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プリーモ・レヴィ 猩紅熱、アウシュヴィッツIGファルベン
http://www.asyura2.com/0502/holocaust1/msg/298.html
投稿者 kamenoko 日時 2005 年 2 月 28 日 01:55:41: pabqsWuV.mDlg

(回答先: 発疹チフス患者のドイツ移送と超満員で流行に拍車の悲惨な最期 投稿者 木村愛二 日時 2005 年 2 月 27 日 20:40:28)

アウシュヴィッツからの生還者プリーモ・レヴィは、猩紅熱に
罹っていた。

サイト「プリーモ・レヴィに捧ぐ」より、該当箇所を引用・翻訳。
http://www.minerva.unito.it/Storia/Levi/LeviIndice.htm

・・・・

Per tutta la durata della permanenza nel Lager, Levi riesce a non ammalarsi, ma contrae la scarlattina proprio quando nel gennaio 1945 i tedeschi, sotto l’avvicinarsi delle truppe russe, evacuano il campo, abbandonando gli ammalati al loro destino. Gli altri prigionieri vengono rideportati verso Buchenwald e Mauthausen e muoiono quasi tutti.

強制収用所で過ごした期間、病気にならなかったレーヴィだが、45年1月、
ソ連狙撃兵の接近を前にドイツ軍が病人を(運を天に任せて)置き去りに
してキャンプを撤退したその時に、猩紅熱に罹っていた。ブッヒェンバルド、
マウトハウゼンに移送された他の捕囚のほとんどは、命を落とした。

・・・・・・

また
化学の学位を得た後、鉱山のラボ、化学/薬品工場に勤めたレーヴィが
アウシュヴィッツIGファルベン工場の収容所内で過ごした日々を語る
インタビュー。

・・・・・・

http://www.santamelania.it/approf/shoa/sh_doc/vocap06.htmなかほどの
Nicola Caracciolo
Gli ebrei e l'Italia durante la guerra 1940-1945

PL(レーヴィ)
当時のドイツ人は、「イエス・サー」の人々だった。イエスマンです。良い意味でも
悪い意味でも服従的でよく訓練されている国民で、プロシア的完全服従を受け入れて
いた。当時の学校の教科書も読んでみましたが、数年間でのナチス国家建国に大きく
寄与したであろう内容だった。カルト的訓練、カルト的服従、個を排し、規律の乱れを
みつけた日にはもう・・・。
収容所は、我々とSSの接触が最低限であるよう組織されており、キャンプはSSが
任命する監督官のもと、自主管理化におかれていた。

NC (聞き手)
”カポー・・”

PL
カポー、そう、フランス風の発音なら。イタリア語とドイツ語では”カーポ”。
私のいたキャンプは特別で、アウシュヴィッツの中では独立しており、Nebenlanger
つまり別棟で、ドイツのトラスト企業IGファルベン工場、イタリアならモンテディソン
のような会社に属しており、資金援助を行っていたドイツがSSへ我々の賃貸料を
支払う。専門家、わたしもそれに相当しますが、1人につき4マルク、職人1人が
3マルク、0.9マルクの職人もいた。SSはこのお金を、1日の必要経費0.6マルク、
衣料品といったものに使っていた。よって、1日労働者1万人分の賃貸料が入るこの
工場は、SSにとって大きな収入源だった。
そういう意味でIGファルベンとSSの間に、こんな取り決めもあった。病人には14日を
超えない期間で治療をせねばならない。それを超えたら殺す。診療所に収容できる人数は、
キャンプ総人口の10%を超えてはいけない。こういった契約があった。

NC 
では、診療所に行くことは’休める喜び’であった反面、危険でもあったと。

PL
ユダヤ人絶滅の流れについて、さきほど筋の通らない盲信と表現したが、ドイツの
工場は筋が通らなくも、盲信でもなく、正当で十分な手間賃を得たいだけだった。
グループを入れ替え続けても、労働者は足りなかった。IGファルベンは我々を
酷使し過ぎないよう、ある種の2面性を持ってある種のプレッシャーをかけていた。
例えば体罰は当然のこと。平手打ち、殴打、蹴り・・私もずいぶん食らったものだが、
やり過ぎてもいけない。そういうわけで、足首を脱臼したり鼻を折った労働者は
みかけない。工場サイドからの、ほどほどの抑制機能が働いた。労働力を必要と
しており、おそらく平均3ヶ月しかもたないほど極限まで酷使したが、人的資源が
枯渇せぬよう3ヶ月は使う必要があったのだ。

NC
キャンプにみられたこれらの偏執的な秩序をどう説明しますか?

PL
ドイツ人のある特徴を思い起こさせるものだ。私自身や他の収容者たちの口から
表現されている苦しみの他にも、内部には無数の苦痛があった。例えば上着の
ボタンは5つなければならず、ひとつでも無くせば悲劇だ。なにがあっても探さなけ
ればならないし、それをつける糸と針も必要になる。靴は一点の曇りもなく磨かれて
いなければならないが、靴クリームなどない。そこで獣脂、タール、ワセリンや
機械油の闇市が存在するのだが、それらで磨くのは木底のサンダルという拷問道具
であり、とにかく朝には光っていなければならない。これはドイツ軍の伝統か、
それでなければパロディだったのだろう。

NC
あなたはアウシュヴィッツで、ひとりのイタリア人に命を助けられましたね。
語っていただけますか?

PL
生き延びたのは沢山の理由によるが、これが一番大きかった。化学製品工場で
約1年10ヶ月働いたわけだが、私にとって幸運なことにある夏の日、44年の
6月だったが、壁職人として送られた。重い石灰袋を肩に担いで運ぶその仕事は
簡単ではない。わたしは最初の行軍で袋の中身をぶちまけるという大失態をやら
かした。その時点でほとんど仕上がっていた壁に、梯子を伝って担ぎ上げる途中
でね。そこで驚いたことに、また幸運なことに、てっぺんからイタリア語が聞こえ
たのだ。なんとひとりはピエモンテのアクセントで、もうひとりに向かって
”ああ わかるさ。こんなやつらとなにをすりゃいいってんだ”。そこで彼に言った。
”あんたイタリア人かい?”と。すると”わかるかい”と返ってきた。この
’わかるかい’はフォッサーノの方言だ。
そう、口数の極端に少ない変わった男だったが、わたしを受け入れてくれた。
その日からほとんどものも言わずに、わたしにごった煮スープを差し入れてくれた。
ある日は羽つきスズメの手羽、スタンパ紙の千切ったものやらプルーンの種やら・・。
あとからわかったのは、彼が仲間のイタリア人から持ち物や残り物を集めてまわり
持ってきてくれたということ。わたしのカロリー不足を補ってくれたのだ、ゼロに
比べたらなんて幸運だろう。その時のわたしが得ていた1日1500-1600カロリー
では、ゼロに比べたらましという程度。
重労働をこなす男が一日に必要なカロリーは2400-2600。仕事以外での我々の接触は
禁じられていた。リスクを知りつつ、それをおかしてまで持ってきてくれた。
”だからどうだってんだ”と肩をすくめてみせるので、”危険だぞ。トラブルに
巻き込まれるぞ”と言うと、手渡さずに決められた場所に置いてくれるようになった
ので、それを取りに行った。別方面からも警告を受けたようだった。

NC 戦後その男性に会いましたか?

PL 
戦後、わたしよりもずっと早く祖国に戻っていた彼と再会した。
戻ってくるなり探し、みつけた。お金や衣服で借りを返したかったのだが、辛すぎる
境遇にいた彼をみつけただけだった。アウシュヴィッツで見たことのトラウマで
酒が欠かせなくなった。多くを語らないが、非常に繊細な神経の持ち主で、アウシュ
ヴィッツとスイスで目撃したことに打ちのめされたと言い、なんというか、傷の
深さゆえに生きていたくない、”こんな世界は生きるに値しない”と言っていた。
壁職人だった、それも優秀な職人だったのにその仕事に戻らずに、くず鉄売りで
得た金を酒に注ぎ込んでいた。時々フォッサーノを訪ね、”なぜそんな風に生きる?”
と尋ねると、非常に冷たい目で”生きるに値しないから。飲むのは酔わずには
いられないからだ”と答えた。酔っ払ったまま外で寝て、肺炎にかかった彼を
サビリアーナの病院に担ぎ込んだ。ワインが飲みたくて抜け出した彼の遺体が、
運河でみつかった。要するにこうだ。彼はアウシュヴィッツからの生還者ではなく、
生還者病に殺されたのだ。

・・・翻訳終了

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