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米陸軍が活用する「超リアル」な戦場シミュレーション
戦場を模したセットに高解像度CG、音響効果を組み合わせた米陸軍の訓練設備では、再現できないのはにおいだけ。イラクから戻ってきた多くの兵士も「リアルすぎる」と評している。
オクラホマ州フォートシル(Associated Press)
華氏90度(摂氏32度)のうだるような暑さの中、兵士のケビン・メスマー氏とロフテン・オーウェン氏はがれきだらけのアパートに潜み背中を丸めている。狙撃者を避けて窓から外をのぞきながら、彼らは喧噪に満ちたイラク市街を見ている。
双眼鏡を顔に押しつけ、メスマー氏は景色を見渡し、川の向こうに探していたものを見つけた。モスクにそびえ立つミナレットの近くにある、反乱分子のアジトだ。同氏はオーウェン氏にアジトの座標をささやき、オーウェン氏はそれを無線で伝えた。
2秒後、部屋を揺らして砲火の音がひとしきり続き、爆弾が標的をもうもうたる黒煙の中に葬り去った。
任務は成功だ――この任務が実在しないということを除いては。
野戦特化連隊第3大隊の少尉を務めるメスマー氏(24歳)とオーウェン氏(23歳)は、ビデオゲームとハリウッドのサウンドステージを取り入れ、テーマパーク的なスリルのある新種の軍事シミュレータを使っている最初の兵士たちだ。
このアパートのセットは、感覚を刺激して、市街戦に参加しているかのように思わせることを主眼としている。
茶色のがれきや残骸の散らばったアパートの部屋は、中東風の装飾が施されている。一方の壁には斜めに傾いた写真が下がり、砕かれたツボの破片がキッチンの小さな丸テーブルのそばに落ちている。ブロードウェイのショウのように、壁やセットのほかの部分は交換でき、そこがこのトレーニングの利点となっている。
セットはショッピングセンター規模の建物内にあり、周りには隠しスピーカーが設置され、かすかな音(犬の吠え声)も耳をつんざく音(爆弾)も音響効果で表現できる。では、窓はどうなっているのか? 実際は、高解像度のCGで人工の都市景観を表示する大型スクリーンなのだ。
メスマー氏とオーウェン氏がマルチメディアによる訓練を行ったこの「Urban Terrain Module」(市街地形モジュール)は、米陸軍のJoint Fires and Effects Trainer System(JFETS)の一環として設けられた独特の施設だ。
暗い廊下を渡った向こうには「Outdoor Terrain Module」(野外地形モジュール)がある。この部屋は床に砂が敷かれ、大画面スクリーンと向かい合う形でHUMVEEが停まっている。兵士たちはCGの砂漠を目の当たりにする。この環境でも、正確に砲撃を指示するトレーニングを行う。
このトレーニングセンターが9月に始動して以来、300人を超える兵士が訓練を受けた。この施設の進化は、この先あらゆる部隊の兵士が、戦場で砲撃、航空支援、ほかの兵器のタイミングをより的確に調整できるようにするという国防総省の大規模な戦略のカギとなる。
数百万ドルをかけたこのシステムの起源は、1999年にさかのぼる。この年、陸軍は教育関係者、ビデオゲームメーカー、エンターテインメント企業が構成する「Institute for Creative Technologies(ICT)」という独自のコンソーシアムと提携した。その目的は、一見異質な分野の専門知識を合わせて、実際の戦時下の状況を模倣した人工環境を作り出すことにあった。
「これは認知トレーニング、ストレス下の意思決定に重点を置いたものだ」とICTの応用研究ディレクター、ランディ・ヒル氏。
陸軍は実射訓練にかかる費用を節約できるほか、すべてを内部で開発する代わりに外部の知識を活用することで効率化を図れる。
従来の野外訓練もトレーニングの一部として続けているが、そうした訓練では戦闘の混沌とした複雑な性質が伝わらないことが多いとフォートシルのJFETS担当ディレクター、ゲリー・S・キネ大佐は語る。
さて、先ほどの市街戦トレーニングステージでは、リック・ブルー氏がスライディングドアの後ろに隠されたコントロールルームから指示を出している。
一連のコンピュータモニタの前に座ったブルー氏は、日光のレベルや風速、気温(華氏50〜100度)などの環境要素を調整できる。
同氏は兵士たちの動きを追跡し(ヘルメットにモーションセンサーカメラが組み込まれている)、もっと意地の悪いコマンドを呼び出すこともできる。長い時間窓から頭を出している兵士は、狙撃手の銃弾が飛んでくる音を聞かされることになる。
「イラクから戻ってきたたくさんの兵士から、このセットはリアルすぎるという声を聞いた。ここで再現できないのはにおいだけだ」とブルー氏。同氏の会社は政府の受託業者で、コンピュータシステムの管理を行っている。「われわれはにおいに取り組んでいるところだ」
彼らは確実にそのためのリソースを手にするだろう。先月、陸軍はICTとの契約を延長し、5年にわたる1億ドルの契約を結んだ。
マリーナ・デル・レイのサウスカリフォルニア大学内に置かれたICTは、ほかのプロジェクトでも陸軍と協力している。その中でも最も有名なのは、分隊単位のトレーニングプログラム「Full Spectrum Warrior」だ。
ジョージア州フォートベニングにある軍事学校のトレーニングをベースにしたこのプログラムは、夏に商用版がXbox用ゲームとしてリリースされ、賞賛を浴びた。
陸軍は以前に、募兵のためにコンピュータゲームを利用したこともあった。このゲーム「America's Army」は税収を使って開発された1人称シューティング(FPS)ゲームで、例えば陸軍の定説などを教える一方で、複数のプレイヤーが撃ち合うオンラインバトルモードを無料で提供している。
またフォートルイスでは、兵士たちはオンラインゲームを使って奇襲への対応を学んでいる。
今日の兵士の多くは人生を通してビデオゲームに触れているため、フォートシルのマルチメディア訓練にほとんど問題なく適応している。
「ゲームをプレイしたことがある人なら、誰でも学び方を身につけている。彼らは多くの知識を持っており、陸軍はこれを利用してトレーニングをより効果的、効率的にできる」とICTのディレクター、ジェームズ・コリス氏。
イラクに駐留する米兵の多くは余暇に「Halo」「Battlefield: 1942」などのFPSゲームをプレイしているため、ビデオゲームをトレーニングに利用するのは意味があることだとフォートルイスで教官を務めるトニー・シュミッツ中佐は語る。
フォートシルのジム・シンガー三等陸佐は、1993年に受けた砲撃訓練は、主にプロジェクターとスライドショーを使った今の訓練と比べると、まったく原始的だったと話す。
「(マルチメディア訓練は)可能な限り現実に近いものになっている。10年でここまで来た。あと10年経ったらどうなっているのか想像もつかない」(シンガー氏)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0412/21/news068.html