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ニッポン放送株争奪戦 次のシナリオは
ニッポン放送株買い占めで「時間外取引」というライブドアの“奇策”に対し、フジサンケイグループ側も、商法違反では、とも指摘される「新株予約権」発行という“奇策”で応じた。攻防は何でもありの様相だ。ライブドアは予約権発行の差し止めを求める仮処分申請を東京地裁に行ったが、今後、考えられるシナリオは−。
「長期戦は望んでいないが、(訴訟になれば)堂々と受けたい」。日枝久フジテレビ会長が強気の姿勢を見せれば、堀江貴文ライブドア社長は「想定の範囲内だが、あまりにトリッキー」と反発する。ニッポン放送が突然発表した、フジテレビの子会社化を狙った新株予約権発行の波紋は広がるばかりだ。
■大枚はたいてラジオ局一つ
今後、闘いは法廷の場に移るが、「ライブドアにもはや勝ち目はない。司法判断の結果いかんにかかわらず、フジには最終兵器がある」と言い切るのは、新光証券エクイティストラテジストの瀬川剛氏だ。「連結ベースでニッポン放送の売り上げの六割を占めるポニーキャニオンの引き揚げなど、“親子”関係を遮断してしまえばいい。広告代理店もフジの顔色をうかがい、同放送から足が遠のくだろう。堀江氏は大枚をはたいて地方局規模のラジオ局を一つ手にしただけにすぎないことになる。思い違いがあったのかもしれない」
株式評論家の杉村富生氏は、たとえ仮処分申請が認められたとしてもライブドアの先行きは暗いとみる。
「同放送株は三月末の株主確定時に、上位三者で総株数の80%を超え、東京証券取引所の上場廃止基準に触れ、上場廃止になる可能性が高い。上場はフジサンケイグループを支配していた『鹿内家』の影響力を排除する目的だったが、鹿内家の持ち分はすでに大和証券に移り、フジにとってもはや意味はない。上場廃止でいいという立場だ」
■流通性を失い株主には打撃
このシナリオでどうなるのか。杉村氏は続ける。「上場廃止で株価が暴落する上に、流通性がなくなる。既存の株主は大損害を受ける。上場廃止を避けるためには、ライブドアが同放送株を手放すしかない」
一方、司法判断でライブドアが負けた場合について、瀬川氏は「ライブドアがすぐつぶれるとか、堀江さんが経営権を手放すとか、そういう事態があるか否かにかかわらず、堀江氏はもう二度と株式市場に影響力を行使できなくなる」と厳しい目を向ける。
ある証券マンも「ライブドアは対抗策がなくなり、訴訟で『違法な増資』として損害賠償を請求するしかない。あとはリーマン・ブラザーズ証券の餌食になる」と予想する。
ライブドアが資金調達のため、リーマンに発行した八百億円分の転換社債は、一株百五十七円まで株式転換価格を下げられる。さらに時価を一割下回る価格で転換できる。この証券マンは「最低価格の場合、リーマンはライブドア全株式の40%を手中にでき、どんな手を打っても損はしない。株を売って利ざやを稼ぐか、ライブドアの経営権に興味を持つ会社に持ち株すべてを売るか。もうけの多い手を打ってくるだろう」。
■自民タカ派が『助け舟』
リーマン・ブラザーズの動きは不気味だ。リーマンのアドバイザーで元大蔵省財務官の榊原英資氏が「ライブドアは負ける」と明言したが、その真意について、杉村氏は「『ライブドアに深入りするな』という警告だろう。ライブドアへの資金援助で、日本のエスタブリッシュメントを敵に回し、何らかの圧力がかかっているのではないか」と推測する。「ライブドアが裁判で勝っても、リーマンが手を引けば、ライブドアが同放送の過半数の株を手に入れるために必要な資金が調達できなくなる」
どう転んでも、ライブドアには不利なシナリオだ。証券マンは「ライブドアはM&A(企業買収)の連続で大きくなってきたが、その失敗で倒れるとすれば皮肉で象徴的だ」と話す。
ライブドアにとり、もう一つの“向かい風”は森派を中心とする自民党からの批判だ。放送局の公共性を盾に「株取引の対象にそぐわない」という中身だが、政治評論家の森田実氏はその深層をこう読み解く。
「岸(信介元首相)から森(喜朗前首相)、小泉と続く自民党タカ派の流れはフジサンケイグループと縁が深い。フジから相談がいって、助け舟を出そうということになったのは当然の成り行きだ」
ただ、森田氏はこう皮肉る。「ライブドアはリーマン・ブラザーズという米国資本のハゲタカファンドをバックに買収劇を演じたが、こうしたハゲタカファンドに『日本の資本を自由に食べてください』と開国したのが、対米追従の小泉路線だ。その結果、身内のピンチを招いた。小泉首相の先見性のなさは度し難い」
経済評論家の植草一秀氏は、一連のライブドア“バッシング”について「国際化は異種の存在と共存していくことが前提。ルールの枠内で、可能な限り自由な行動を保証しなくてはならない。その意味で、ルールとは別の日本的慣行にそぐわないというライブドア非難は情緒的だ」と語る。
■新株予約権の行使には疑問
一方で、市場関係者の間では、フジが実際に新株予約権を行使するかどうか、疑問視する声は多い。
杉村氏は「フジはライブドアを追いつめる意図で、行使するつもりはない」と分析。前出の証券マンも「権利だけで、フジも実際の新株発行まで言及していないのがミソ」と指摘し、フジの狙いをこう推察する。「仮に権利がすべて行使されれば、理論上、ニッポン放送株の価値は半分になる。一般株主はフジが進める株式公開買い付け(TOB)に参加した方が得になる。その流れが加速すれば、権利を行使せずに過半数に届く」
その推察を裏付けるように、フジは新株予約権の行使をTOB期限終了後とし、二十四日にはTOBの期限を当初の三月二日から同七日に延長したという。
■安価で売れば株主が提訴も
では、攻防戦の“落としどころ”はどこなのか。
実は、ライブドアはTOBの価格の一株五千九百五十円では、所有しているニッポン放送株を売却できない。というのも、それより高い株価で買い集めてきたため、「会社に損失を与えた」として、株主代表訴訟に直面しかねないからだ。
瀬川氏は「その辺の事情はフジ側も当然、分かっている。結局、五千九百五十円をちょっと上回る程度で、事実上、ライブドアが株を譲るという大人の手打ちがあるのでは」と推測する。
植草氏は「現時点では五分五分だ」とした上で、こう予想した。「司法判断がフジ側有利に傾いても、ライブドアがニッポン放送の大株主であることは変わらない。堀江さんは経営権の行使を追求し、フジはそれを避けようと攻防が続く。最終的には、明確な勝ち負けではなく、和解という大人の解決が図られるのではないか」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050225/mng_____tokuho__000.shtml