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■現代中国ライブラリィ 話題&解説
“中華経済圏”がアジア経済を牽引する(2004年12月)
(文・木原啓二)
http://www.panda.hello-net.info/colum/chuukakeizaiken.htm
WTO加盟から3年目にして、中国は世界3位の貿易大国になった。大陸と香港の経済一体化が進み、台湾企業の大陸進出も旺盛だ。中華経済圏の現状と将来を展望する。
世界3位の貿易大国に
市場開放は着実に進展
今年の中国の経済成長率は昨年に引き続き9%を超える見込みである。過熱が指摘されており、政府はソフトランディングを目指して、行政措置や利上げなどで引き締めに転じている。ただ、08年の北京五輪、10年の上海万博までは、7、8%程度の高成長が持続することになるだろう。
昨年から今年にかけての中国経済は、数字を大きく塗り替えた。今年の貿易総額は前年比約30%増の1兆1000億ドルとなる見通しで、日本を抜いて米国、ドイツに次ぐ世界3位に躍進する公算。また、02年に500億ドルを超えた外資直接導入額は、03年も535億ドルで引き続き世界トップ、今年も着実に増加している。エネルギー消費量は世界第2位であり、自動車生産台数は米、日、独に次いで第4位。インターネット利用者数も第2位と経済規模は飛躍的に拡大、世界の工場、世界の市場としての地位は一段と向上した。
1人当りGDP(国内総生産)も、昨年には大衆消費社会に入るとされる1000ドルを突破している。大学進学率も18%に達し、大学大衆化時代へと入った。上海や北京、広州など沿岸大都市では5000ドルに達し、モータリゼーションの真っ只中にある。北京市のマイカーは今春に100万台を突破。市民のマイカー購入は自動車販売総量の9割を占めており、2台目を購入するユーザーも多い。現在は値下がり期待などで販売は落ち込んでいるが、基本的な流れは変わらないだろう。
WTO(世界貿易機関)加盟3年目にあたる今年の12月11日から独資による販売会社の設立が解禁された。これまで合弁しか認められなかったが、一部の政府管理分野を除いて、外資100%出資の商業企業の設立が可能となった。自動車については、06年12月11日から自由化される。進出している外資メーカーも、海外からの完成品の輸入、中国内での卸売、小売等の業務ができるようになった。また、外資導入事業の許認可においても、審査内容の簡素化、審査許可権の地方への委譲、審査の手順と期限の明確化が進んでいる。中国市場では原則自由化の法的基盤が徐々に築かれつつある。
こうした変化とともに、中国では投資や貿易、科学文化事業などに従事する外国籍人材がこれまで以上に求められるようになり、外国人の方でも中国での永久居住を希望し、出入国などでの簡便を願う人が増えてきていた。このため、今年8月から「外国人永久居留証」(中国版グリーンカード)が発行された。
永住許可が得られるのは、多額の対中直接投資、中国国内の政府系機関・大学・企業などの高級役職(副社長・助教授以上)に就いていること、国に重要な貢献をしていること、中国で家庭生活を送っている、などの条件に該当する外国人が対象。居住地などに制限はなく、中国出入国の際にビザが不要で、パスポートと「永久居留証」ですむ。新しい制度で条件を明確に定めたことによって、外国籍人材の中国流入が加速し、経済的基盤の強化が促されるだろう。
知的所有権問題は依然として深刻である。中国政府は摘発や指導、様々なイベントを通じて問題の解決を図ろうとしているが、時間はかかるのではないか。知的所有権問題を克服しないかぎり、中国が目指す欧米先進国によるWTOにおける「市場経済国」の認定は難しいだろう。
一方で、すでに中国は世界有数の特許大国となっている。申請の多くは外資系企業によるもので、そのため中国企業は高い特許使用料を支払っている。独自の技術を開発しないかぎり、中国企業は外資系企業と互角に競争できない。一部の製品開発で成果をあげつつあるが現状は厳しい。
FTAでは日本に先行
活発な中国企業の海外進出
この11月、ASEANとの共催で「第1回中国・ASEAN博覧会」が、広西チワン族自治区南寧市で開催されるなど、中国とASEANの経済緊密化が急進展している。今年の中国とASEAN間の貿易総額は1000億ドルに達する見込みで、数年後には対日貿易を上回る勢いにある。
中国とASEANは、FTA実現への具体的道筋を示した「枠組み協定」(02年11月)に基づいて10年の完成を目標に人口17億の世界最大の市場統合へと踏み出した。昨年10月からはタイと野菜・果物188品目の関税撤廃の前倒しを実施。これまで20〜30%の関税がかかっていたパパイヤやマンゴーなどのタイ産農産物の関税が撤廃された。また、今年11月の貨物貿易に関する合意では、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイなどASEAN原加盟6カ国とは10年に、ベトナム、ミャンマーなど後発加盟4カ国とは15年に、ほとんどの貿易品目の関税を撤廃することになる。ASEANとのFTAでは日本に大きく先行している。
オセアニア地域とも積極的にFTAを拡大させていく方針で、オーストラリアとはFTAの研究段階に入っている。ニュージーランドとも05年からFTAの交渉を開始する予定。また、ロシアやブラジルなどの中南米諸国とも経済関係は緊密化しており、ブラジルの中国との貿易額は近い将来に米国を上回ると予測されている。
これに伴って、中国企業の海外進出も加速している。03年の対外直接投資額は29億ドルで、同年末現在の対外直接投資は累計で334億ドル。投資先ではアジア地域が最も多い。
M&A(合併・買収)にも積極的だ。家電大手のTCLによる独シュナイダーの買収、上海汽車集団による韓国の双龍(サンヨン)自動車買収、英国のMGローバーの買収などが相次いだ。
日本でも、製薬最大手の三九企業集団による東亜製薬の買収、機械大手の上海電気集団による池貝の買収などが実現している。また、今年の10月には、国営新華社通信系の新華ファイナンスが、外国企業第1号として東証マザーズに新規上場。個人投資家の中国株人気を背景に、今後も日本で上場する中国企業は増えそうだ。
中国企業による海外進出は、WTO加盟後のグローバル戦略の柱となりつつある。海外投資の拡大で多国籍企業化をはかり、技術やブランド、販路を獲得して国際競争力を強化しようというものだ。また、国内の機関投資家に海外への証券投資を認める制度も解禁の方向にある。将来は個人でも指定機関を通じて海外の株式市場での取引ができるようになるだろう。
人民元の切り上げが焦点
深刻なエネルギー問題
実質的に米ドルに固定されている中国の人民元に対して、米国、欧州、日本などからの切り上げ圧力は強まっている。11月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)での胡錦涛‐ブッシュ米中首脳会談でも人民元問題がテーマの一つとなった。
現在の中国の為替制度は、市場レートを建前としつつ、必要によって人民銀行(中央銀行)が介入する「管理フロート制」である。現在は1ドル=8.28元前後に抑えるように人民銀行が常に介入しており、事実上はドル・ペッグ(連動制)である。相場が目標水準から乖離すると、人民銀行の介入でレート調整が容易にできる仕組みだ。
人民元の自由化、国際化の流れは避けられないが、当面はレート形成の仕組みを改善し、合理的で均衡のとれた水準で安定を保つ方針だ。すでに米中間では、両国政府の専門家による米中金融実務者協議などで、「柔軟な為替管理」についての協議が行われており、「部分的な変動相場制」か、ドルやユーロに連動した「通貨バスケット制」の導入などが議論されている。05年には対ドルで5パーセント程度切り上がる可能性は十分にある。
経済成長の最大のネックとして指摘されているのがエネルギー不足である。とりわけ、上海市、浙江省などの華東地区は深刻だ。今夏には大規模な電力の供給停止もあり、企業の生産にも影響を与えている。電力不足への対応として石炭輸送を最優先する措置のため、鉄道貨物の引き受けが拒否されるなど物流面でも影響が出た。今冬も事情は厳しいと予測される。
胡錦涛政権は、「科学発展観」「親民政治」を打ち出している。これまで格差の拡大や環境破壊をもたらした成長第一主義から、経済や社会、環境のバランスをとった持続可能な均衡発展へと転換しようというものである。農民の優遇や失業対策に力を入れることになるが、それだけ農民や失業者の不満は強い。また、環境関連などで日本企業の進出が活発となるだろう。
香港が中国と経済緊密化協定
大陸経済との一体化が進む
大陸と香港・マカオの経済的一体化が進んでいる。香港とマカオは、中国と「経済貿易緊密化協定」(CEPA)を締結、今年の1月から発効した。
CEPAは貿易やサービスなどにおけるFTA(自由貿易協定)と同等の関係構築を目指すもので、「ミニFTA」とも呼ばれる。香港と中国は、第一段階として電気製品、繊維、精密機械等273項目の関税が撤廃され、その後に2000項目の追加撤廃が実施。人民元取り扱い業務については、香港の銀行に預金、送金、両替、クレジットカードの4業務が認められた。
香港と中国の貿易円滑化、金融、不動産などのサービス分野での両市場の活性化が期待される。日本を含む東アジア経済に与える影響も大きい。また、マカオから中国本土への輸出については、関税の大半(273品目)が撤廃された。
2つのCEPAによって、大陸と香港・マカオの経済的一体化が一層進展するとともに、両地域の中国進出の拠点としての地位も格段に強化される。香港としては経済活性化につなげたいところだ。一方、カジノと観光が主体のマカオは、中国からの観光客の増加で好景気に沸いている。
現在、珠江デルタと香港・マカオが一体となった「大珠江デルタ経済圏」構想も提唱されている。「珠江デルタは世界の経済成長が最も速い地域の一つ。香港は珠江デルタとの一本化プロセスを速めれば、経済は更に発展できる」(香港工業総会)としている。
「香港は1隻の小さな船かもしれないが、中国の改革開放に大きな貢献をしてきたし、今後の中国経済の発展に欠かせない存在である」と、ある香港大学の教授が語ったように、香港はこれからも重要な地位を占め続けるだろう。
台湾企業の大陸傾斜
数万社がすでに進出
台湾の統計当局によると、今年の実質成長率見込みは5・9%と、97年以来の高成長が見込まれている。
台湾経済は、香港、韓国まで影響をこうむった97年のアジア通貨危機を、豊富な外貨準備と国民の高貯蓄率によって乗り越えてきたが、その後の世界的なIT不況で大きな打撃を受けた。
それまでの台湾経済を支えてきたのは、パソコンや携帯電話などハイテク製品の米国向け輸出だった。ところが米国のITバブルの崩壊でハイテク製品の輸出が大きく落ち込んだ。需要が減って価格競争が厳しくなったため、台湾メーカーは人件費や地価が安価で、様々な優遇措置が受けられる中国大陸へと生産拠点を移す動きを加速させた。対中投資規制の緩和も追い風となった。
台湾企業の対中投資は、01年以降増加に転じ、03年は前年を下回ったが、対中投資の流れは依然として強い。中国は最大の投資先になっており、大手、中小を問わず、台湾企業の大陸傾斜へは止まらない。数万社、100万人近い台湾ビジネスマンが大陸で活躍している。
台湾と中国の政治的緊張は厳しいが、一方で年々増える貿易や投資など経済交流の進展によって、水面下での交流は進展しており、非公式・民間レベルでの部分的な「三通」(郵便、通商、通航)は実現している。
03年1月には、台湾機の中国大陸乗り入れが初めて実現、最も遅れていた通航も進展した。春節(旧正月)には、中国大陸で働く台湾ビジネスマンは上海から台湾の航空会社によるチャーター機で帰省している。
台湾企業の大陸進出の加速によって、台湾企業が技術と資金を求めて、日本企業と中国ビジネスで協力関係を結ぶケースも増えている。台湾企業の中国ビジネスのノウハウや産業集積を活用し、共同で中国進出戦略をとる日本企業も増えている。日・中・台の3カ国・地域による新しいビジネスモデルもつくられつつある。(『経済界』2005年1月11日号)
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中国共産党中央政治局常務委員 指導者プロフィール (中国情報局)
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投稿者 愚民党 日時 2004 年 9 月 20 日