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加速する金融コングロマリット 規模優先、顧客不在も 当局、環境整備へ
三井住友フィナンシャルグループ(FG)と大和証券グループが経営統合に向け検討を始めたことで、海外では一般的な「コングロマリット(複合企業)」化を志向した金融再編が日本でも加速しそうだ。ただ、現時点では、経営規模を拡大したい金融機関側の事情が優先しており、消費者保護や利便性の確保などの顧客側の視点が抜け落ちている感が否めない。このため、金融当局は総合的な環境整備に乗り出す方針だ。(藤沢志穂子)
メガバンクと大手証券による初のコングロマリットとなる三井住友FGと大和の統合検討は、「三菱UFJグループ」の誕生で大手行の中で三位となる三井住友と、「万年二位」から抜け出したい大和の危機感が一致したもの。しかし、まだ詳細は不明で「実際の相乗効果やサービス内容は未知数」(市場筋)とされている。
コングロマリット化には「大きな顧客基盤を持つ銀行が中心となる方が実現しやすいが、信託銀行や生命保険、損害保険が参加しないのは完全ではない」(銀行アナリスト)との見方もある。ただ、各金融機関の思いは複雑で、三井住友系ながらも独立志向の強い三井トラスト・ホールディングスや住友信託銀行は静観の構えだ。
また、保険をめぐっては「運用期間が長期間の生保、自然災害リスクが巨大な損保はグループ化にそぐわない」(日本銀行幹部)との指摘もある。最大手の日本生命の宇野郁夫社長は、米シティグループが傘下の保険事業を売却するため、「(運用が)ショートタームの銀行・証券と、ロングタームの保険とは融合できない」と否定的な見方を示す。
証券最大手の野村証券の動向も今後の焦点となるが、野村は地方銀行と連携して顧客企業が不動産を証券化する際、融資を仲介する業務を強化。「銀行免許の取得や大手行と資本提携する必要は感じない」(幹部)という。
みずほコーポレート銀行は、オリエントコーポレーションに対する伊藤忠商事の出資を仲介。商社、銀行、ノンバンクが一体の「開かれたコングロマリット」(斎藤宏頭取)として資本関係にとらわれない機能ごとの連携を目指す。
元金融庁研究官としてコングロマリットの検証を続けている永田貴洋・格付投資情報センター・シニアアナリストは「コングロマリット化で経費削減や収益力向上などの相乗効果がある半面、組織の複雑化によるコンプライアンス(法令順守)上の問題も生じかねない。消費者の視点に立って幅広い金融サービスを追求する試みもあっていい」と指摘する。
金融庁では「コングロマリット化が最良とはかぎらないが、消費者保護と利便性の向上に配慮した『ワンストップ・ショッピング』の実現を検討する必要がある」(幹部)としており、日銀でも近く考査・監督体制の見直しに向け、検討を始める見通しだ。
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《金融コングロマリット(複合企業)》銀行や証券、保険など2業態以上の金融機関が持ち株会社の傘下などで幅広い金融商品を提供する企業のこと。欧米にはシティ、UBS、クレディ・スイスなどがあり、顧客保護制度もあるが、日本ではこれから本格化する。金融庁は昨年末に公表した「金融改革プログラム」で、コングロマリット化に対応した規制や検査・監督体制の構築を目指すとしている。
http://www.sankei.co.jp/news/morning/22kei001.htm