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外資系流通業 撤退や事業見直し
“黒船”危機頻発
一九九〇年代に次々と国内に進出し「黒船襲来」と騒がれた外資系の流通企業が、日本市場の荒波にもまれて悪戦苦闘している。世界第二位の小売業、仏カルフールが今月に入り日本から撤退。大手スーパーの西友を傘下に収める世界最大の小売業、米ウォルマートストアーズも、米国流戦略が通用せず、頭を悩ませている。今後、日本を退散する“黒船”が相次ぐかもしれない。 (経済部・池井戸 聡)
■誤 算
大手スーパー、イオンに国内の八店舗を売却したカルフール。同社と取引があったメーカー関係者は「日本にはベンツに乗って百円ショップへ買い物に行く人がいる。この複雑さを外資は理解しづらい」と同情する。
カルフール日本法人のロイック・デュボア元社長は、日本からの撤退を発表した際、「日本の消費者はレベルが高い」と唇をかんだ。日本では「安さ」だけでは勝ち抜けないのだ。背景には日本は欧米ほど国民の所得水準に開きがなく中所得者層が多い現実もある。
ワインなどフランス製の食品が充実するカルフール幕張(千葉市)。約一万五千平方メートルの広い店内には、赤色のトレーナーを着た「ローラーボーイ」と呼ばれる店員がローラースケートで走り回る。
六十八円のカップラーメン、百五円のビニール傘−。確かに価格も安い。だが、買い物客からは「肉や魚の品ぞろえが少ない」(主婦)などの不満が漏れる。衣料品も安いが「消費者は欧州の高級感が漂う品を望んでいたはず」との声は多い。
カルフールは本国のように直接、メーカーから大量の商品を安く仕入れることを望んだが、卸売業者が根付く日本では難しかった。
■明 暗
カルフールが日本に進出した二〇〇〇年ごろ、国内はフランスブームに沸いていた。日産自動車の社長にフランス人のカルロス・ゴーン氏が就任したのもこのころだ。
化粧品の仏セフォラは、口紅や香水を店内で自由に試せるのを売り物に、一九九九年に東京・銀座に一号店を出店。だが「セフォラで商品を試した後、百貨店の対面販売で販売員の説明を聞いてから化粧品を買う」(業界関係者)という日本人の周到さに対応できず、二年で日本を去った。
これに対し、国内で実績を残す外資系流通企業は「独善的にならず、日本の特徴を知る国内企業と連合を組んだ会社」(大和総研の津田和徳シニアアナリスト)が多い。
玩具の米トイザラスは日本マクドナルドと連合を結成。英小売業大手、テスコは首都圏で食品スーパーを経営する国内企業を買収した。一方、独メトロ、米コストコホールセールは、会員制スーパーや卸しで顧客を囲い込み、地道に稼ぐ。
■低 迷
ただ、こうした安全策だけでは、多額の利益は期待できない。トイザラスが十七日、主要事業の売却に追い込まれたように今後、本国の業績不振が日本法人の経営に悪影響を及ぼすケースが出る恐れもある。
「経営が苦しいのはカルフールだけではない」。モルガン・スタンレー証券の清水倫典エグゼクティブ・ディレクターはこう指摘する。イトーヨーカ堂など国内の大手スーパーも衣料品などの売り上げ低迷にもがいているからだ。こうした中、外資系流通企業が日本の消費者の「心」をつかむのは容易ではない。
この十年間で、日本に押し寄せた外資系流通業者の“黒船”。今後は「行き先」を規制緩和が進む中国に変更する可能性が指摘されている。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20050320/mng_____kakushin000.shtml