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原油高騰 ドライバー直撃
原油の高止まりがガソリン価格を直撃している。四月から約十年ぶりにレギュラーの小売価格が一リットル百二十円台に上昇、産業向け燃料も湾岸戦争以来の高水準の値上げとなった。日本は輸入原油の九割近くを中東に依存。樹脂や紙など他の製品市況にも価格引き上げの影響は顕著で、産業界は今後の価格動向に警戒を強めている。景気へのマイナス影響も懸念されるなか、原油高が及ぼす物価へのきしみ具合を探った。 (経済部・市川千晴)
東京都内の激戦区にある給油所では、今月からガソリンのレギュラー価格を十円値上げし、一リットル百二十円とした。「満タンを注文するのでなく、『三千円で』というように金額での注文に切り替えるお客さんが増えた。客単価の低下は予想以上で深刻だ」。稼ぎ時の行楽シーズンを前に、店員は浮かない顔をした。
ガソリンの小売価格は、石油元売り各社が出荷するガソリンなど石油製品の卸価格に連動する。新日本石油など元売り大手各社は、四月一日以降出荷分の卸値を前月より一リットル当たり約五円値上げに踏み切った。
石油情報センターによると、三月のレギュラーガソリン一リットル当たりの全国平均小売価格は前月比一円高の百十七円と四カ月ぶりに上昇に転じた。大幅なコスト上昇は業界内で吸収できず、四月も小売価格の値上げは避けられない状況が続く。
原油価格高騰の背景には「マネーゲーム」となった過熱気味の石油取引がある。ニューヨーク証券取引所に上場されている、米国産標準油種(WTI)先物相場では、四月四日の時間外取引で一時、史上最高値の一バレル=五八・二八ドルを付けた。ニューヨーク市場の原油相場に連動する形で、アジアの指標である中東ドバイ産原油も価格上昇の勢いが増している。
日本の原油輸入量は一日約五百万バレル。一ドルの上昇で一日当たり五百万ドル(約五億円)の支払いが増える。年間では千八百億円以上のコスト増となる。経産省によると原油高の影響は、合成樹脂などの化学製品をはじめ板ガラス、繊維、紙パルプ業界に波及する。
新日本石油は現在、製紙大手の王子製紙と工場のボイラー用燃料の四−六月販売分について価格を交渉中だが、一九九一年の湾岸戦争以来の最高値となる一キロリットル当たり三万六千三百円を要請するという。船舶用や電力会社向けもこの水準で交渉を進めている。
航空機燃料も値上げしたため、全日空は四月一日から平日の東京−ロンドンのビジネスクラス往復航空運賃を一万七千六百円引き上げ、八十九万三千二百円とした。
石油化学製品の基礎原料、ナフサ(粗製ガソリン)も最高値を更新。石油化学工業協会の蛭田史郎会長(旭化成社長)は「四−六月期には前期比で12%上がる見通し。何らかの対策が必要だ」と明かす。企業努力によるコスト増加分の吸収は限界に達している。
原油相場を落ち着かせようと三月中旬の石油輸出国機構(OPEC)定例総会で増産態勢を打ち出したが、即効薬にはなっていない。
価格転嫁が進まなければ深刻な影響が出るという試算がある。
第一生命経済研究所によると、原油一バレル当たり十ドルの上昇で、実質国内総生産(GDP)成長率を0・2ポイント押し下げるという。価格転嫁ができない場合は、全企業の本年度の経常利益の3・4%に相当する一兆六千億円が減ると試算されている。
ただ、最終的な価格上昇にはしばらく時間がかかるとの見方もある。みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は「最終消費財の供給過剰構造はまだ改善されていない。依然としてデフレ圧力は根強い」と指摘する。
価格転嫁が進まなくても原油高騰は国内経済にとって、マイナスの影響が大きいのは確かだ。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20050413/mng_____kakushin000.shtml