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(回答先: ニート 85万人 【読売新聞】 投稿者 hou 日時 2005 年 3 月 23 日 12:40:14)
http://eri.netty.ne.jp/honmanote/sclstudy/2005/0308.htm
生産性本部のニート対策に疑問〜イギリスのギャップイヤー制度を参考に
2005年3月8日
by 本間勇人(honma@netty.ne.jp)
◆ 全国でニートは52万人、フリーター217万人(厚生労働省2003年調べ)をなんとかしようと、財団法人「社会経済生産性本部」は、職業人を招いて「キャリア教育」の実験授業を開いているらしい(朝日新聞2005年3月6日)。
◆ 講義形式だけではなく、討論もするというものらしいが、あまり実践的ではないだろう。テレビディレクターや大使館員など、一握りの人間しかなれないような職業に就いている人の話などおもしろくもないだろう。トップアスリートやノーベル賞でも受賞した人の話とは違うのである。彼らは職業を語らない。人生を語れるのだ。大使館員やテレビディレクターは国や会社を背負ってしか結局話せない。そこに夢はないのである。ミッションはあるだろうが、そういうストレスを子どもたちに投げかけることは道徳的だ。
◆ むしろ村上龍の「人生における成功者の定義と条件」(NHK出版)の読書アニマシオンのほうがおもしろい。しかし、もっとおもしろいのは、イギリスのギャップイヤーという慣習的制度だ。文部科学省の説明によると、「イギリスでは、習慣として、大学入学資格を得た18〜25歳までの若者に、入学を1年遅らせて社会的な見聞を広めるための猶予期間が与えられている。ギャップイヤーを利用する若者の多くは,高校が終了する6月から大学が始まる翌年の10月までの16か月間のうち、はじめの5か月間はアルバイトで資金をつくり、次の5か月間でボランティア活動を行い、残りの6か月間を世界旅行をしたり会社で職業体験をしたりするなどの期間に充てている。ギャップイヤーを取得した若者は、大学を中退する割合が3〜4%と少なく(平均は20%)、ギャップイヤーの利用は、大学での専攻についての目的が明確になる等の効果があるとされている。企業においても,ギャップイヤーによって様々な社会体験を経た若者を評価している。」とある。
◆ このギャップイヤーにおける学生の生活そのものは、ニートやフリーターと変わらない。しかし、社会の受けとめ方は全く違う。日本ではそういう生徒を施設に収容して、社会復帰でもさせるような扱いをする。イギリスはどのように社会を受け入れ、社会に受け入れられるようになるかという見守る時間としてみなされる。
◆ この違いはどこから来るのだろうか。法治主義と法の支配の違いから来るのかもしれない。イギリスにおいて、習慣は、コモンセンスであり、ルール・オブ・ローでいう法である。そういう気高い法は、誰からも支配されてはいけないのである。自ら創り上げていくものであり、公共性があるものでなければならない。法は常に公なのだ。ニートやフリーターという表現に公共性はない、彼らが持っていないのではなく、持っていないというフィルターがかかっている。あるいはレッテルが貼られているのである。
◆ 財団法人「社会経済生産性本部」の「キャリア教育」にはこの辺の議論を通過したのだろうか。「能書きは要らない。まずは実行のどこが悪い」というダミ声が聞こえてきそうである。
◆ しかし、学生の方は、もっとしたたかに生きるのだろう。NTS教育研究所のフェローでもあり、あるときは大学院生、またあるときはマスコミのインタビューアー、あるときは執筆者というおもしろい生き方をしている岩辺みどり氏がいる。氏はイギリス、フィンランド、オランダ、アメリカをフィールドワークしながら、多くの教育エッセイを書き続けている。世界の若者や子どもたちの生き方を表現している。これはおもしろい。
◆ 岩辺氏は、「学校から休みをとろう」、英文の題では"Escape from Studies"というエッセイの連載をはじめた。まずは2005年4月号の「子どものしあわせ」(日本子どもを守る会編集)から。イギリスのギャップイヤーを取っている学生に電波少年的突撃インタビューをしたものが編集されている。
◆ その編集を通して、岩辺氏はイギリスと日本の違いをこう書いている。「日本でも『フリーター』『ニート』という言葉が流行っていますが、みんな『自分探し』の時間を自分なりに過ごしている、とい点では同じこと。ただ、すでにGAP YEARが普及し、回りの理解もあり、その経験が大学の勉強などに生かされているという結果があるという点が、大きな違いかもしれませんね。」その通りだと思う。
◆ こう言うと、なんかイギリスの方がゆったりと自由な感じがするが、高等教育に進学する率は120%を超えているぐらい学習社会が進んでいる。イギリスの世界戦略は実は続いている。大英帝国という政治的覇権は20世紀前半に消滅した。20世紀後半にはイギリス金融帝国も消滅した。全部アメリカに奪取された。もっとも、ポンドという金融帝国の覇権シンボルはまだ手放していない。なぜなら、まだ文化帝国という意味では、覇権を握っているからだ。文化帝国で大事なことはシンボルなのである。政治や経済では覇権は衰退したのだから、EUというインフラを活用しよう。しかし、歴史と文化の記念碑的シンボルは機能させておきたい。だからユーロ通貨は使用しない。ポンドというローマ時代にもニュートンにも歴史的につながっているこのシンボルを手放すのには、それなりの歴史的理由がなければならないが、今のところイギリス文化帝国戦略は、ピッチを上げて進んでいる。
◆ London School of Economics, University College London, Durham, King's College Londonなどをアメリカのアイビーリーグレベルに合わせ、それを卓越した知の拠点としてCambridge, Oxfordを位置付ける努力をしているのだろう。証拠はない。仮説であるが、今後検証していきたい。それはともかく、私たちの国も、フリーターやニートというレッテル貼りをする前に、文化戦略という側面から若者を支援できないものだろうか。