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労働保険料で職員宿舎 『事務費』の実態 (東京新聞)
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投稿者 愚民党 日時 2005 年 3 月 21 日 14:29:13: ogcGl0q1DMbpk

労働保険料で職員宿舎
『事務費』の実態

 年金保険料のさまざまな流用が取りざたされているが、もう一つの保険料、「労働保険料」も役所の人の“お宿”に使われていた。労働保険制度の中でも、特に雇用保険は、失業率が依然として高い状態で、将来の給付のための財源確保が危ぶまれている。そんな状態で使われ続ける、保険料「事務費」の実態とは。(星野 恵一)

 JR新潟駅から徒歩十数分の住宅地に、厚生労働省の出先機関である新潟労働局管内の職員用の宿舎がある。地元で「駅裏」と呼ばれる地域はマンションや民家が並ぶ。四階建て宿舎の外観は質素だが、二〇〇二年度から、総工費約五億六千万円をかけて建てられた。

 宿舎は、部屋の広さが約七十一平方メートルのタイプが十六戸、約五十二平方メートルのタイプが八戸ある。同省担当者は、職員宿舎建設の理由を「新潟市内に点在していた古い木造宿舎が老朽化しており、一カ所に集約して建設するため」と説明する。

 その家賃は、七十一平方メートルの部屋で三万二千三百十三円、もう一つのタイプで一万五千二百九十円だ。

 「その家賃は安すぎる。あの辺りは駅から近くて人気もあり、その広さだと、駐車場込みで十万円から十二万円はする」。宿舎近くの賃貸マンションを管理している不動産会社の職員(39)は、安い賃料に驚きを隠さない。「外観は質素だと言っても、民間企業にはこうした社宅は少ないですから」

 公務員宿舎をめぐっては、昨年、社会保険庁の職員宿舎の建設費用に国民の年金保険料が流用され、格安で同庁職員が入居していたことが批判を浴びたことも一因となり、公務員宿舎の賃料は引き上げられた。とはいえ、格安であることに変わりはない。

 問題は建設費の財源だ。

 事業主と労働者は、折半で雇用保険を、事業主は労災保険を、「労働保険料」の形で国に納めている。この宿舎建設の財源は、その労働保険料がほとんどだ。

 労働保険料の管理は、労働保険特別会計として一般予算からは分離され、「雇用勘定」「労災勘定」として管理されている。

■6年間に13棟25億円を支出

 この特会を「財布」として、〇五年度までの六年間で、全国各地に建設される職員宿舎は計十三棟、費用は二十四億六千九百万円にも上る=表参照。

 昨年末に失職し、新潟公共職業安定所(ハローワーク)に通う男性(48)は憤る。「庶民の感覚では、納得できる話じゃあない。雇用保険料を払ってきて、いざ求職にくれば、職はない。その保険料が、役人の宿舎建設に使われているのなら、私たち労働者は足げにされているのもおなじだ」

■厚労省担当者『法律で認定』

 国民から集めた「保険料」を宿舎の建設費に充てて、安い料金で公務員が入居する。ここまでは、昨年話題となった社保庁の職員宿舎建設と同じ構図だ。だが、労働保険料を財源にする宿舎建設は、社保庁の場合とは、その仕組みがちょっと違う。

 労働保険の場合、「雇用保険法が施行された当時(一九七五年施行)から、保険料を事務費に充てることが認められてきた」(厚生労働省雇用勘定担当者)。「労働保険特別会計(七二年施行)で、保険料を事務費に充てることが認められている」(同省労災勘定担当者)という。

 裏返せば、何十年もの間、営々と保険料が事務費に使われてきたことになる。

 雇用勘定と労災勘定の各担当者に調べてもらうと、二〇〇〇年度から〇四年度までの五年間に両勘定で使われた事務費は一兆五千七百十五億円に上る。同じ五年間で、役人が使う公用車も十三台購入し、その費用は三千十五万円に上る。

 厚労省で労働保険特別会計にかかわる担当者らは、事務費に保険料が充てられていることについて、こう釈明する。「労災勘定では、保険を負担する事業主に対し、保険料を事務費に充てることを説明しており、理解を得ている」「保険の給付事業をするには事務費がかかる。給付事業を国としてやっているわけで、その事務費を保険料で賄うのが良いのか、どうかと言われても…」

 考えるべきは、雇用保険は、国民・厚生両年金制度と同様、破たんの危機にひんしていることだ。

 失業手当として支給される雇用保険の財源は、国が四分の一を負担し、残りを労使で折半している。その保険料収入と失業手当の収支は単年度では赤字続きだった。給付に備えた積立金残高は九三年の四兆七千五百億円をピークに、減少の一途で、昨年度には八千四十五億円まで減少した。

 財源難が指摘される中で、雇用者や、労災を負ってしまった人たちへの「還元」を旗印に、保険料を財源に建設されてきた神奈川県小田原市の宿泊施設など「勤労者福祉施設」の「無駄」は、以前から指摘されてきた。今年一月末時点で、こうした施設は二千七十施設で、建設費四千四百九十八億円が使われた。

 さらに雇用保険の「破たん」を防ぐため、〇一年と〇三年に、雇用保険法が改正され、保険料負担は増え、失業給付は引き下げられた。例えば、年齢層にもよるが、以前は離職理由にかかわらず、失業給付が受けられる期間は最大三百日だったのが、同法改正後、「自己都合」退社の場合は百八十日間に短縮された。

■支給期間減りツケ回しだけ

 先のハローワークに通っていた男性は自己都合退社で、「失業手当の支給期間は減り、給付までの据え置き期間も長くなっており、今は収入がない状態。給付以外のとんでもない部分に保険料を使ってきて、そのツケのしわ寄せを受けている」と納得いかない顔だ。同じハローワークに通う別の男性(56)は「就職したくてもなかなか定職が見つからないのに、もうすぐ失業手当の給付期間が終わる。こんどは国民年金も払えなくなる」とうんざりした顔だ。

 “国民の負担が増えて、給付は減り、将来の財源が危ぶまれる”という意味では、年金制度と全く同じ状態だ。そして、年金保険料の事務費への充当が議論された国会では、与党側からも「保険料は給付以外には使うべきではない」などの意見が相次いでいた。

 新潟労働局管内のある幹部職員(54)は、率直に話す。「給付などのサービスを行うために、必要な事務があり、その事務費をすべて税金で賄えるのか、という疑問はあるが、事務費は保険料ではなく、税金で賄った方が国民には分かりやすいんだと思う。これは、国全体として、どうするかを考えるべき問題だ」

 社会保障問題に詳しい武蔵野大大学院の川村匡由教授は指摘する。「雇用保険は財政難で、国庫負担を増やすことも議論されてきた。ならば、極論だが、事務費に充てている保険料を税金で賄えばよい。保険料は被保険者のために使うのが基本。ましてや、景気が悪く、失業保険をあてにしている人は多い。省庁の事務費はどこでもかかり、一般会計(税金)で賄うべきだ。労働保険関連の法が、保険料の充当を認めているなら、それは前時代的な法律だ。保険料の徴収と使途を再検討すべきではないか」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050321/mng_____tokuho__000.shtml

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