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大前研一氏の見解紹介
テーマ:Econo Trends
http://kaisetsu.ameblo.jp/entry-208446eb1d24f97d2f872c50897df634.html
それでは、「大前研一ニュースの視点」をお楽しみください。
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ライブドアvs.フジ、その対立が日本の株式市場にもたらした影響
11日、ライブドアがニッポン放送のフジテレビジョンに対する新株予約
権の発行差し止めを求めた仮処分申請で、東京地裁は同予約権の発行を
禁じる仮処分命令を下した。ニッポン放送は決定を不服として同地裁に
即日、保全異議の申し立てを行ったが、フジの日枝会長は記者団に対し、
ライブドアとの業務提携に向けて歩み寄る可能性を示した。
日々、情勢が変わるライブドアとフジテレビジョンの成り行きに、政財
界、株式関係者のみならず、一般市民も大きな関心を寄せている。
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●マルチプル経済を展開し、旧体制に挑むライブドア●
ライブドア対フジテレビの関係がこのあとどうなるにせよ、堀江社長と
いうのは日本にとって大きな貢献をしたと思います。
というのは、お茶の間までTOBなどという言葉が入って、25%の株を持つ
とどういうことになり、33.4%になるとどうなるとか、1ヵ月前にはみん
な知らなかったことが浸透していった。株式市場というものが大変身近
になったと思います。
ライブドアは売り上げで見たら300億円くらいしかないし、利益も数十億
円しかありません。例えれば地方の中堅スーパーくらいの実績ですが、
そのようなところが時価総額2500億円にも上がるようなフジテレビを相
手に打々発止とやる。
私の著書『新・資本論』の中に出てくるマルチプル経済というのは、何
回説明しても皆さんなかなか理解しづらかったようですが、今回ライブ
ドアはそれを目の当たりに見せてくれました。
高水準の株価(巨額の時価総額)を使って、売上や利益のさほど高くな
いIT企業が、自己資金の100倍、1000倍という企業を買収する。
大きなマルチプル(倍率)をもつ企業がそれを適切に使えば「本当に」
大きく影響力の強い優良企業へと短期間になることが可能です。これが
まさに「マルチプル経済」なのです。
今回の東京地裁の仮処分決定は当然です。これをエスタブリッシュメン
ト側に付いて新株予約権の発行を認めていたら、日本の市場は混乱しま
す。もし第三者割当増資というものを一方的に誰かにあげてしまうとい
うことが認められたら、TOBという概念そのものが成り立たなくなります。
今回の第三者割当増資の総額を計算してみると2000億円を超えてしまい
ます。フジはおそらくこのお金を銀行から借りてやると思うのですが、
もし仮にこれが実現していたとしたら、M&Aをたくさん経験してきた我々
のようなプロから見ると「これだけの金をニッポン放送に突っ込んでど
うするの」ということになります。
そういうことを見ると、ライブドアがマルチプル経済でやっている新大
陸であるのに対して、フジテレビというのはやはり旧大陸、古い世界の
人たちなのだという感じがします。
もちろんフジテレビはニッポン放送に金を突っ込んだ上で子会社化して
奪い取るということをやるつもりだったのかもしれません。しかし考え
方を変えれば、その金があればライブドアを買収できるわけです。
今のライブドアの価格は2000億円前後です。第三者割当増資をするより
安い値段でライブドアごと買えますから、フジテレビがその金でTOBをラ
イブドアにかければおもしろい。
そうすればライブドアが持っているニッポン放送も自分のものになりま
すし、フジに足りなかったIT技術なども取り込めるかもしれません。今
はとにかくニッポン放送を中心に騒ぎが起こっているのでこうなってし
まうのでしょうが、お金の価値というものをもう少し理解して欲しいも
のです。
●外資を敵対視するのは日本市場のゆがみが原因●
今回のことで外資による敵対的買収ということもクローズアップされま
した。自民党は11日の法務部会で、今国会へ提出を予定している会社法
案のうち、外国株式を対価にした企業合併の解禁時期を当初予定より1年
延長することを決定しています。
今回のライブドアのやり方は必ずしも透明ではなかったということもあ
りますので、それに対して反発するのはいいのです。しかしライブドア
が外資の導きでもってやっているという印象を持つのは間違いです。
リーマン・ブラザーズ証券はライブドアやニッポン放送を支配しようと
いう意図は全くゼロで、純粋にファイナンスでやっただけです。それは
当然のことで、投資銀行がそういう意図を持って第三者を操るというこ
とは職業倫理上できません。
特に今回の場合はこういう状況を放置してきたフジサンケイグループに
大きな落ち度があります。グループの本当の統治機構は誰が持っている
のか。3社も4社も上場して株を持ち合っているが、この会社の株主とい
うのはどこまでが自分の権利なのかという透明性に欠けています。
村上ファンドがここに目をつけて、ねじれを解消しろと言うのは当たり
前で、堀江氏はその当たり前をお茶の間に持ってきてくれたという功績
があるわけです。
これに対して外資だ、敵対的だということで悪のりしている政治家のレ
ベルの低さにはあきれます。外資イコール敵対的というのはとんでもな
い日本の閉鎖性というものを世界に宣伝しているようなもので、日本市
場そのものが非常にゆがんだものであるということを言っているような
ものです。
今後、日本の株式市場の国際化に向け、そのゆがみを直すとともに、日
本の企業もM&Aに対する体勢づくりをすることが必要です。
−以上−