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インドも石油獲得外交 人口大国同士、中国と共存模索
露、イラン、スーダンに接近
【シンガポール=藤本欣也】二〇三五年までに中国を抜いて世界一の人口大国となる見通しのインドが、資源獲得の国家戦略を強力に推進している。実利優先のそのエネルギー安保政策は、長年の敵対国、パキスタンとの間で緊張緩和をもたらす一方で、石油消費大国、中国との激しい資源獲得競争を招いており、両国間で“共存”を模索する動きも生まれている。中印両大国の資源外交の国際政治への影響も懸念され始めている。
十億人の人口を抱えるインドの石油消費量(二〇〇三年)は、日量約二百二十万バレルだが、現在のように6%程度の経済成長率が続いた場合、二十年後には三倍強に拡大する見通しだ。70%という原油輸入依存度も、二十年後には86%に膨らむと見込まれている。
「ロシアはわが国のエネルギー安保にとって最重要国だ」。インドのアイヤル石油・天然ガス相がこう強調しているように、インドは最近、ロシアに急接近している。同相は二月下旬に訪露し、同国の石油大手、ユコスの系列企業への出資などでロシアの石油事業に積極的に関与する意向を表明した。すでに極東の油田開発にも参加している。
現在、原油輸入先の約80%を占める中東でも、イラン・ペルシャ湾やスーダンなどで油田開発の動きを加速させている。
一方、インド政府はエネルギー源の分散と環境保護を図るため、天然ガスへの転換を推進。一次エネルギーに占める天然ガスのシェア(7%)を二〇二〇年には倍増させる方針だが、国内生産に余力がないのが現状だ。そこで、(1)イランからパキスタンを経由(2)ミャンマーからバングラデシュを経由(3)トルクメニスタンからアフガニスタンとパキスタンを経由する三ルートで国内に天然ガスを輸送するパイプラインの建設を計画、交渉を進めている。
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こうしたインドのエネルギー政策は、「近隣諸国との関係改善を促す可能性を秘めている」(英紙フィナンシャル・タイムズ)と指摘されるように、パキスタンとの緊張緩和をもたらした。パイプラインが建設されると多額の通過料を見込めるパキスタンと、インドの利害が一致したためだ。今年二月、カシミール地方の両国支配地域間のバス運行で双方が合意に達したのも、「パイプライン計画のために実利を優先させてインドが譲歩した結果」(外交筋)とみられている。
逆に、インドのエネルギー戦略が摩擦を引き起こしている側面もある。AFP通信によると、西アフリカのアンゴラで昨年、インドと中国が油田の権益獲得競争を展開し、最終的に二十億米ドル(約二千百億円)の経済支援を打ち出した中国が勝利を収めたという。
十三億の人口を抱え、米国に次ぐ世界第二位の石油消費国である中国も、9%を超す高度経済成長を支えるためのエネルギー確保に躍起となっている。原油の輸入依存度は40%に達し、インドとの競合はアンゴラだけでなく、ロシアやスーダン、ベネズエラなどでも起きているのが実情だ。
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インド石油ガス公社(ONGC)のラハ会長は「(エネルギーをめぐり)インドと中国が対立を繰り返しているが、このまま激しい獲得競争を続けていくのは現実的ではない」と両国とも協力を模索する必要に迫られている面を指摘する。
中国の温家宝首相は近くインドを訪問する見通しで、シン首相との首脳会談ではエネルギー分野の協力問題などが主要な議題となるもようだ。
今後、インドと中国が繰り広げる資源外交の主戦場として、米紙エイジアン・ウォールストリート・ジャーナルは、「米欧の石油資本が二の足を踏むような地域、例えば、あまりにも投資が危険で、政治的に敏感なスーダン、イラン、ミャンマー」を挙げている。
このうちイランとミャンマーは、ブッシュ米政権が「圧政国家」と名指しし非難を強めている国々だ。インドと中国が資源外交を通じて「圧政国家」内に権益を確保し、関係が強化されるとなると、両国のエネルギー安保政策は国際政治にも影響を及ぼしかねない。
http://www.sankei.co.jp/news/morning/10int003.htm