などの配給はテント村を素通りする。幸い、水は道路の向かいに住む一家が善意で井戸水を1日1回くませてくれる。なるべく援助物資には頼らず、小さな舟で魚をとったり、建設現場で働いたりしているという。
NGOの連合体、北タミルナド州津波救援復興委員会のジャヤラジ代表は「役所の職員が足りない。大家と末端の役人が結託している疑いもある。『忘れられた被災者』がまだいる可能性がある」と、調査を本格化させる考えだ。(チェンナイ=大野良祐)
●防災、これから本格化
津波から身を守る訓練や、避難路づくりも少しずつ始まっている。
インドネシア・スマトラ島パダンのグヌンパンギルン地区で11日の昼前、サイレンの音が鳴り響いた。約半年前の大津波以来、同国で初の本格的な避難訓練という。
数分後、地元の住民や学生らが、ボランティアの指示に従って高台に移動を始めた。のんびりと歩く姿が大半だが、大あわてで走る人も。母親のヌルネティさん(74)の手を引いて避難した主婦ユリさん(38)は「これまでは地震のたびに訳も分からず、家を飛び出していた。避難先が分かり、すこしは安心できる」。
人口約80万のパダン市は、前回の津波で大きな被害を受けなかったが、警戒感は強い。米カリフォルニア工科大学などは、同市沖を震源とし最高5メートルの津波を生む地震の可能性を指摘する。
避難訓練は、日本に留学経験のある地元アンダラス大学のフェブリン工学部長らが州政府と市役所、警察などの協力を得て計画した。今年中に市内約30カ所の全地区で実施する予定。「パダンは標高5メートル以下に多くの住民が密集している。津波が来たらひとたまりもない」という。
中央政府は、災害に強い街づくりと防災教育の強化を計画し、米国の連邦緊急事態管理庁(FEMA)などを参考にした災害対策機関の構想も浮上している。津波の早期警戒システムでも、10月までに地震計や潮位測定器などを要所に設置。海岸から2キロまでの都市計画も練り直す。
しかし、住宅や道路の改修など生活インフラの復興が優先されがちだ。避難訓練も、被災が集中したスマトラ島の一部を除き、ほとんど実施されていない。市民の関心もいま一つで、訓練の取材はテレビ2局とラジオ1局だけで、新聞や通信社は取り上げなかった。
タイでは、津波の早期警報を担う自然災害警報センターが5月、バンコク近郊に発足した。国内各地の観測所や日本、ハワイから情報を集め、国内のテレビ、ラジオ局に情報を流す。携帯電話にもメールで送信できる。
避難訓練も始まった。プーケットのパトンビーチでは4月末、新設の警報タワーを使い、約2千人が参加。国際的な観光リゾートのカオラックがあるパンガー県も今月20日に実施した。
避難路の拡充に力を入れる。同県のナムケン村にある道の幅は3〜7メートルだが、すべて10メートル以上に広げる。海辺から内陸に向かう4車線、幅30メートルの道路もつくる。車で津波から逃れようとした人たちが渋滞し、多くが車のまま流されたからだ。
インドでは5月、災害時の中央政府と自治体の連携を円滑にする災害管理法案が議会に提出された。8千人の国家災害対応部隊の発足なども盛り込んだ。避難訓練や防災意識の徹底などは、これからだ。(パダン=藤谷健、プーケット=貝瀬秋彦)
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