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オランダの名門フットボールクラブ「アヤックス」のお話です。(ちなみに、元浦和レッズの小野選手は、同じオランダのフットボールリーグの「フェイエノールト」所属です)
朝日新聞2005年3月14日読書欄より
佐山一郎 評
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南アフリカ出身のユダヤ人の両親を持つ著者は、69年生まれ。
異色のフットボール・ジャーナリストとして知られる。
執筆のきっかけは、百周年を迎えつつあったオランダ最大のフットボール・クラブ、アヤックスが、戦前も今も「ユダヤ系」クラブであるという消えない噂から。
アヤックスはカリスマ、ヨハン・クライフを生んだアムステルダムの名門クラブとして名高い。
読後に得られる真相は、ユダヤ人富豪による資金提供と、戦前から続くアヤックス独特のユダヤ的雰囲気が、60年代後半に始まる黄金期をもたらしたという事実に尽きる。
ドイツ侵攻時、在住の14万人のユダヤ人のうちの10万人をオランダ人が見殺しにしたことにも著者はこだわり続ける。
サイモン・クーパーが記す。
「フットボール・クラブは一種の家族であり、自分自身の家族を持たない人に
とってはとりわけだ。
(略)血のつながりこそなかったが、その点はホロコースト以降のたいていのユダヤ人家族も同様だった。殺された祖父と同年輩の生存者が『お祖父ちゃん』になり、他の者が『叔父さん』になり、従兄弟をでっちあげて人生をもう一度やり直そうとする」
冗長な面もあるが、この著者ならではの発見に満ちている。
(白水社・柳下毅一郎訳・2415円)