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沖縄から黒潮に乗り オニヒトデ異常繁殖
温暖化の“触手”深刻
海底にはびこる不気味なトゲトゲお化け。本州紀伊半島南端にある串本で、沖縄で有名なオニヒトデが異常発生していることが一日、環境省の調査で判明した。世界的にも貴重なサンゴ群落の危機に、ラムサール条約登録を目指す同省の懸念は深まるばかり。三万匹もの異形の生き物が私たちに訴えるものは。 (和歌山県新宮支局・東條敏明、藤原正樹)
「道具が無い時、石を拾って、口の周りの内臓を徹底的につぶして殺すが、普通、貝などをつぶした時には小魚が残骸(ざんがい)を食べようと寄ってくるのに、こいつの場合は何も寄りつこうとしない」。オニヒトデの駆除に取り組むダイバーはその不気味さをこう説明する。
■“火ばし”とロープ手に
本州最南端、潮岬を有する和歌山県串本町は、世界遺産に登録された熊野古道も近い観光地。ダイバーも年間約三万人やってくる。その海底にまるで、じゅうたんを敷き詰めたようにオニヒトデがいるという。
串本海中公園センターの御崎洋・公園学術部長(57)、中村洋介・町観光協会長(50)らダイバー有志と先月末、ダイバー船に同乗して、潮岬西を目指した。沖合約五十メートル。水深一四メートルでアンカーが着底した。水温は二八度だ。通常は二〇−二三度だが「最近、急上昇している」と船長。
ダイバーらは“火ばし”とロープを手に、海中に次々と潜っていく。海の色は緑っぽく、ダイバーはすぐ見えなくなった。イルカが船に近づいてきた。
■刺されると激痛と腫れ
駆除は、ダイバー一人一人が手に持った火ばしで一匹ずつ、つまみ上げるしかない。オニヒトデに刺されると、激痛が走り、腫れあがるからだ。「ほんのちょっと、グローブの間から刺されたことがあるが、飛び上がるほど痛かった」と中村さん。
船長がオニヒトデの口からロープを通したものを、ダイバーから受け取り慎重に船に上げ、カゴに移した。直径十五センチ前後主体に、中には赤ちゃんの手のひらくらいのものも。どれも無数の触手がうごめいて、背中には毒トゲがびっしり。色も暗オレンジ系で気持ち悪い。
■干してから焼却処分に
捕らえたものは焼却処分するが「一、二日、干してからでないと焼けない」と御崎さんは顔をしかめ「オニヒトデの大量発生は一九七〇年代にもあり、この時は十年間駆除し続け、計千四百匹を捕獲し終息に向かったんだが…」と振り返る。
そしてこうため息をついた。「一定海域で駆除できたとしても、そのほかの海域で親ヒトデがどれだけ産卵し、子どもになるのかは来春にならないと分からない。大量発生している海域を徹底的に発見してつぶし、サンゴに取り付いている個体を巡回しながら一つ一つ人海戦術で駆除するしか方法がない」
■世界最北の群落
環境省がラムサール条約の登録申請を予定する串本周辺海域は世界的に見ても、貴重なサンゴ群生地だ。日本で最初に国立公園内海中公園にも指定されている。
この公園を管轄する環境省の担当者は「約百二十種のサンゴがあり、スギノキミドリイシなど複数種が世界最北の群落を形成している貴重な海域」と説明する。
写真家でもある中村さんは「串本沿岸は、世界で唯一のオオナガレハナサンゴの密集個体群や貴重なシコロサンゴの大群落もある。これら豊かな生態系を守り、ラムサール条約登録の十一月までに、なるべく駆除できるよう、皆で力を合わせたい」と強調する。
なぜ串本沖でオニヒトデが大発生したのか。南山大学の目崎茂和教授(さんご礁学)は「五年前、沖縄で異常発生したオニヒトデの幼生が、黒潮に乗って串本に来たのでは」と推測する。前出の担当者は「三年前から増え始め、昨年秋に大発生した。ここ十年、黒潮の流れが紀伊半島に近い所を通るようになった。黒潮で運ばれたオニヒトデが、近年の海水温高温化で繁殖したとみている」と分析する。
こうした指摘の通り、串本海域では過去三十年にわたり水温が漸増傾向を示している。
■日本西南部 温水が停滞
地球温暖化に対する科学的データの収集、解析を行う国際機関、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のメンバーでもある、茨城大学の三村信男教授(海洋工学)は「高温の海水が日本列島の西南部の海岸に停滞していると指摘されている。本来熱帯にしかいない魚が日本近海で見られる。越前クラゲの大発生もその影響だ。熱帯性の生物が温帯、寒帯域で見られるのは、近年、世界的な現象になっている」と指摘する。
目崎氏は「豪州・メルボルン沖で約五万匹のクモガニが大発生したが、串本沖と同じように、海水の高温化現象があったようだ。近年の海水高温化は異常だ。一九九八年には、サンゴが死んで白化する現象も世界の広い海域で起こった」と解説する。
■IPCCも07年報告へ
これらの現象は、地球温暖化の影響なのか。目崎氏は「最近の現象をみると、地球温暖化の影響が、水の中で顕著だ。地球全体の水温が高くなっている。水温が高くなると、氷河が溶け出すことに加え、高温化した水の膨張で海水面が上昇する」と憂慮する。
三村氏は「データを蓄積しないと、地球温暖化と生態系の変化を結びつけるのは難しいが、IPCCの注目度は高い。二〇〇七年に発表する第四次報告書では、第一章で北へと広がる動植物の生態系の変化などが取り上げられる予定だ。この内容で一章全体を使われるのは初めてで、人為的な温暖化によって迫りつつある危険性を指摘することになるだろう」と明かす。
目崎氏もこう警鐘を鳴らす。「オニヒトデやクモガニなど、本来の生態系を外れた異常繁殖は、深刻化する温暖化の予兆だ。今月一日から政府はクール・ビズでノーネクタイを呼び掛けているが、政策的に夏の一定時間、全国のクーラーを止めるくらいの対策を取らなければパフォーマンス止まり。このままでは、東京湾がオニヒトデで埋め尽くされることになりかねない」
■メモ
<オニヒトデ> さんご礁にすむ大型のヒトデ。沖縄で被害が出て有名になった。最大直径60−80センチになり、毒トゲを持つ。生まれて1センチ以上になると、サンゴを食料とし、1匹の成熟した個体は1年に10平方メートル前後も食べ、6−7月に数千万個の卵を産む。大型巻き貝のホラ貝が天敵だが、数が少なく天敵がいないに等しいとされている。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050602/mng_____tokuho__000.shtml
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