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機関投資家の見るマーケット
2005年3月3週
〜米ドル回避は合理的な行動〜
http://www.gcams.co.jp/stock/mkt/0503_3.htm
各国の米ドル離れが顕著となりつつあるが、これを時系列順に追いかけると以下となる。
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(1)2004年11月中旬、ロシア中央銀行が通貨を米ドルに連動させる為替制度を廃止し、2005年からユーロを中心に構成する通貨バスケットを指標に相場を管理する手法を導入することを決めた。1000億ドル(約10兆円)強に膨らんでいるロシアの外貨準備の内訳は65%が米ドルで25%ユーロだが、今後はユーロでの運用を積極化する考えを表明している。ロシアは、世界最大級の産油国だが、プーチン大統領はこの主要輸出品の原油の輸出を米ドル建てからユーロ建てに切り替えることをドイツのシュレーダー首相に提案している。今後、ロシアは原油の取引と外貨準備の両方でユーロ中心主義となった。
ヘッジファンドを率い92年に英国中央銀行とのポンド戦争で勝利したジョージソロスが、2月下旬、サウジアラビアで為替に関する発言を行っている。それは、(A)石油輸出国の中央銀行が米ドルから主にユーロに切り替えており、ロシアもまたこの点では重要な役割を果している。このことが現在のドル安の一因でもあり、「中東の石油輸出国」と「ロシア」による石油受け取り代金の(ドルから)ユーロへの変更がドル安を進めている。(B)原油価格が高止まれば高止まるほどドルからユ−ロへの切り替えが行われる。つまり、強い石油がドル安を加速させる。これは、高い原油価格にもかかわらずドル安で石油収入が目減りしてきたリスクをユーロシフトでヘッジし始め、これが今後の傾向となる。
次に(2)2月22日に、韓国中央銀行が世界第4位(2000億ドル:約20兆円)の外貨準備を分散投資する計画であることが国会議員に対する説明で明らかになった。その直後米ドルが急落してしまい、大手ヘッジファンドや大手投機家など、この状況を利用すべく急速に大量のドル売り仕掛けかねない状況となった。翌日、韓国中央銀行のこの方針が、韓国側から否定されている。ドル急落後、韓国中央銀行総裁は、英国のポンドやカナダドルに新たな外貨準備高を分散する可能性はあるとしつつも現存のドル資産を売る計画はないと、韓国の立場を説明せざるを得なかった。
外貨準備高を通じ、巨額のドル備蓄を持っている東アジア諸国の通貨当局は、(A)米ドルの価値の下落が米国経済に多大な影響を与え、アジア製品の購入がストップするという懸念を持ちながらも、(B)米ドルを最初に投げ売りし「ドル相場を崩壊させた」と、米国から非難されるのは困る。しかし、他国がドルを売り逃げる中にあって自国だけが価値の下がり続ける米ドルを保有し続ける愚直も避けたいと考えている。韓国に限らず、外貨準備に米ドルがほとんどのアジア諸国はドル売りのタイミングをめぐって横睨み、疑心暗鬼の状態にある。
(3)3月14日、中国の温家宝総理が全国人民代表大会後の記者会見で、人民元の切り上げと人民元為替制度の改革について、「自国の利益だけでなく周辺国と世界への影響も考慮しなければならず、現在プランの策定を進めているが、いつ、どのような改革を行うかは、意表を突くことがあるかもしれない」と述べている。その数日前、中国人民銀行(中央銀行)の周総裁が、ドルペッグからアジアを含む主要通貨バスケットに対するペッグへの移行の検討を表明している。中国は、日本に次いで世界で2番目に多くの米ドルを保有している。外貨準備は昨年1年間で2000億ドル以上増え、現在6100億ドル(約61兆円)規模だ。その中国も、中国人民銀行は2004年1年間で、外貨準備資産全体の中の米ドルの割合を82%から76%へと引き下げ、その分ユーロの比率を増やしている。ただ、中国の場合、減らしはしても、米国との貿易を破滅に導くことになる「ドル準備高ゼロ」はありえない。米国を貿易相手国としないなら、中国には即金融危機が起こり、国内に大量の失業者が溢れ、最終的には共産主義体制が倒れる。
米国の2つのシンクタンクが、中国は2005年6月末までに(A)元の対ドル相場は最大で10%上がり、(B)ドルペッグから通貨バスケットに対するペッグに切り換わると予測している。これが現実化すると、人民元の切り上げが中国経済を不安定にし、為替の自由化が投機筋の跋扈を許すことになる。たった3カ月先にアジアの不安定要素が迫っていることになる。なお、人民元がドルとの単一リンクをやめて通貨バスケット方式に移行することは、アジアの通貨システム全体のあり方を根本的に変える可能性を持つ。人民元が混乱の幕開けを作ることになりかねない。
(4)外貨準備高8200億ドル(約82兆円)でトップの日本でも、小泉首相が3月10日の参院予算委員会で外貨準備の運用がドルに偏っていることの危険性を指摘した民主党の峰崎委員に対し「投資先を分散することは必要だと思う。何が有利か、何が安定性かという総合的なことを考えていかなければならない」と述べ、日本の通貨バスケット制の検討を匂わし、ドルが下落した。ドル安にあわてた財務省は、現時点で外貨資産について通貨の構成を変更する考えはないと「火消し」に回った。国民意識の変化からか、日本の国会でもアジア各国の外準運用方針について注目を集めている。これは、ここ3年の大量のドル買い介入と日本が受け取ったドルを、その価値が減るにもかかわらず貯め続けてきたことに基因している。通貨分散という「経済合理的な行動」を取らず、米ドルのみ投資の「政治的な行動」を取り続けてきたことが日本の国益を損じたとする国民の非難の声が次第に大きくなっている。
例えば親米カナダは輸出の85%が米国向けであり、国内総生産(GDP)の40%が対米貿易で成り立っている国だが、そのカナダも対米従属をやめて非米同盟に入る方向性を模索し始めている。さらに親米の英国もイランの核問題などをめぐってEUと協調し、同じくオーストラリアもEUが中国に武器輸出を再開する件でEUを推している。こうした流れに、僅かながら日本でも米国に頼らない国家戦略の模索が始まる可能性が見える。主要各国の姿勢を見ると、米国債券の「純売り手」に転じたことはない極めて忠実なドル信奉者の日本も、その姿勢を変化させる時期に来ている。
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3月10日に発表された米国政府の2月の財政赤字は、イラクの戦費などが嵩み1139億ドル(約11兆円)と月間の財政赤字の額として史上最大となった。11日発表の1月の貿易赤字も583億ドル(約6兆円)と一段拡大している。2004年度でも、米国経済の全体では、財政赤字と経常赤字を合計すると、年間100兆円(GDP比10%)もの資金不足があり、今年度はさらに増えそうだ。米国の問題は、年100兆円の資金不足を、海外からの資金流入に依存していることで、これまでの世界各国は、米国に資金を預けてきたと言える。その海外とは大きな対米貿易の黒字国を指し、具体的には(イ)日本〔高品質部品〕(ロ)中国〔低価格日用品〕(ハ)原油産出国〔原油〕となる。この3者が静かに、年100兆円も増加するドルを持ち続けるならば、米ドル基軸通貨の崩落は起こらないが、「中国」と「産油国」についてはその姿勢の変化が顕著だ。米ドルが世界の基軸通貨でなくなることが、上記(1)から(4)までを見たとき、現実のものになり始めるプロセスに入ったと言える。
過去2回の大きなドル下落を見ると「構造的に限界」に達した水準は、財政赤字と経常赤字の合計額がGDPの7%程度の大きさになった時だった。プラザ合意の85年時に、この赤字は7%超だった。ところが今は、双子赤字がGDP1000兆円の10%を越えており、米国の対外純債務残高もGDPの20%(200兆円)を超えている。この対外純債務残高は2004年度でも30%(300兆円)を越えた可能性がある。
FRBのグリーンスパンも昨年来、たびたび最も危険なのものとして「米国の財政赤字」を取り上げている。これが拡大していくと、各国の中央銀行を中心とした外国人投資家が米国への投資を避けるようになって赤字の穴埋めができなくなり、ドル下落と高金利によって米国経済が縮小する形で、貿易赤字が強制的に抑制されることになると指摘している。3月11日の外交問題評議会の講演でも「米国の財政赤字の拡大がこのまま放置されると危険だ」と再度発言している。米国の財務省証券と債券の約43%は海外が保有している。従来7%と見られていた双子赤字の規模も、10%を超えた現在、その「閾値、あるいは分水嶺」は分からない。しかし、世界各国の米国離れの現実から「限界点」が近いことは間違いなく、その閾値水準を越えれば、中央銀行、特にアジア諸国の中央銀行は突然、米国債務への最大の投資家としてドル売りを始めることとなる。
米国はドル基軸通貨体制の維持を目的に、ドルの信認回復を目指す動きを強めざるを得ない。ところが、現在の米国は最近の原油相場の高値更新も手伝いインフレ圧力が高じている。長期金利はレンジ上限の4.5%水準を突破した。もし、金利が一気に上昇し始めると、ホームエクイティーをもって膨らみきった住宅バブルが崩壊し、GDPの70%を占める個人消費が失速する。資産バブルが個人消費を刺激したからこそ、輸入超過を通じて米国の赤字は膨らんだ。しかし、住宅バブルが崩壊すると、一気に米国景気は悪化し、米ドルは売られ金利は上昇し、経済の悪化の度は強まる。世界の製品の30%を購入する米経済にヒビが入ると世界恐慌に近い状況が襲ってくることになる。だからといって、FRBがインフレ台頭の中にあっても低金利を続け、資産バブルを継続させる意向なら、双子赤字はさらに膨らみ、対外赤字ファイナンスが支障を来たし、米国債務への投資家達が米ドル売りに回ることで「ドル基軸通貨体制」が崩壊する。こうして見ると、米ドルは「売られる」運命にある。それが運命ならリスクヘッジとして、外貨準備における米ドル運用比率を低下させることは合理的な行動といえる。
米国は、返済無用・無期限・限度額なしのクレジットカード「ドル基軸通貨体制」を崩壊させるわけにはいかない。住宅バブルに支えられた(米)国内景気とドル基軸通貨体制維持を天秤にかけると間違いなく「ドル基軸通貨体制」が優先する。そのため、短期的に、インフレ抑制に国内景気の調整を許容し、赤字の削減を目指す形をとることになる。米国内ファイナンスが支障を来たさないよう、日本を含むアジア諸国を懐柔しながら、住宅バブルを一気に崩壊させない程度にと、その舵取りは大変だが、金利の引き締め策を取ると考えられる。ちょうど、住宅ローンの借り換え件数が徐々に減少しつつあり、低金利ローンに乗り換えその分を消費に回すスタイルが過去のものとなりつつある。ここ2カ月のFRBの金融政策は重要で、一歩間違うなら、国際経済は一気に激動期に入ることになる。
さて、日本の株式相場の上昇は「内外景気も過剰流動性も変化はない」との前提に外国人投資家と個人投資家がマネーゲームで上げている側面が大きい。もし、米国の引き締めでこの前提が揺らぐなら、外国人投資家は手のひらを返す恐れがある。特にヘッジファンドなど短期資金の比重が増した結果、「見切り」も早くなっている。1−3月期のGDP成長率リバウンドを株式市場が織り込むのは、月内(3月一杯)と考えられることから、米国の引き締め政策とかね合わせ、4月以降の株式相場は注意を要する。ファンダメンタルズに需給は勝てないが、好調な需給も、金利上昇で消えてなくなることを考えておく必要がある。
仮需を見ると、信用の売り方(約1兆4000億円)の評価損率が10%を越え、一方で信用の買い方(約2兆8000億円)の評価損率が0.17%と3週連続で大幅改善し、2004年4月2日時点(1.36%の評価「益」)以来の低水準となっている。経験的には評価損率が0%近辺でプラスとなりそうな水準は、株式相場のピークを示唆する。昨年の4月2日の日経平均は11815で、その後4月中下旬に12100円の高値で推移し、4月26日の高値12195円をピークに下落している。
一方、経験的に、信用の売り方の10%を越す評価損も、反対売買を行い始めるポイントとなりやすい水準にある。いったん動き始めれば、仮需がレバレッジを効かせ大きく動かすことになる。目先は(1)好需給を背景に高水準の商いを継続していること、(2)SQを経過し裁定取引に伴う現物株の買い残高2兆8000億円まで減少し、裁定買い残に拡大余力があることから、米国株式市場が下ブレしなければ、上昇傾向を強めると考えられる。そして、次の上昇局面は(仮需の状況から)吹き上がる可能性もある。現在は、この上昇の局面をうまく売ることを考える時期にあると言える。
(F.H.)
http://www.gcams.co.jp/stock/mkt/0503_3.htm