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阪神大震災から10年 ゾンビ化するハコモノ行政[田中康夫氏/日刊ゲンダイ]
http://www.asyura2.com/0502/jisin12/msg/146.html
投稿者 なるほど 日時 2005 年 1 月 27 日 23:07:25:dfhdU2/i2Qkk2

【奇っ怪ニッポン】  2005年1月20日 掲載  
阪神大震災から10年 ゾンビ化するハコモノ行政

「こんなにも国家としての日本が豊かになったのは、こんなにも個人としての国民が貧しい儘(まま)に留め置かれていたからだ」
 フランスの社会学者として知られるジャン・ボードリヤールが阪神・淡路大震災の発生直後、被災地を訪れて述懐した科白(せりふ)です。
「ジャパン・アズ・No.1」と煽(おだ)てられたニッポンは、今や地方都市も含めて高層ビルが建ち並ぶ「豊かさ」です。一方で人々は大枚を投じて購入した郊外住宅から満員電車に詰め込まれて通勤し続ける「貧しさ」を、彼は鋭く看破したのでした。その状況は震災から10年を経て猶(なお)、変わらないと言えます。
 総額11兆円にも上る「復興」事業費は一体、何処へ垂れ流されてしまったのか。「日刊ゲンダイ」の盟友「FRIDAY」が、相も変わらぬハコモノ行政的発想の「復興」に留まる被災地の特集を組んでいます。
 起債残高3兆円の神戸市は、伊丹、関空の2空港が近接するにも拘(かかわ)らず、関連事業費も含めれば1兆円近くに達すると言われる巨額を投じて建設中の海上“市営”空港は、象徴的です。新幹線も高速道路も完備した街が行うべき「復興」は、もっと別の事柄ではあるまいか。と考えた僕は6年前、手弁当で東京から100往復し、住民投票を求める市民と共に30万人を超える署名を神戸市に提出しました。が、その請求は市議会で否決され、バブル期の計画が「復興」の名の下にゾンビ化したのです。
 長田区を始めとする激震地に暮らす人々は、震災前の8割です。有効求人倍率は0.66と低迷し続けています。造船と製鉄の街として富国強兵なニッポンを牽引してきた「株式会社・神戸市」は、福祉・医療、教育、環境といった経世済民型の産業構造へと一大転換する好機と捉えるべきだったのです。多くの犠牲者を鎮魂する意味でも。
 が、1千億円近くを投じて神戸市が進める医療産業都市構想は、埋め立て地を造成して企業誘致する、相も変わらぬ起債主義なのです。真の医療都市を目指すなら、きめ細かい訪問介護を実現するべくヘルパーを増員する選択かも知れません。福祉や医療、教育は、人が人のお世話をして初めて成り立つ領域です。それこそは造船や製鉄に替わる、21世紀型の労働集約的産業なのです。にも拘らず、どうしてハコモノ行政なのでしょう。それは、起債が認められるのは、道路と公園とハコモノだけに留まるからです。新たな雇用を生むソフト事業への起債は認められていないのです。お題目の如くに未(いま)だ「三位一体」だの「規制緩和」だのと唱える小泉純一郎ちゃんは、判ってるのかなぁ、判らないだろうなぁ(苦笑)。【田中康夫】

http://gendai.net/contents.asp?c=025&id=17615



『居住福祉』岩波新書 早川 和男 (著)より
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4004305276/
<六〇歳の女性や保健婦が予感している災害の危険を、専門家は早くから警告し
ていた。一九七四年一月、神戸市消防局は、京都大学・堀内三郎教授の協力の
もとに、大地震を想定した延焼動態図を作成した。それによると、大地震で市
内各地からいっせいに火災が発生した場合、木造建築物が90%以上を占める二七
〇区域のうち延焼を免れるのは六九区域で、長田・兵庫区はほぼ全滅するなど
と予測された。その内容は地元の『朝日新聞』一九七四年一月二十二日一面に
大きく報道された。「道路も消防栓も満足に使えない状況で、市内各署に三、
四台しか配置されていない消防車では全く消化活動できない事態も考えられる
ため、この延焼予測結果は」真剣に検討しておく必要がある、と消防局は見て
いる>(P35)

<中略>

<同じ七四年九月一日大阪市立大学と京都大学(代表者笠間太郎・岸本兆方)
は、神戸市から委託を受けて神戸における地震の可能性と被害予測について調
査、報告した。報告書『神戸と地震』(同年一一月神戸市発行)には、結論と
してこう書かれている。「活断層の実在するこの地域で、将来直下型の大地震
が発生する可能性はあり、そのときには断層付近でキ裂・変位がおこり、壊滅
的な被害を受けることは間違いない。」この記事も一九七四年六月二六日の神
戸新聞一面トップで紹介された。さらに同七九年「兵庫県震災対策調査報告書
」−兵庫県下における地震災害の潜在的危険度(兵庫県刊行)で調査を担当し
た神戸大学理学部三東哲夫教授はこう警告している。「兵庫県の南部、・・・
特に神戸・西宮・尼崎等の諸都市は震度五程度の地震に対してすら大きな被害
が生ずるに足る多くの弱点をもっている。・・・六甲山系を西南西〜東北東方
向に並走している多くの活断層・・・の再活動はそう遠くなく、また規模も大
きいことが予想されるので、たいへん不気味である。・・・特に、多くの活断
層を被うように六甲山麓にまで拡張された神戸市は、仮にこれらの活断層の再
活動による地震以外の他の地震活動によって震度五の地振動をうけた場合でも
、・・・大きな被害をうけることは必然である。・・・これ以上地震に対して
ぜい弱な都市をつくることは許されない。現在計画中の都市開発計画に対して
も、地震防災の面からの再検討が必要である。」だが神戸市政は「株式会社」
の異名をとり、利益追求の都市開発・都市経営に傾斜してきた。そしてこれら
の予測と警告に対する備えを怠っていた(その経過は『神戸黒書』−阪神大震
災と神戸市政』労働旬報社、一九九六年に詳しい)。大震災はその予測に沿っ
て起きた、ということである。もしこれらの情報が正しく伝えられていれば、
市民は自己資金ででも住宅を補強したり、行政に援助を求めたり、企業はビル
を安全にしたり、鉄道、港湾、高速道路等の公共施設の強化も図られたであろ
う。戻らぬいのちをふくめ、物的損害だけで十数兆円といわれる被害は市民不
在の市政の延長線上にあったといわざるをえない>(P36〜37)

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