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企業再生の支援、大手証券が本腰 成功すれば株で巨額利益
大手証券が企業再生を支援する投資事業に本腰を入れ始めた。経営破綻(はたん)した相手先に自己資金を投入するだけにリスクは大きいが、うまく立ち直れば、保有した株の値上がりで巨額の利益が転がり込む。長らく株式を売買した際の手数料に依存する経営を続けてきた日本の証券業界もようやく、欧米なみの「投資銀行」を模索し始めたといえそうだ。しかし、市場はまだ小さく、本業として認知されるまでにはハードルは多い。(長屋護)
●欧米並み「投資銀」模索
「06年度から7期ぶりに復配します」
3月30日。東京証券取引所で記者会見した釣り具用品メーカー大手、ダイワ精工(東証1部上場)の森泉正勝常務は、ほっとした表情を見せた。
発表した07年度までの中期経営計画は、約40億円の累積損失を04年度で一掃し、05年度から黒字に転換するという内容だった。バブル経済の崩壊を機に約2千億円といわれる釣り具市場は半分近くに縮小し、生産設備は過剰となった。ゴルフ場開発を手掛けたことも財務を一段と悪化させた。このためダイワは、国内3工場を一つに集約するとともに、希望退職の募集で、従業員を500人削減して700人体制にした。
こうしたリストラは資本を食いつぶし、もう一段のリストラをするには増資が必要だった。手を差し出したのが、大和証券グループの大和証券SMBCプリンシパル・インベストメンツ。昨年10月に約50億円の第三者割当増資に応じた。
●財務体質を改善
増資後、持ち株比率が32・6%と筆頭株主になった大和は、6月に非常勤の役員3人を送り込み、財務体質の改善などをいっそう強く求めていく。それによって、株価を上げることが目的だ。130円台後半で取得したダイワ株(過去最高値は89年の1180円)が上がれば上がるほど大和の儲(もう)けが膨らむのだ。
企業再生ビジネスが明確な形で収益に結び付いているのが日興コーディアルグループだ。05年3月期決算では、同部門が前年同期と比べ、3倍近い水準まで増え、経常利益ベースで250億円前後に達したとみられる。
●主力事業は減収
株式売買の仲介を軸とするリテール(小口取引)と株式などの引き受けや株式公開の事務を手がけるホールセール(大口取引)の2大主力事業は、市況の低迷などで100億〜150億円程度の減収が見込まれている。それだけに再生事業の躍進ぶりが目立つ。
ただ、この事業で利益を上げ続けるには、投資と売却を繰り返す必要がある。このため日興は、日本と英国の拠点に加え、今夏からオーストラリアにも現地法人を設立する。豪州でも企業再生事業を本格化させる。
企業再生事業では、まず最初に、多角化などに失敗した赤字部門の負担を取り除く。リストラを進めていくうちに、もともと黒字だった部門が勢いを取り戻し業績が急回復する――が理想的だ。
野村グループの連結子会社となったミレニアムリテイリング(西武百貨店とそごうの持ち株会社)は赤字店舗の閉鎖を経て、残る店舗への改装投資などに取り組む。その効果も表れ、再建計画完了の1年前倒しを1月末に発表し、07年の株式上場にも意欲を見せる。
なかでも、船橋の西武百貨店には改装資金として約43億円を投じ、昨年8月末に再スタートを切った。所得に余裕がある中高年層を意識して、衣類、食品などは質感の高いものをそろえた。目標までは達しないものの、この半年間の売り上げは前年同期と比べ、1割近く上回った。
投資資金の回収は、3〜7年程度かかるのが普通だ。しかし、投資して2、3年で改善の兆しがみえなければ、投資は失敗の可能性が高まる。
●回復果たせぬ例
会社更生法を申請して破綻し、野村証券系野村プリンシパル・ファイナンスが支援する大型観光施設「ハウステンボス」(長崎県佐世保市)。野村が送り込んだ今泉良一社長は、3月31日付で辞任した。入場者数が年間で13万人減るなど業績回復のめどをたてられなかった責任を取った。
ハウステンボスの場合、支援を受けてから実質1年だ。野村は「7年で再建できる」(幹部)と依然強気の姿勢を崩してはいないが、「果たして証券にノウハウがあるのか」と見る向きも多い。
証券は銀行などに比べ、投資に回すことができる資金量は小さい。それだけに、「高いリスクをとっているのだから、4、5年で20%程度の利益では意味がない。投資額が3、4倍になって初めてうまくいったといえる」(外資系証券アナリスト)との指摘もある。
◇ ◇
◆証券大手3社の主要投資案件
出資期日 出資先 出資証券 投資額
04年 7月 ミレニアムリテイリング 野村 500億円
04年 7月 ハウステンボス 野村 110億円
04年10月 ダイワ精工 大和 約50億円
05年 1月 ベルシステム24 日興 約2400億円
05年 3月 三井鉱山 大和 約94億円
05年 6月 ミサワホームホールディングス 野村 約112億円
▼投資残高(海外を含む、04年12月末現在)
大和証券グループ本社 770億円
日興コーディアルグループ 2009億円
野村ホールディングス 3766億円
http://www.asahi.com/paper/business.html