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直木賞受賞の角田光代さんに聞く
http://www.chunichi.co.jp/mobile/kakuta2.shtml
第132回直木賞を受賞した角田光代さん=東京都内の事務所で
携帯小説「地上発、宇宙経由」を執筆している角田光代さんが1月、第132回直木賞を受賞した。受賞の喜び、携帯小説、今後の抱負などを東京都内の事務所で聞いた。 (中日新聞社メディア局)
−受賞おめでとうございます。
角田 ありがとうございます。でも、どのような賞でもそうなんですが、決定するまで、どう待てばいいのか。仲間とお酒を飲みながら連絡を待つか、しらふで静かに吉報を待つか、いつも惑うんです。今回は、お酒を飲まないで編集者の方と一緒に待ちました。
−中日新聞社はちょうど、携帯電話情報サービス「中日新聞・中スポ」で角田さんの小説「地上発、宇宙経由」という作品を配信中です。私どもも本当にうれしく思いました。携帯電話向けの小説というのは初めてですか。
角田 えー、実は初めてなんです。コンピューターのホームページで作品を書いたことはありますが、携帯サイト向けは初めてです。
−この小説は、現実の人間関係と、携帯メールでつながる仮想的な人間関係を巧みに描いている作品ですね。携帯電話を手にした平凡な主婦がふとしたきっかけで、かつての恋人にメールを打つ。ところが、メールアドレスが違っていて、まったく知らない男子大学生に届いてしまう。大学生は間違いメールと分かりながらも、主婦とメールと交換しあう。携帯電話は好きなんですか。
角田 正直に話しますと、私はとても機械類に弱いんです。それで携帯電話を持ったのも2年前くらいなんです。携帯電話は多くの人たちが日常的に使っているんですが、私にとっては、まだ「謎」というか、分からないことが多いんです。携帯電話が登場してきて、社会や人間関係が大きく変化したと思うんです。その変化が今後、人間関係をどう変えていくのか−−よく分からない。その疑問を出発点にして作品を書いてみました。
−といいますと?
角田 携帯電話があると、いつでも、どこでも自分の気持ちを相手に伝えられますよね。携帯電話というのは、一人一人をいとも簡単につなげることができる。しかし、これって逆に、人間を「独りの世界」に閉じ込めたような気がするんです。例えば、夫婦。2人がそれぞれ携帯電話を持っていて、夫婦同士で通話したり、メールを交わしたりもするのでしょうが、夫は妻とは関係のない知人などに通話したり、メールしたりもする。しかし、妻はそれを知らない。その逆のことも起きるわけです。夫婦であるのだけれども、携帯という非常に便利な道具が普及したことで、夫は「夫の世界」、妻は「妻の世界」を作ることができてしまう。夫婦だけど、それぞれ、個人一人一人にしてしまう。
−携帯電話が現実の人間関係とは別個の人間関係をつくってしまう。
角田 そうですね。非常に便利なんだけど、奇妙な道具だと思います。確かに携帯電話を通じて一人一人はつながるんですが、現実的な人間関係では個人と個人との距離を作ってしまう。先ほど、夫婦を例に上げましたが、友だちや同僚などの人間関係も同じ事が起きますよね。 しかし、今さら、携帯電話が無かった時代には逆戻りはできないんです。携帯電話が登場したことによって、人間関係がどんな風に変わっていくのか、よく分からない。よく分からないから、それを探ってみようと…。
−作品の発表の場所として携帯サイトというのは、どうでしょうか。
角田 活字として印刷された本と、WEBや携帯サイトでの小説は、異なるジャンルのものだと思っています。私は小さいころから本が大好きでした。手に取った感触、装丁、一つ一つの活字。本は「一つの世界」と言ってもいいくらいです。WEBや携帯に書いた作品を書籍にはしたくないと思っています。エッセイは別として、小説については本と、WEBや携帯向けとは、別物だと思います。
−作品はどのようなペースを書いているのですか。
角田 毎日の執筆時間は決めているのです。朝の7時半ごろから午後5時まで。仕事場で黙々と書いています。午後5時以降は基本的に仕事はしません。徹夜などは言語道断です。夜は、友人らとワイワイやりながら、お酒を楽しむ時間にしています。
−ビールがお好きだと聞いていますが。
角田 いいえ、ビールは最初だけです。好きなのはワインと焼酎。でも焼酎は、イモ以外。お酒が好きになったのは学生時代から。もともと人見知りが激しく、話し下手だったんです。大学生になると、友人らとお酒を飲む機会も増えてくるでしょう。お酒を飲みながらみんなと楽しくワイワイやっていると、話も進むんです。学生のころは無茶な飲み方をしたこともありますが、今は節度を守っていますよ。
−これからは、どんな小説を。
角田 長編小説です。携帯電話もそうなんですが、まだまだ分からない事が、私には多いんです。分からないことを、さも知っているような振りをしていくことはできない性分なんです。小説を書くのは、その疑問に対するこだわりかもしれません。書きながら、その答えを模索してきました。今後もそうしていきたいと思っています。今、疑問に思っているのは「世代」。学生時代に、日本がバブル経済だった私と一緒の世代は一体、どんな世代なのか。それに、家族、夫婦、友情とは何か。ちょっと唐突ですが、歴史では「満州」というのも一体何だったのか−−という疑問も持っています。どのテーマを選ぶかは、まだ決まっていませんが、腰を据えて長編小説に取り組みたいですね。
http://www.chunichi.co.jp/mobile/kakuta2.shtml
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