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「週刊現代」2005.04.16号
チャールズ皇太子再婚で残るミステリー
ダイアナ「死の真相」
1997年8月31日、36歳の女性が天に召された。
世界中が悲嘆に暮れたダイアナ元英皇太子妃の死から7年以上経った今春、チャールズ皇太子は長年の「パートナー」であったカミラ・パーカー・ボールズと第二の人生を歩み始める。だがこの一方で、元夫の人生の歩みを同じくするかのように、今は亡きダイアナの唐突すぎた死に再び光が当てられようとしているのだ。
いまだ見えない「死の真相」を、改めて追跡する──。
「パンドラの箱」がこじ開けられる日
ベニーニ・マクレガー(在英ジャーナリスト)
ダイアナにとって憎んでも憎みきれない二人が4月8日、結婚する。チャールズ皇太子とカミラ夫人だ。当の二人は浮かれているが、バッキンガム宮殿にお祝いムードはない。エリザベス女王は結婚式に出席すらしない意向だ。
ダイアナはなぜ死んだのか──。その真相を解き明かす最終報告書が間もなく女王に届けられる。真夏のパリのトンネルでダイアナと恋人ドディ・アルファイドを乗せた乗用車が壁に激突してから8年近く。仏捜査当局は『純粋な交通事故」と結諭づけたが、陰謀他殺説が根強く残った。そこで女王は英国独自で真相究明を行うよう命じた。04年1月、「女王の主席検視官」が統括し、ロンドン警視庁による捜査が始まったのだ。
「女王の主席検視官」は強大な捜査権を持ち、英国情報機関MI5やMI6の機密ファイルを見ることも認められている。国家による陰謀説の真偽を確かめ、女王に報告することが使命だからだ。
運転手の銀行口座と血液分析に潜む”謎”
まず、英捜査当局は仏当局が解明できなかった「謎の銀行口座」に注目している。口座の名義人は、アンリ・ポール。事故を起こしたメルセデス・ベンツを運転し、ダイアナたちとともに死亡した人物で、パリのリッツ・ホテルの警備責任者でもあった男だ。彼の口座には、事故発生の9ヵ月前から毎月、多額のフランスフランが振り込まれていた。振り込み人は誰なのか。ポールは何の見返りに報酬を得ていたのだろうか。
パリのリッツ・ホテルの警備部門は、東西冷戦の時代から英情報機関がスパイ活動の拠点として情報員を送り込んでいたとされる。世界中から集まるセレブの動向を監視するためだ。ダイアナはリッツなら安全な密会場所になると思っていたかもしれないが、実際には監視の目にさらされていた。
また、英当局は仏当局によるポールの血液分析の結果にも重大な関心を寄せている。血中から検出された一酸化炭素の濃度があまりに高すぎるからだ。これだと、ポールは車の運転はおろか歩行すらできないフラフラの状態だったことになるが、現実はそうではなかった。ということは、何者かが検体に複数の血液サンプルを混ぜた可能性がある。だが、仏当局は血液サンプルがポール本人のものかどうか、DNA鑑定を行わずに済ませてしまったのだ。
さらに、ダイアナの死後に起きた『カメラマン焼死事件」の解明も重要な鍵だ。
2000年5月、仏南部の農場で焼けこげた車が見つかり、車内から焼死体が発見された。遺体が有名なパパラッチであるジェームズ・アンダーソンのものだと判明するや、捜査関係者に衝撃が走った。彼こそ、ダイアナの乗っていたベンツに事故現場付近で接触した車の持ち主だったからだ。
「チャールズが私に重症を負わせようとしている」
ベンツのサイド・ミラーにはフィアットの白い塗料片がわずかに付着しており、事故直後にトンネルから走り去る白いフィアットも目撃されていた。これを手がかりに仏捜査当局がフィアットの持ち主を割り出すと、それがアンダーソンだった。彼は、かねてから英情報機関との関係が噂されてもいた。セレブの隠れ場所をことごとく暴いて特ダネ写真を連発し、ワイン畑を所有するほどの大金持ちになったためだ。
仏当局はようやくアンダーソンにたどり着いたが、前述のように本人は失踪し、焼死体となった。さらにその2ヵ月後、パリにある彼の所属事務所に覆面をした3人組の男が押し入り、警備員が射殺された。3人組はアンダーソンの遺品には触れずに有名人の写真を奪っていったという。この覆面強盗団の正体が何者なのか、いまだ明らかにされていないが、英当局の極秘捜査は大詰めを迎えているといわれている。
ダイアナ直筆の手紙をめぐる謎も解き明かされねばならない。亡くなる10ヵ月前、彼女は信頼する執事だったポール・バレルに手紙を送っていた。
「わたしの人生の中でこの局面が最も危険だわ。チャールズは再婚する道を開くために、わたしの車のブレーキに細工をして事故を起こさせ、わたしが頭部に重傷を負うようにしようとしているのよ」
筆跡鑑定の緒果からもダイアナ直筆であることは間違いない。その意味するところは何なのか。執事は手紙を暴露した後、アメリカに身を隠している。
英当局は、同じ国の情報機関が持つファイルを開きつつある。まさに「パンドラの箱」がこじ開けられるのだ。女王陛下にだけは必ずや真相が伝えられるだろう。そのとき、女王はいったい何を思うだろうか──。
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