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1月3日付・読売社説
[『戦後』を超えて]「世界の変動にどう立ち向かうか…新たな視座を築け」
【日米同盟を深化させよ】
過去の常識や経験則に頼っていては対応出来ない、激動の時代である。外交や安全保障も例外ではない。
戦後の国際社会の政治・安全保障を規定した冷戦構造はとうに過去のものになっている。だが、今なお、安定した新たな国際秩序の姿が見えてこない。
東アジアでは、経済、軍事の両面で大国化しつつある中国の動向をはじめ、新秩序形成の展望は極めて不透明だ。
9・11米同時テロ後、国際テロや大量破壊兵器の拡散という新たな脅威にどう対処し、国際社会の平和を守るのか。国際社会は無論、日本にとっても極めて重要な課題となっている。
イラク情勢は、日本にとっても重大な試金石であり続ける。
唯一の超大国である米国は、国際社会の平和を維持する“重し”である。一月末の国民議会選挙を前に、治安情勢は依然、厳しい。だが、米国がイラクの再建と平和構築に失敗すれば、中東だけでなく、国際社会全体が不安定化する。
国際社会の平和は、日本の存立の基盤だ。自衛隊のイラク派遣による人道復興支援を継続し、日本が米国を側面支援する理由はここにある。日米同盟は今後、ますます「世界の中の日米同盟」の性格を強めるだろう。
北朝鮮の核・ミサイルの開発は、日本にとって極めて深刻な脅威だ。北朝鮮に対処する上で、日米同盟の重要性は言うまでもない。北朝鮮だけでなく、地域の不安定化につながりかねない中国の軍事大国化に対処するためにも、アジア太平洋地域の平和の“公共財”として、日米同盟はますます重要になる。
米国は世界的な規模で米軍再編を進めている。その一環として、北東アジアから中東に至る「不安定の弧」でのテロや紛争に対処するため、日本を戦略拠点にしようとしている。
この地域で、大規模なテロや紛争があれば、日本にも影響しかねない。弧に沿った海域は中東から日本への原油輸送の海上路であり、日本経済の生命線だ。
【難しい中国との間合い】
地域の安定に、米国と協力して、日本も出来る限りの役割と責任を負わなければならない。日米同盟は、多面的な役割を担っている。同盟の強化と深化へ、緊密な日米戦略対話が肝要だ。
東アジアにあっては、中国が急速な経済発展を遂げる一方で、海空軍の近代化を中心に軍事力の増強を続けている。
日中の経済関係は今後ますます相互依存を強めるだろう。だが、政治や安全保障の面では、むしろ日中関係は緊張を増す可能性がある。
共産党一党独裁の中国とは、政治体制も、自由主義、民主主義などの価値観も異なる。中国とどう向き合うかは、日本の外交、安全保障にとって、中長期的に極めて重要な課題である。
対中外交には、これまで摩擦を避けようとする、過度の対中配慮があった。
中国は海洋進出を進め、例えば、東シナ海の日本の排他的経済水域付近でのガス油田開発によって、日本側の資源が脅かされている。従来、そうした事態に見て見ないふりをする空気もあった。
こうした姿勢から決別し、日本の安全と繁栄を最優先する戦略的外交を展開しなければならない。大事なのは、経済関係の発展と、国益を守る政治・安全保障政策の両立だ。
中国には、政治・経済・軍事の力を強化し、東アジアの新秩序形成への動きを主導する意図もあるのだろう。東アジアの“盟主”として、米国と対峙(たいじ)する一極たろうとする戦略もうかがえる。
【「新秩序」へ努力を尽くせ】
無論、政治体制も、宗教・文化も多様な東アジアで、地域共同体が簡単に出来るとは考えにくい。だが、各国の立場の違いや利害が錯綜(さくそう)する中で、日本も国益にかなった新秩序の形成を目指す外交努力を尽くさなければならない。
国連発足六十年の今年は、国連改革が重要な課題となる。核心は、安全保障理事会の改革だ。米露英仏中の五常任理事国による、先の大戦の戦勝国体制は、二十一世紀の国際社会の現実を反映していない。イラク戦争などで露呈した機能不全の一因でもある。
現状では、例えば、日本にとって死活的な朝鮮半島有事の場合、常任安保理の論議に、日本の立場が十分反映されない恐れがある。秋の国連首脳会合に向けて常任理事国入りを目指す日本が、改革に中心的な役割を果たすべきだ。
安保理改革の実現は容易ではない。だが、日本にとって望ましい国際秩序形成へ、日本の主張を反映させるよう全力を挙げることが重要だ。
国際社会と安全保障環境の歴史的な変動に、日本外交は新たな戦略的展開を迫られている。
(2005/1/3/01:37 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20050102ig90.htm