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第2回『戦争の世紀を超えて』刊行記念・対談『姜尚中×森達也』参加[Kawakita on the Web]
http://www.asyura2.com/0411/war65/msg/854.html
投稿者 なるほど 日時 2005 年 1 月 11 日 18:05:37:dfhdU2/i2Qkk2
 

■ [event][book]第2回『戦争の世紀を超えて』刊行記念・対談『姜尚中×森達也』参加

昨年12月の青山ブックセンターの対談に続いて、新宿紀伊国屋ホールにて行われた『戦争の世紀を超えて』刊行記念の姜尚中氏と森達也氏の対談を聞きに行った。テーマはイラクと北朝鮮について。今回も会場を見渡すとやけにオバサマ達が多かったような気がしたけど、気のせい?

トーク終了後、『戦争の世紀を超えて』を購入して姜尚中氏と森達也氏にサインをいただく。姜尚中氏、森達也氏ともにサインする全員と握手していた。僕はヘタレなので姜氏の前で緊張してしまうも、姜氏はそれを察してか頑張れよって感じで強い握手をしていただいた。超感動(笑)。森氏には前回ロフト・プラス・ワンで明かされたドキュメンタリーでの天皇陛下のインタビューについて「天皇陛下にインタビューは可能そうですか?」と質問。森氏は笑って「わからない」と言っていた。ドキュメンタリー自体も3月放送予定だったがどうなるかわからないとのこと。

2004-12-05 姜尚中氏+森達也氏トークセッション『戦争の世紀を越えて』参加
http://d.hatena.ne.jp/kwkt/20041205
2004-12-27 月刊『創』プレゼンツ「激論!イラク−日本−北朝鮮 メディアが伝えない真実」参加
http://d.hatena.ne.jp/kwkt/20041227
amazon.co.jp『戦争の世紀を超えて―その場所で語られるべき戦争の記憶がある』
■ [archives] 第2回『戦争の世紀を超えて』刊行記念・対談『姜尚中×森達也』メモ
今回も非常に勉強になりました。

イラクについて

なぜアメリカはイラクに侵攻しなければならなかったのか。
「石油利権」「軍産複合体」など理由が挙げられているが、それらが間違いでないにしても、根本には「恐怖」―他者に対しての恐怖、異物に対しての恐怖―があるのではないか。
マイケル・ムーアが『ボーリング・フォー・コロンバイン』で、アメリカ社会がなぜ銃を手放せないかといえば、かつて先住民や異民族を迫害してきた負の歴史が根底にありそれに対する恐怖があるから銃を手放せないというレトリックを展開した。それには同意。
それと同じ構造が国外に向けられて先制攻撃にまでいってしまったのではないか。

「恐怖」とともに「理想」というものが付け加えられるのではないか。
今から100年前に日露戦争の戦後処理としてポーツマス条約がアメリカの仲介で締結された。当時の大統領はセオドア・ルーズベルト。彼は「棍棒外交」を行ったと言われており、それはヨーロッパやアメリカを中心とした白人の文明国が野蛮な国を叩いて近代化させることはよいことであるという認識。
しかし白人の国ではなくとも文明国らしき国が唯一あるとした。それが日本。セオドア・ルーズベルトは日本に対して警戒心も持っていたが、桂・タフト会談でフィリピンと朝鮮半島をバーター取引した。そして日本は1905年に第二次日韓協定で朝鮮半島を保護国化した。
背景にあるのは「文明国」―非白人では日本だけが文明国に値する―という考え方。これは単なる帝国主義ではなくて、アメリカン・デモクラシーを世界に拡げる、そこには力の裏づけがなければならない、力で文明化してやるのはよいことであるという「理想」があったのではないか。これがイラクでも現れているのではないか。

「恐怖」と「理想」という相反しそうな二つの概念を一つにまとめたものがもしかしたらブッシュがよく使用する「正義」ではないか。

「正義」というのは恐怖がバネになって「理想」状態を作ろうという意識があるのではないか。「正義としての力(might is right)」ということになり、イラクでアメリカが絵に描いたように実現している。

アメリカの「恐怖」とは内戦の恐怖ではないか。国家としての統合に本当は自信がないのではないか。アメリカは国としての歴史が浅く、そこにいろいろな民族が集まっているため民族の同一性は謳えない。だからこそ一つもまとまり・ユニオンを強調したいという気持ちがあり、その裏には実は自分たちはユナイテッドされてないのだという意識があるのではないか。

内政の恐怖感と国際政治の混乱した状況がダイレクトに結びついているのではないか。アメリカ人の中には対テロ戦争に負けるということは自分たちが死ぬということだと思っている人もいる、だから先制攻撃しないといけないだと思っている人が少なからずいるとのこと。
自分たちの国内の恐怖に対する影法師を国外に追いかけている感じがする。
オサマ・ヴィン・ラディンにしてもサダム・フセインにしても、もとはアメリカと協力関係にあったという意味でも影法師。

多民族・多宗教であるがゆえに内政の不安があり、それが外側に発動して今の状況があると考えられる。
その外側に派遣される兵士もアメリカ国内の非白人系の人々が中心。
フセインの息子ウダイとクサイが殺されたが、これはアメリカの戦闘終結宣言後。普通は殺せないはず。ということはこれは相手が敵方の指導者の息子といえど殺戮。それがあたかも普通の戦闘行為であるかのようにメディアで喧伝され、受け入れられている。

アメリカでペンタゴン(Pentagon:米国防総省)とテレビジョン(television)を合わせたペンタ・ビジョン(Penta-vision)という言葉がある。ベトナム戦争でアメリカが学習したことは、どうやってメディアをコントロールするかということ。60年代のベトナム反戦運動が新しい波を作り出したけれども、今から見てみるとそれがきっかけで現在はメディア・コントロールが行き届いたペンタ・ビジョンになってしまった。
ポスト・ベトナムの状況では、テレビで戦争を語るのは国際政治・安全保障専門家や軍事専門家、あるいはイスラム地域研究者。ベトナム戦争のときは誰もが戦争に対して発言していた。
大量破壊兵器について「ない」と発言すると、司会者やアナウンサーから「どうしてないんですか?」と挙証責任を問われる。「ある」という前提がメディアではヘゲモニーを握ってしまっている。
北朝鮮について

イラクの民主化が日本をモデルにしている―軍国主義だった国を占領して民主化し、経済大国となった―と言われているが、姜氏は違和感を持っているとのこと。日本の知識人の中にも「イラクと日本をいっしょにしてくれるな」的発言をする人がいたが、姜氏の違和感はそれとは違うとのこと。
それは朝鮮半島の南側の軍事占領。イラク占領と日本占領を比較する場合、常に「日本占領」という一国の中の占領をイメージする。しかしアメリカからすれば一国単位の話ではなく、日本占領とは明らかに極東アジアの国を超えた地域がらみの戦略の中に組み込まれているもの。占領地域とは朝鮮半島の38度線以南と日本と沖縄。
戦後史を考えるときに朝鮮半島の38度線以南の占領と日本占領がなぜ違っていたのか、そのことが日本にとってどういう意味があったのか、その結果として49年からの朝鮮戦争という内戦がどういう意味があったのか、あまり知られていない。
アメリカは45年の戦後統治において南側にある解放勢力はほとんどアカ(共産主義)だと考えた。そして自生的に現れてきた自治組織をすべて潰してしまった。朝鮮半島の北側も南側も自発的な「人民委員会」なるものが出てくるが、すべて潰され南側の人々が「反米」という意識をかなり強く持つようになった。
今アメリカがイラクでやっていることは反サダム・フセインであったいろいろな自治組織や民主化の動きの中で現れて生きている自治的な動き―新聞で「部族」と言われている―をアメリカは潰している。今のイラク占領は日本モデルではなくて、朝鮮半島の分断・内戦モデルではないか。今イラク国内にいる3割のスンニ派(イスラム教では多数派)が脱落すれば収集がつかなくなる。
アメリカが「統一されたイラクを」と言っていて、スンニ派の人々をオミットした場合、確実に内戦になる。
北朝鮮という―休戦とはいえアメリカと50年以上戦争を継続している―国が誇張に誇張を重ねて自業自得で今のような状況になったと言えないこともないが、歴史的に物事を見てみればもう少し違った対応ができるのではないか。

この間、藪中アジア大洋州局長が平壌に行って、横田めぐみさんの夫とされている人物と握手をして、その際にCIAから供与された特殊な試料を塗っていってDNAをサンプリングしてきたと言われている。それをサンプリングした結果、その人は横田めぐみさんの夫ではないことが判明したと言われている。外務省はこれに対して否定的な発言をしていないのでほぼ認めている。
外交の代表が他国に行って、そこの人間と握手をしてこっそりDNAを持ち帰るなんて普通のことではない。世間にこれをアピールしていること自体が異常な事態。こんなことが世界に広まったら普通は相手にされない。しかし日本の外交は拉致問題以降もう十分におかしいと思われている。
2004-11-18 証拠持ち帰りを示唆 めぐみさん「夫」確認で
http://news.goo.ne.jp/news/kyodo/seiji/20041118/20041118a1120.html?C=S
外務省の藪中三十二アジア大洋州局長は18日午前の衆院外務委員会で、横田めぐみさんの夫とされるキム・チョルジュンさんの身元を確認するための証拠について「果たしてそれが取れたかどうかも含め、今、精査している」と述べ、何らかの証拠を持ち帰っていることを明らかにした。

藪中氏は、キムさんからDNA鑑定のために有力な毛髪の提供を断られたとした上で、「その他の方法ということだが、われわれも少しいろいろと工夫しているが、事柄の性格上、それ以上立ち入ることを差し控えたい」として、具体的な内容の説明を避けた。


北朝鮮との関係を考えるときに、今だけでなく歴史を考える必要がある。59年からの帰還事業で10万人以上の人が帰ったがそのことが現在の問題とリンクして語られることはほとんどない。
また北朝鮮経済は確実に変化しており、経済の4分の1が私経済になっている。工業団地ができるなど、これから中国のようになるのかベトナムのようになるのかは不明でも、変化が起こっている。
北朝鮮を見るときに歴史と社会経済を考慮に入れなければならない。そして核問題と拉致問題がある。現在は4つのバランスがまったく不均衡になっている。
意外と6者協議によって核問題が解決し、米朝が仲良くなってしまうと、日本は驚くと同時に蚊帳の外になる可能背がある。だから日本は北朝鮮に関与し続けなければならない。
拉致問題に関しては将来国交が結ばれようと結ばれなくとも半永久的にその真相を解明しなければならない。関東大震災で在日朝鮮人が7千人以上虐殺された真相が明らかにされていない事件があっても、韓国はその国と国交を結んだ。国交が結ばれようと結ばれなくとも、歴史の真実の解明に向けた動きは止むことはない。むしろ国交を結んだ方がより解明しやすいかもしれない。
政治での和解の妥結は国民同士の和解に直結するわけではない。韓国は40年かかった。先は長い。
アメリカの調査によると、
北朝鮮の経済規模は韓国の20分の1。
防衛費は韓国の4分の1。
戦闘能力・武装レベルは朝鮮先頭当時の50年代あるいは60年代初期の段階。
航空機パイロットの訓練が1ヶ月に1度、1〜2時間やれているかどうか。
核兵器に関しては、核兵器を開発するために濃縮ウランを作成していたとアメリカが言ったが、その後なんら証拠が出ていない。どこの国にもその証拠をはっきりと示せていない。CIAはその情報を否定している。つまりイラクの「大量破壊兵器」と同じ。
核兵器を開発するためには濃縮ウランを作成する高速度の遠心分離機が数千の単位で必要で、北朝鮮にそんなものがあるとはどこにも証拠がない。
「核を持っていた」という表現は英語で言い換えると「核を持っている資格を持っていた」となっている。「持っていた」とは言っていない。これも情報操作ではないか。
溜飲を下げるために言葉だけがエスカレーションしている。
善くも悪しくも北朝鮮を交渉相手と見なしてまずは核を放棄させ、万が一でも戦争に近い状況だけは回避することが重要であり、そんな国を追い詰めて暴発させるのではなくて、日本がそれをコントロールするようなもう少し大人の外交をしてほしい。

http://d.hatena.ne.jp/kwkt/20050110
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