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http://www.jca.apc.org/stopUSwar/Japanmilitarism/taikou-hihan1.htm
新「防衛大綱」「中期防」閣議決定批判:シリーズその1
血まみれのブッシュの侵略戦争と軍事覇権に全面奉仕する愚挙
◎自衛隊の米軍への完全な従属。“傭兵”“手下”になって世界中に海外派兵する。
◎イラク型侵略への無制限の参戦に道を開く。
◎アジアとの友好関係をぶち壊し、米国の“盾”となって対北朝鮮・対中国軍事対決の最前線を引き受ける。
【1】 イラク戦争で問うべき新「防衛大綱」の本質−−イラク戦争におけるイギリス軍、米英同盟、「パワーシェアリング」を目指す。
(1) 戦後日本の軍事外交戦略の大転換−−イラク戦争・占領でのイギリス軍、米英同盟が新「防衛大綱」の目標なのか。
小泉政権は12月10日、安全保障会議と閣議で、今後10年間の日本の「安全保障政策」=軍事外交政策の基本方針と軍事力のあり方を示す、新たな「防衛計画の大綱」と次期中期防衛力整備計画(中期防、2005−09年度)を決定しました。さらに「武器輸出3原則」の緩和を決定し、「官房長官談話」の形で発表しました。今回のこの新「防衛大綱」と中期防が戦後日本の軍事外交戦略の大転換であることは、政府与党自らが述べているところです。メディアもまたそのように報じました。問題はその中身、内容です。
しかし「大綱」や「中期防」を読んでも、新聞を読んでも、その大転換の中身、イメージは必ずしもはっきりしません。今回の戦略転換は実際はどんな意味を持っているのか。行き着く先はどんな姿なのか。
しかし、あれこれ云々する必要はありません。現に閣議決定を行った政府自身が、ブッシュがやっているイラク侵略戦争に即して具体的な姿を指し示すべきです。野党とメディアも、イラク侵略に即して具体的に追及すべきです。
※「防衛計画の大綱」と「次期中期防衛力整備計画」(防衛庁) http://www.jda.go.jp/j/defense/policy/17taikou/index.html
※私たちは今年7月、すでに概要が明らかにされていた新「防衛大綱」と米軍再編の中での日本軍国主義の新しい復活を批判すべく検討をした。「自衛隊の多国籍軍参加と日本の新しい軍国主義−「主権委譲」後のイラク情勢と米軍の世界的再編の下で−」(署名事務局)
イラク戦争におけるイギリス軍のような役割を果たす、米英同盟をモデルとして目指す−−これが新「防衛大綱」の最大の狙い目である。私たちはそう考えます。あの無法で残虐なイラクへの侵略戦争、ファルージャでの大虐殺と徹底的な破壊という野蛮極まりない非人道的な侵略戦争、石油資源略奪のための植民地主義戦争に、イギリスのように最初から参戦することなのです。もし昨年3月のイラク開戦時に今回の新「防衛大綱」とそれに基づく自衛隊法の改悪がなされていたならば、おそらくイギリスと共にイラク侵略に参戦していたはずです。今回のイラク戦争・占領の中でイギリス軍も戦死者をすでに出しており、負傷者は3000人に及んでいます。小泉はブレアのように自国軍を“傭兵”として米軍に差し出し、殺し殺されるれっきとした侵略軍に仕立てようと言うのです。もちろん日本の国民はそんなことを認めません。しかし今回の閣議決定の行き着く先は、イギリス軍と共にアメリカ軍を軍事的に支えるということなのです。
イラク戦争自体が国際法違反です。イラク人に対する拷問・虐待・虐殺、無差別殺戮、治安弾圧など、ジュネーブ条約や人道法に対する蹂躙もやりたい放題です。劣化ウラン弾など非人道兵器も使用しました。日本はこのようなイギリス軍と同じ事をやろうというのでしょうか。もし違うというなら、どこがどう違うのか、政府ははっきりと具体的な姿を明示すべきです。
※イギリス軍のように米軍と共に進撃しバスラを中心とするイラク南部一帯を占領する役割をすぐに果たすかどうかが問題なのではない。「武力行使」の代わりに政府がよく持ち出す「後方支援」、つまり輸送部隊、兵站部門を担うことでも同じことだ。気休めにもならない。現にゲリラ攻撃が集中するのはまさにこの輸送部隊、兵站部門だからである。「前線」であろうと「後方支援」であろうと、新「防衛大綱」が目標としているのは、米軍の侵略戦争に参戦することなのである。
※2000年に出された『アーミテージ報告』そのものが、米英同盟を日米同盟のモデルにすることを提唱した。その中身は「パワーシェアリング」。戦争と軍事力による支配の一端を積極的に担うということだ。その後、政府支配層の周りでうごめく連中の合い言葉も「日米同盟の米英同盟化」「パワーシェアリング」となった。自衛隊のイラク派兵はまさにこの「パワーシェアリング」への第一歩である。
外務省が出している『外交フォーラム』2005年1月号が「日本の安全保障」という特集を組んだ。その冒頭の座談会「安全保障の転換が迫られている」において、政府防衛庁や自衛隊の御用学者、例えば加藤朗氏は「今後の世界は、アメリカを中心として、日本、イギリスが核になりながら動いていくだろう」「日本がとる選択肢は、アメリカとの協調関係の中で、国際関係においてどのような影響力を行使していくのかということ」だと述べている。座談会の司会者は読売新聞調査研究本部の笹島雅彦氏、彼もまた「軍事的なトランスフォーメーションの流れの中で、アメリカのグローバルな戦略的な展開拠点として、イギリスや日本がハブとして考えられてきた」と、日本とイギリスがアメリカを支える戦略を描いている。外務省の座談会の司会者を読売が行うことそのことが、政府公報機関紙化した読売の姿を端的に現している。
(2) 中国を「仮想敵」に据えるとんでもない誤り。
それだけではありません。日本と自衛隊が、対北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)だけではなく、中国との軍事対決の最前線に立つという軍事外交上の大問題が盛り込まれたのです。対北朝鮮のように今すぐの課題ではなく、記述の仕方もまだまだ初歩的なものですが、しかし初めてのことです。アジアの平和と安定のためには日本と中国との平和的で友好的な関係が大前提なのに、あえて対中国敵視政策で自分の首を絞めるというのです。これは明らかに米の中長期的な軍事戦略に沿った決定です。
最近ブッシュ政権は再び対中国政策を厳しい方向へ軌道修正し始めました。先に日中間で政治問題になった中国原潜による領域侵犯をわざと日本側にリークし、大騒ぎさせて反中国キャンペーンをリードしたのも実は米国でした。途中からは米軍指揮下で日米共同で中国原潜を追尾したといいます。日本を中国封じ込めの先兵にする、日本を盾に日中を争わせるという図式が新「防衛大綱」なのです。
従って米軍再編の狙いには、日本を中東への新しい出撃拠点に改変するだけではなく、台頭著しい中国を「仮想敵」に仕立て上げ、在沖・在日米軍基地を総動員して中国を牽制すること、台湾海峡の軍事的緊張、日中関の軍事的政治的緊張を扇動するために日本を対中軍事対決の“拠点”“道具”として利用することも含まれているのです。そうすることで、米のアジアにおける軍事的経済的覇権を掘り崩す「東アジア共同体」「アジア共通通貨基金」などの動きを阻止することもシナリオに入るでしょう。アジアで米の覇権を維持し続け、米国離れ、ドル離れを防ぐには、日本を完全に抱き込み従属させ釘付けにすること、中国を封じ込め孤立させること、日中関係をぶち壊すことが最も重要な戦略目標になるのです。
こうして今回の新「防衛大綱」批判のポイントは、2つにまとめることができます。
−−第一は、自衛隊の性格の根本的変化=侵略軍化です。これまで公式には、自衛隊は「抑止力」としての存在であり、治安弾圧活動である「間接侵略対処」を除けば、「専守防衛」「本土防衛」のための活動だけが「本務」でした。「基盤的防衛力構想」と言います。これを破棄して海外派兵を「本務」にするというのです。そのためには自衛隊の組織・装備・訓練の全部を海外派兵用に根本的に改編し再組織しなければなりません。その中で自衛隊は完全に米軍に従属することになります。そして米政府・米軍の命令通り、途上国への先制攻撃侵略戦争に参戦し、米政府・米軍に全面的に奉仕するのです。これは曲がりなりにも相対的独立性を持ってきた戦後の日本の軍事・外交戦略の大転換ともいうべき事態です。
−−第二は、日本という国家そのものを丸ごと米軍の対中東侵略、対北朝鮮・対中国との軍事対決の“最前線”“要塞”にすることです。日本全体を米軍の侵略政策、軍事覇権の便利な“道具”に利用するということなのです。特に対中国軍事対決を中長期目標に据えることは、際限のない軍拡をするということです。戦後を通じてこれまで初歩的とは言え中国を事実上の「仮想敵」としたことなどありませんでした。その意味でも歴史的な大転換に道を開くと言えるでしょう。
私たちはこれら全体に反対です。憲法第9条を頭から否定するものであり、明文改憲をする前にあたかも明文改憲をなし崩しで強行するかのような、断じて許せない暴走行為です。
(3) ブッシュ政権が事実上決めた今回の新「防衛大綱」。行き詰まり破綻し始めたブッシュの先制攻撃戦争戦略に日本の将来を委ねる愚挙。
新「防衛大綱」「中期防」の決め方も異様でした。新戦略の下敷きになったのは防衛庁の「防衛力のあり方検討会議」、首相の私的諮問機「安全保障と防衛力に関する懇談会」の報告だと言われていますが、言うまでもなくこれらをリードしたのは、日米外交・防衛当局の審議官級協議、日米安全保障協議委員会(2プラス2)など、すでに既成事実が先行している「日米戦略対話」なのです。
つまり米国防総省と国務省から指図された通りに、政府と防衛庁と自衛隊が作文したのです。いわばブッシュ政権が日本の新「防衛大綱」を決めたも同然なのです。信じがたいことですが本当のことです。小泉とその政権の閣僚、防衛庁幹部、外務省幹部、自衛隊幹部の誰もが、今や「米国の国益は日本の国益」「米国に良いことなら日本にも良いこと」などと、自発的な対米従属の軍事外交路線を歯止めなしに推進しているのですから、米政府側のやりたい放題、言いたい放題の「戦略対話」になってしまっているのです。
いまや全世界の人民に脅威を与え続けているのは他でもない米であり、ブッシュ政権なのです。そして小泉政権は今回「防衛大綱」「中期防」によって、米の軍事戦略に何の留保もなく全面協力を誓ったのです。これは何を意味するのか。向こう10年、日本は米に指図・命令されるがままに世界中に侵略と軍事介入を共にすることを宣言したということです。結局、世界の脅威の源泉ブッシュと米国の軍国主義に日本と日本の国民の現在と未来を預けてしまったということになるのです。
それにしてもこれほどの大転換が、現在と将来の国家の命運を決するような重要事が、閣議決定のみで済まされることの異常さを問題とせざるを得ません。国会は閉会中であり、この決定に口をさしはさむことすらできません。まったく無視されています。まして世論がこれにどう反応しているかさえ伝えられません。私たちがこれまで何度も見せつけられてきた小泉的手法そのものです。何事も勝手に決めて押し付け、強引に押し切る。政治の私物化以外の何ものでもありません。
果たしてこれで良いのか。私たち日本の民衆は、アメリカの軍事戦略に追随して世界中に自衛隊を派兵し、侵略した国・地域の人々を殺戮しまくることに合意を与えた覚えはありません。平和憲法に多くが賛成し、アジア・太平洋の、そして中東諸国との平和的外交的関係・相互信頼の下で善隣協力関係を結び、友好的な関係を結ぶことを望んでいるはずです。平和的な外交でなく、すべてを軍事で、戦争で決めてやろうという好戦的なブッシュ政権を受け入れている国民はほとんどいません。
しかも、ブッシュの軍事戦略はイラク占領支配の破綻で、今はっきりと行き詰まっています。新たな傀儡政権を作るための「選挙」、イラク「内戦」を招来しかねない「選挙」を何とかでっち上げるために、武装勢力・抵抗勢力の激しい抵抗を受け、イラクから逃れるに逃れられず泥沼状態に入りつつあります。いずれイラクから撤退を余儀なくされるでしょう。日本は、すでに限界が見え始めたこのブッシュの侵略主義、軍事中心主義に、日本の国の運命を弄ばれるがままに身を委ねようとするつもりなのでしょうか。全世界の民衆の脅威と憎悪の源泉、根源でしかない国にいつまで付き従うつもりなのでしょうか。私たちは反対です。以下、新「防衛大綱」に即して具体的に批判しましょう。
【2】 新「防衛大綱」「中期防」の危険極まりない特徴−−米軍の“傭兵”“手下”として世界中に海外派兵。日本を対北朝鮮・対中国軍事対決の最前線に。
(1) 国際テロ組織、北朝鮮、中国−−3つの「仮想敵」のでっち上げ。
すでに述べたように新「防衛大綱」は、ブッシュ政権の指示通りに策定したために、「脅威」についても「仮想敵」についても全く同じ認識です。新「防衛大綱」は3つの「脅威」、3つの「仮想敵」を明らかにしました。
まず第一に「国際テロ組織」です。実際「防衛大綱」の中には、「国際テロ組織などの非国家主体が重大な脅威」であり、「大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散の進展、国際テロ組織等の活動を含む新たな脅威や平和と安全に影響を与える多様な事態(以下「新たな脅威や多様な事態」という)」への対応が「今日の国際社会にとって差し迫った課題」と述べています。まるで米の軍事戦略文書を読んでいるようなものです。
今回の「防衛大綱」の中で、どこに脅威を見出し、逆に何を軍事力で攻撃するかという点で私たちが最も注目すべきは、中東から東アジアに至る「不安定な弧」に対する関心を異常なまでに示していることです。「特に、中東から東アジアに至る地域は、従来から我が国と経済的結び付きが強い上、我が国への海上交通路ともなっており、資源・エネルギーの大半を海外に依存する我が国にとって、その安定はきわめて重要である」との認識です。すなわち、「不安定な弧」が「対テロ戦争」においてきわめて重要な環であり、この地域で起こることは日本の「安全」に関わることであり、これに積極的に介入することを目指そうとしているのです。もはや自衛隊の活動範囲は、日米安保条約に規定された「極東」はおろか、新ガイドライン・「周辺事態法」で規定された範囲、テロ特措法やイラク特措法をも覆す無際限の拡大を示しているのです。
※「不安定な弧」にしても「対テロ戦争」にしても、その最大の狙い目は石油資源の支配と略奪である。「「対テロ戦争」、米軍再編(トランスフォーメーション)の本質は“石油の軍事的支配” 」(署名事務局)参照。石油・軍事問題専門家マイケル・クレア氏は、米軍のトランスフォーメーションの狙いは米軍の「石油防衛軍」への再編にあると規定した。新「防衛大綱」は、自衛隊もまた「石油防衛軍」になると宣言したのだ。日本の軍事戦略である「防衛大綱」で「シーレーン」と「中東の石油資源」の戦略的重要性をここまで明け透けに主張したのは初めてである。
第二に北朝鮮です。「防衛大綱」は「北朝鮮は大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発、配備、拡散等を行うとともに、大規模な特殊部隊を保持している。北朝鮮のこのような軍事的な動きは、地域の安全保障における重大な不安定要因であるとともに、国際的な拡散防止に対する深刻な課題となっている」と北朝鮮敵視を露わにしています。
第三に中国。これが今回の新「大綱」の最大の特徴の一つです。これまでは北朝鮮脅威論がことさらに煽られてきたのですが、これに中国脅威論が付け加わったのです。米政府に呼応し軍拡と軍国主義復活を推進する勢力が中国脅威論を煽り立て始めたことに警戒しなければなりません。
−−「大綱」によれば、中国は「核・ミサイル戦力や海・空軍力の近代化を推進するとともに、海洋における活動範囲の拡大などを図っており、このような動向には今後も注目していく必要がある」と、中国への牽制を露骨に出しました。中国の軍事専門家は、今後日本が@南西方面の兵力強化、A空中給油機など、即応性、機動性を高める、B統合幕僚組織の新設、情報本部の長官直轄化で統合運用体制を強化する、C弾道ミサイル防衛システムの配備等々を加速するだろうと指摘しました。
−−こう見ると、先月10日、細田官房長官が記者会見し、事実上中国原潜が領海侵犯をしたことを発表し、海上自衛隊に海上警備行動を発令した事件も、無関係とは思えません。事件は実際、米政府・米軍主導で発表のタイミングが図られたことは明白です。原潜侵犯事件はまさに今回の「大綱」で中国を「仮想敵」に格上げするのに利用されたのです。
※「中国侵犯艦 米原潜が1カ月間追尾」(東京新聞) http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20041208/mng_____sei_____001.shtml 記事は「中国の漢級原子力潜水艦が青島の原潜基地を出港した直後から米国のロサンゼルス級原子力潜水艦によって約一カ月にわたり追尾されていたこと」「漢級原潜は米原潜基地のあるグアム近くまで行っており、日本の先島諸島をはさんで米中両国の緊張が高まりつつあること」を明らかにした。
※領海侵犯の中国原潜、直前にグアムへ 米軍牽制、訓練か(朝日新聞) http://www.asahi.com/politics/update/1207/002.html
−−また防衛庁幹部が「大綱」「中期防」策定の最中にしきりに政府与党に対して「2008年以降、危機の可能性が高まる」と触れ回っていたといいます。「沖縄にF16を配備してほしい、南西諸島上空での戦闘機の滞空時間を延ばしてほしい」との要求につなげようという魂胆です。日中間でどんな軍事衝突のシナリオがあるのかと問いただされて、この幹部はいや「外交力の下支えだ」と言ったそうです。「大綱」に関わった別の防衛庁幹部は「今、中国への『懸念』を述べて、反発する国民は少ないだろう。与党からも反対はなかった」とうそぶいているといいます。非常に危険な傾向です。
※読売新聞12月17日の連載記事「日本の守り 日米戦略対話に3課題」に面白い事実が指摘された。11月11日、ワシントンで開かれた日米外交・防衛当局の審議官級協議において、米統合参謀本部の幹部が「今回の事件を踏まえ、我々は中国の動向を正面から議論する必要がある」と述べ、まさに中国の領海侵犯事件を利用して中国政策の転換を示唆するような発言を行ったという。これとは別に12月上旬にはアーミテージ国務副長官のサコダ特別補佐官が来日し、「中国に対する日本側の認識を聞きたい」と調査して帰ったという。「ショー・ザ・フラッグ」「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」など節目節目に日本の軍国主義化をせき立てた張本人が、今度は対中強硬政策を打ち出すのだろうか。アーミテージは退任後「アーミテージ報告2」を発表する予定だ。政府防衛庁・自衛隊の制服組・背広組や防衛族、周辺でうごめく連中が茶坊主のようにこの「印籠」を振りまくのは目に見えている。
さらに今回の「大綱」および「中期防」は、何を脅威と見るかの認識のみならず、脅威への具体的対処まで米ブッシュ政権と共通しています。「多機能弾力的防衛力」がうたい文句です。すなわち「新たな脅威や多様な事態に実効的に対応し得るものとする」ために、軍事力は「即応性、機動性、柔軟性及び多目的性を備え、軍事技術水準の動向を踏まえた高度の技術力と情報能力に支えられた、多機能で弾力的な実効性のあるものとする」というのです。この言い草はあたかも「対テロ戦争」に備えた米の「トランスフォーメーション」に備えた文章を読んでいるかのようです。
従来の自衛隊は事実上対ソ戦を想定した大規模戦争、正規戦だけを念頭において組織されてきました。それを根底から作り替え、米軍とともに世界中に出動して軍事行動を行い、侵略戦争や治安弾圧、あるいは現在のイラクでのように占領軍の一部に加わって行動できるようにするためには、組織・兵力構成から装備・訓練まで、自衛隊全体の改変が必要です。そこで防衛庁・自衛隊幹部は、海外派兵のための常設組織作り、国内の師団組織の改変、海外派兵に必要な装備の大量導入等々、いわば自衛隊の「トランスフォーメーション」をスローガンにしているのです。
例えば、陸上自衛隊に新設する機動的な「中央即応集団」がそれであり、そこには「緊急即応連隊」が設置されます。海外に派遣する陸上自衛隊員の輸送を効率化するため、航空自衛隊にC1輸送機の後継として航続距離の長い次期輸送機(CX)を8機導入することも盛り込まれました。すでにグアム等の演習場で市街戦演習も含め、陸上自衛隊は大きな部隊単位だけでなく、現場部隊単位で米軍の指揮下に行動する訓練まで行っています。
(2) 「他国への出兵が安全保障の要である」−−「安保観」の大転換。帝国主義、植民地主義の論理。
新「防衛大綱」は、「安全保障の基本方針」に、「安全保障」の柱として、第一の目標の直接侵略の防止・排除と並び、第二の目標として「国際的な安全保障環境を改善し、我が国に脅威が及ばないようにすること」を挙げています。この2つ目、「国際安全保障環境の改善」が全く新しい概念でありくせ者なのです。「国際安全保障環境の改善」によって「我が国に脅威が及ばないようにする」とはどういうことか? 何のことはない、上述した3つの「仮想敵」を取り上げ、これら全部を対象に、米軍と共に派兵し軍事力を展開すれば、日本の防衛につながるというのです。日本本土で日本を防衛するのではなく、海外にまず軍事力で打って出ることで日本を防衛するという発想−−これはまさに帝国主義的侵略主義、植民地主義の論理です。
こうした侵略的な考え方は、従来の戦略観をも、軍事戦略をも一挙に投げ捨てるものです。従来は「専守防衛」「基盤的防衛力」という名目で対ソ核戦争に向けて戦略が組み立てられていました。「ソ連の脅威」と対抗すると称して対ソ戦争を準備する米軍に協力することが主任務でした。日米安保での協力範囲である「極東」で、米軍の侵略的な核を中心とする攻撃力を日本の通常戦力で補完することを自らの戦略としたのです。対ソ戦争が全面核戦争にエスカレーションしかねない意味では、この日本の軍事戦略が核戦争をあおる危険極まりないものだったのですが、同時に形の上からだけ見れば「本土防衛」だけを目的にした「必要最小限の戦力」であるかのように主張することが可能でした。日本の防衛はソ連の脅威に備えることにある、とすり替えることが可能だったのです。1995年に採択された旧い防衛大綱は、ソ連が消滅し「脅威」がなくなった後も、この基本的な論理を残しました。ソ連に代わって今度は「北朝鮮の脅威」が誇張され、北朝鮮を名指しにして北東アジアには冷戦構造が残っていると煽り立て、北東アジアでの対北朝鮮を念頭においた形で日米軍事同盟、日米韓の軍事包囲網を維持したのです。
しかし今回の「大綱」の最大の特徴は、もはや北朝鮮も含めて日本に戦争を仕掛ける国、侵略を行いうる国が存在しないことが誰の目にも明らかになっている下で、「新たな脅威」を思いつくまま全部をでっち上げた点にあります。−−もう誰も日本には侵略してこない。しかし、それではこれまで営々と築き上げてきた膨大な軍備が無駄になる。日本軍国主義の基盤を解体しなければならなくなる。軍縮と兵力削減を要求される。だから何でもかんでも「脅威」にしてしまえという訳です。中東からアジアまでの「不安定の弧」で起こるすべての紛争は日本安全に深く関係する。だから自衛隊を派兵しよう。それが日本の防衛だ。北朝鮮も脅威だ。中国はもっと脅威だ。攻撃準備をしよう。軍拡で対抗しよう。それこそが日本の防衛だ、等々。
旧い防衛大綱でもアジアの情勢は日本の安全保障に重大な関係を持つという指摘はありましたが、それは外交的手段による働きかけが念頭におかれていました。しかし今回は海外派兵によって「国際的な安全保障環境」を改善しようというのです。その背景には「国家でないテロ組織には抑止がきかない」から先制攻撃を含む軍事力でつぶすしかないとの「対テロ戦争観」があるのです。他国への出兵が安全保障の要であるということを規定したのは戦後初めてのことです。戦前・戦中に猛威をふるった日本軍国主義の「砲艦政治」と海外派兵が再び蘇り、軍事戦略の柱に据えられたのです。
小泉政権はこうして海外派兵を自衛隊の「付随任務」から「本務」へ、いやそれどころか自衛隊の中心任務に位置付けようとしています。さらに、常時世界中に派兵する体制を作り上げようとしています。「防衛大綱」の「国際的な安全保障環境の改善のための主体的・積極的な取り組み」の中では「国際平和協力活動に適切に取り組むため、教育訓練体制、所要の部隊の待機態勢、輸送能力等を整備し、迅速に部隊を派遣し、継続的に活動するための各種基盤を確立するとともに、自衛隊の任務における同活動の適切な位置付けを含め所要の体制を整える」とあり、「中期防」では「国際平和協力活動に係る教育、研究等を行う部隊を新編、ローテーションによる待機態勢の大幅な拡充を図るほか、国際平和活動に資する装備品を整備する」とあります。
かつてこれほど露骨な海外派兵要求が前面に出されたことはありません。それも結局自衛隊の行動は米軍に従属したものです。全世界での米軍の「使い走り」です。「テロ特措法」「イラク特措法」という抜け道を除けば、現行憲法がある限りは自衛隊が全面的に海外派兵を実施し武力行使や侵略戦争を行うことには重大な障害があります。だから新「防衛大綱」も「国際平和協力活動」という隠れ蓑で本質をごまかしているのです。しかも、「大綱」それ自体にエスカレーションの芽が内包されているのです。海外派兵を恒常的に可能にする「恒久法」の制定、武器使用基準の大幅な緩和、武力行使の制約の撤廃、集団的自衛権の行使、そして改憲の動きと連動しています。政治的反動化の進行に合わせて自衛隊の侵略戦争への参加をエスカレートすることが前提にされており、憲法の平和主義を根本から覆すことが組み込まれていると言っても過言ではありません。
(3) まやかしの「兵力削減」。海外派兵用装備、侵略=攻撃型兵器の取得。
もたもやマスコミの“争点そらし”を私たちは見せられることになりました。新「防衛大綱」「中期防」の危険極まりない批判と国民無視の閣議決定の非難ではなく、防衛庁と財務省の“茶番劇”が新聞・TVを騒がせたのです。「冷戦の影を引きず」り、既得権を守ろうとする防衛庁・自衛隊と、「新たな脅威に対応した体制に変える構造改革」を試みる財務省の対立、ことに陸自の人員規模と予算総枠をめぐる両省の対立という「図式」です。マスコミはこぞって女性主計官の奮闘と「痛み分け」を報じました。結果を見る限り決してそんなことはありません。結局、防衛庁・自衛隊の側が軍縮も兵力削減もせずに済んだ、それどころか新たな侵略型、攻撃型兵器の取得に向けて弾みをつけたのです。
※「財務省担当主計官からの警鐘 自衛隊にも構造改革が必要だ」『中央公論』2005.1月号に、問題になった女性主計官片山さつき氏の投稿が掲載された。小泉首相の路線を称揚し、どれだけ頑張ったかの自慢が主たる内容だが、「シビリアン・コントロールの危機」なる項で、自衛隊の独走や逆に官邸側の独走が語られている。
陸自の定員について財務省は、14万5千人以下(旧大綱下では16万人)を提示し、防衛庁は常備自衛官として15万人を要求しました。両者は「国際平和協力活動や災害派遣など陸自の任務は増えており人的資源が必要」ということで一致していました。2004年度の自衛官実員は14万6千人です。削減削減と言いますが、それはウソで、結局は現行自衛官実数よりも2千人多い14万8千人という線で落ち着いたのです。
さらに防衛予算総額は約24兆2400億円で、今年度予算と比較した平均伸び率はマイナス0.2%となり、「昭和61年に中期防が採用されてからの初の減額」「予算では抑制」などとマスコミは宣伝していますが、それこそ何のことはない、この総額の他、今後「1000億円を限度」に新たな予算を追加して良いことを「中期防」の「所要経費」の項で勝手に決定しているのです。
さらに問題なのは、従来の「専守防衛」や「個別自衛権の行使」といった枠を大きく越えて、相手国の基地を叩く「敵基地攻撃能力」を防衛庁・自衛隊が保有する方向で動き始めたことです。
−−「想定射程は300`以内で、他国への攻撃は考えていない」として、長射程精密誘導弾(ミサイル)の研究費を盛り込もうとしましたが、これは公明党の反対で確かに断念はしたようです。
−−しかし、相手の防空レーダーに対する電子妨害装置の開発費が盛り込まれました。「離島が完全に制圧され、敵が地対空ミサイルや移動式の防空レーダーを持ち込んだ場合に必要」との説明の下に、F15戦闘機への搭載が検討されています。しかもこれは「中期防」に明記されているわけでもなく、「無人機等の研究開発を推進する」とした「等」に含まれているというのです。まことに人を舐めた説明としか思えません。小泉の下で防衛庁・自衛隊はやりたい放題です。
−−自衛隊はすでに、相手基地を正確に叩く精密誘導弾(JDAM)の保有や、長距離の移動ができるようにする戦闘機への空中給油機の導入も決定しています。今回の海外派兵の決定と併せて、装備の面でも自衛隊にはもはや何の歯止めもかかっていないような状態が現出しています。
(4) ミサイル防衛(MD)は、対北朝鮮・対中国封じ込めの最大の“テコ”。軍需産業復活を狙う財界の念願「武器輸出3原則」のなし崩し的緩和。
北朝鮮の脅威と中国の脅威を超誇大に取り上げて、それへの対抗と称して進めている軍拡の最たるものがミサイル防衛(MD)です。新「防衛大綱」は、このMDの開発と配備に自衛隊が全面的に協力・加担する方針を確認しました。MDは米軍が現在開発し、配備の初期段階に近づいている最も高度な軍事技術です。米軍は仮想敵である相手国の反撃を封じ込め、一方的に攻撃する能力を手に入れようとしています。日本もその能力を獲得すると公式に宣言したのです。
しかし「MDは防衛のため」とはとんでもないデマです。MDの開発配備が進められているのはアラスカと米本土の一部を除けば日本周辺だけです。日本周辺で米がMDを進めれば、この地域での緊張は激化し、東アジアの平和と安定の環境は一層不安定になるだけです。これに対抗して北朝鮮、中国が一層のミサイル軍拡、技術開発で対抗するのは自明だからです。小泉政権は、アジアで将来にわたって平和と安定を構築する努力を放棄し、MDと軍拡によって、米日軍事同盟による軍事覇権を押し付けようとしているのです。
MDはまだ開発段階にあります。この15日にも実験が失敗し、今年中に一部の初歩的システムを実戦配備するという計画を来年先送りすることが発表されたほどです。海上発射迎撃ミサイルの実験は進んだと言われますが、陸上発射ミサイルは失敗を繰り返しています。システム全体としては、まだメドが立っていないのです。しかし、日米の政府支配層が技術の未熟・欠陥などお構いなしにMDを強行する狙いは、日米の軍産複合体の“カネのなる木”と捉えており、日本を米国の従属物、手下として抱き込む手段と捉えているからです。それは対北朝鮮・対中国との対決の“テコ”なのです。
※<ミサイル防衛>MD実験が失敗 米国防総省(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041216-00000024-mai-int
※ミサイル防衛年内稼働断念 実験失敗で米国防長官(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041223-00000054-kyodo-int
※日米がMDで覚書締結 運営委員会設置など規定(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041217-00000013-kyodo-pol
日米共同のMD推進の突破口が「武器輸出3原則」のなし崩し的撤廃です。公明党の反対で「大綱」や「中期防」の中に3原則の撤廃の文言を露骨に入れなかった、だから格下の「内閣官房長官談話」になった、と勝手な説明がされています。しかし、何のことはない。「内閣官房長官談話」の方が今後の撤廃が簡単にできるから与党側は納得したのです。MD案件以外への緩和の布石なのです。政府支配層と日本経団連などの財界は、「米国との共同開発・生産案件」「テロ・海賊対策支援等に資する案件」を経て全面解禁にエスカレートさせようとしているのです。ここでも、日本の軍国主義復活を封じ込めてきた大きな制約の一つがなし崩し的に破壊されようとしています。
【3】 「新たな日米安保共同宣言」=日米安保「再々定義」、日米軍事同盟のグローバル化に反対する。
(1) なし崩しで「日米安保共同宣言」=「再々定義」、「新ガイドラインの見直し」を画策。
小泉首相と政府支配層は、一方ではすでになし崩し的に“次の一歩”に踏み出し始めました。新たな「日米安保共同宣言」=「再々定義」、「新ガイドラインの見直し」など、憲法改悪を戦略目標に据えた上で、新「防衛大綱」を具体化する作業を加速し始めたのです。しかし他方では政府と自民党防衛族などとの間に足並みの乱れも生じています。あまりにもの度外れの対米従属路線、歯止めのない米軍一体化に政府与党内に亀裂が出始めたのか。事を荒立てることなくなし崩しで進めるための深謀遠慮か、まだ分かりません。これが亀裂となって顕在化するか否かは運動にかかっています。
12月22日に幾つもの動きが同時並行で進みました。まず自民党の日米安保・基地再編合同調査会(座長・額賀前政調会長)は、米軍のトランスフォーメーションに関する「論点案」をまとめました。@日米で共通戦略目標を確立する。A日米の役割分担を明確化する。B在日米軍の兵力構成と基地問題。この3本柱からなる新たな「日米安保共同宣言」の策定や「日米防衛協力のための指針」(新ガイドライン)の見直しを検討することも打ち出しました。同調査会はこの「論点案」に沿って議論を進め、来春をメドに再編案を提言するとしています。同日の日経新聞朝刊の一面トップには、「日米、2月にも新安保宣言 アジアの脅威 共同対処」と、2月という具体的日程が大々的にスクープされました。
しかし細田官房長官は同日の記者会見で「新日米安保共同宣言」の策定=「日米安保の再々定義」を「今後の検討課題」と消極姿勢をみせたのです。「再々定義」は、国会で大論争になるであろう安保条約改定の手続きをごまかす便法です。現在進行中の米軍再編を契機とする「再々定義」は、自衛隊の活動を世界的規模に一気に拡大し、特措法制定を経ずに常に海外派兵できるようにする「海外派兵恒久法」の基本理念として大野防衛庁長官らが提唱しているものです。
また政府は26日、自衛隊の「国際平和協力業務」=海外派兵を自衛隊法上の「本来任務」に格上げする同法改悪案についても、来年の通常国会への提出を見送る方針を固めました。新たな「海外派兵恒久法」の検討作業が遅れているためと言われていますが、政府・与党内の矛盾と対立が絡んでいることは確かです。
※新安保共同宣言の検討を 自民、米軍再編で論点整理(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041222-00000098-kyodo-pol
※国際協力の格上げ先送り 自衛隊法改正案提出せず(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041226-00000036-kyodo-pol
※安保再定義に至らない 日米戦略合意で細田氏(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041222-00000090-kyodo-pol
(2) 自衛隊派兵延長反対と並んで、通常国会での新「防衛大綱」の具体化=自衛隊法改悪に反対する。
私たちは、新「防衛大綱」「中期防」が目指す日本軍国主義の新たな復活に断固反対です。この新たな戦略を一片の閣議決定だけで勝手に決めたのは小泉首相とその政府与党だけです。国会論戦の俎上に乗せられたことは一度もありません。日本の未来をブッシュのアメリカのような侵略国家に仕立て上げる目論みにゴーサインを出した覚えもありません。平和外交、全ての隣国との善隣協力関係を追求するのではなく、逆にそれを蹂躙し、米ブッシュ政権のように何事も軍事力で決定しようとする力ずくの政策を良しとした覚えもありません。
新「防衛大綱」の具体化法案は、海外派兵「本務」化法案が先送りされようとしているだけで、@弾道ミサイルの迎撃手続き簡素化、A陸海空3自衛隊の統合幕僚組織の創設、の2点だけを盛り込んだ自衛隊法改悪法案は、予定通り通常国会に上程される予定です。
※ミサイル発射兆候で閣議 政府が運用案検討(共同通信) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041226-00000002-kyodo-pol 政府は12月25日、MD運用案の検討に入った。それによれば、他国が日本に向けて弾道ミサイルを発射する兆候を把握した段階で、(1)安全保障会議と閣議を開催して、発射した場合には迎撃するとの警告を発する、(2)部隊指揮官に発射権限を委譲するというもの。来年の通常国会では、陸海空三自衛隊を統合運用するための自衛隊法改悪を優先するため、MD関連の改正案提出は微妙だとする見方もある。
世論の反対を押し切って小泉政権は一年間の派兵延長を強引に決定しました。来年3月オランダ軍が撤兵した後の「治安維持」を、政府は英国に何とかしてくれと泣きついています。しかし、このような「防衛大綱」を決定した以上、米軍にしても日本はいつまで自前で「治安維持」をしないのか、ということになります。まさに新「防衛大綱」で述べているように、「主体的かつ積極的」に治安維持を図れということです。
このように、イラクに派兵された自衛隊は、「大綱」の具体化が進むにつれて一層米軍との一体化が鮮明になり、占領軍化が進むことになります。自衛隊のイラクへの軍事的プレゼンスは、今や米の傀儡政権を作るための不公正きわまるイラク選挙の実施、「内戦」を招きかねない選挙の実施のためだけにあるようなものです。イラク人民の独立と民族解放に真っ向から敵対するものです。イラクの反米・反占領勢力、民族解放闘争を闘うイラク民衆が、派兵延長とこの新「防衛大綱」を知れば一体どうなるでしょうか。間違いなく、米軍と共に攻撃を仕掛けると判断するでしょう。政府与党は、現地の自衛隊員を殺し殺される状況に意図的に追い込んでいるのです。
私たちはイラクからの自衛隊撤退を新「防衛大綱」「中期防」の閣議決定の撤回と併せて要求します。
2004年12月26日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局