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中国で広がる反日不買運動
中国各地で反日感情の高まりから、日本製品の不買運動が起きている。日本の歴史教科書などへの反発の矛先が、現地の日本企業に向いた形だ。これまで日中関係は、小泉首相の靖国参拝問題で政治は冷え込み、一方で経済分野の交流は活発なことから「政冷経熱」といわれてきた。中国は最も魅力的な大市場だが、新たな「中国リスク」に、日本企業の中国戦略は見直しを迫られるのか。
「一部の日本人と日本企業は、日本がかつて人類に対して犯した大罪を認めようとせず、『南京大虐殺』や『従軍慰安婦』『七三一部隊』などのすべての内容を歴史教科書から削除しようとしている。われわれは中国人として中国の民族企業として歴史を忘れることはできない。われわれは日本製品ボイコットを支持する」
中国連鎖経営(チェーンストア)協会が今月一日、採択し、ホームページに載せた提議書にはこんな過激な言葉が飛び交う。提議書は「歴史教科書改訂を支持している」企業として、アサヒビールなど十社を名指しした。
さらに提議書の非難は続く。「中国侵略の犯罪を否定し、気炎をあげている日本企業が生産した製品を断固ボイコットし、商品棚から撤去する」とし、最後は共産党宣言張りに「みんな行動を起こそう!」とあおり立てている。
中国では三月下旬以降、尖閣諸島の領有権を主張する民間団体インターネットで日本の国連安保理常任理事国入り反対や歴史教科書問題での批判を強めている。東北地方の瀋陽や長春などで日本製品のボイコットが起こったほか、成都で今月初め、イトーヨーカドーが反日デモに見舞われた。四月に入り、各地に飛び火している。
中国側に名指しされた日本企業では困惑が広がっている。アサヒビールは中條高徳名誉顧問が「新しい歴史教科書をつくる会」の会誌に「靖国神社に詣でない政治家に国政に参加する資格はない」と書いたことから、やり玉に挙げられた。
同社広報部は「中條氏が個人としてつくる会の賛同者となっているが、会社としてかかわっているわけではない」とした上で、「慎重に状況を見ながら、引き続き中国で事業を展開していきたい」と話す。
「日中間の政治問題になっている以上、一企業としてどう対応を取るべきかというレベルを超えてしまっている」とある企業の広報担当者は言うが、名指しされていない日本企業にも動揺が走る。
ホンダの福井威夫社長は七日、中国での日本製品排斥の動きを受け、日本人で集まっての懇親ゴルフや会食を慎む方針を明らかにした。状況を見ながら出張者の数を減らすことも検討しているという。ホンダの「アコード」は中国では高級車の代名詞で、若者のあこがれの的だ。火の粉をかぶらないよう対応に必死だ。
中国連鎖経営協会は、中国全土に七百社以上の会員を擁する流通業界の有力団体だ。日系企業は加盟していないが、米ウォルマート・ストアーズなど外資系企業も加わっている。日本製品ボイコットの背景には、日系企業が成功していることに不満を募らせている現状もあるようだ。
中国に進出している日本企業は「中国・商務省まとめで三万一千社を超える」(日中投資促進機構)勢い。在留邦人は登録者だけで約七万七千人に達する。
日本から中国への直接投資も二〇〇一年の中国の世界貿易機関(WTO)加盟や、年7−8%といった中国経済の高い成長に合わせて加速している=グラフ参照。トヨタ自動車やホンダのような大手自動車メーカーは中国市場の開拓に本腰を入れ始めた。外資規制の緩和策として昨年十二月から、フランチャイズチェーンを解禁したことで、スーパーやコンビニなど流通分野の進出競争も激しくなっている。
中国の街中で日本企業の製品や店舗が一段と目立ってきた中で、今回の不買運動が起こった。
中国情勢に詳しい評論家の宮崎正弘氏は「中国の国営コンビニは外資系、特に日系のコンビニに客を食われて、経営に苦労している。それが逆恨みの感情になることはあり得る」とみる。
反日デモなど過激な行動は一部の反日活動家といわれるが、一般の反日感情の高まりも表面化しだした。福井県立大の凌星光名誉教授は、一カ月前に訪れた上海での経験を話す。
「会社を経営する親せきがホンダ車で迎えに来てくれたが、『日本車に乗っているとお客さんに悪い顔をされるから買い替えなければ』と切り出すのでびっくりした。反日感情の火が顕在化してきたのであれば、早めに消さなければ、未来志向の日中関係は築けない」
反日感情によって、中国ビジネスのリスクも高まる。
今回、不買運動に直面したスーパー「ジャスコ」やイトーヨーカドーの店舗では安全対策を強める必要に迫られているという。在広州日本総領事館は七日、「十日にも深セン市内でデモを行う呼びかけがある。日本企業各社は企業内外の動向に十分注意を」と注意を促した。
富士通総研の上席主任研究員、朱炎氏は「日本企業にとって、これまで対中投資リスクとは決済が確実か、知的財産権は守られるのか、中国政府の急な政策変更はないのかといった点だった。今回は、反日感情による社会不安というリスクが加わることになり、日中ビジネスにとって非常に好ましくない」と指摘する。
政治分野では、小泉首相の靖国神社参拝によって日中関係が悪化し、「政冷経熱」が続いてきた。前出の凌氏は「小泉首相が靖国参拝の姿勢を変えないことが、日中の経済面でも大きな障害」と述べ、ただでさえ政治が“非関税障壁”になっていると指摘する。
朱氏は「中国政府としては、ビジネスはビジネスで、対日経済関係は重要だという方針は変えていない」というが、「日本政府の対応次第で、経済も冷めて『政冷経冷』になる恐れが出てきた」と危惧(きぐ)する。
反日運動は収束に向かうのか。宮崎氏は懐疑的だ。「昨年もサッカーアジア杯で反日ブーイングが問題になり、今年もまた教科書問題で両国関係がぎくしゃくするなどトラブルが続いている。問題が次々に起こっていくうちに、巨大なエネルギーが当局が制御できないほどになり日本企業焼き打ちのような形で爆発する可能性もある。日本企業は中国の経済成長を見越して盛んに進出してきたが、今回の事件をきっかけに対中戦略を反省する企業も出てくるだろう」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050408/mng_____tokuho__000.shtml