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「SDI」構想も主導権をにぎる 江戸雄介(1988年)
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投稿者 外野 日時 2004 年 12 月 19 日 01:57:14:XZP4hFjFHTtWY
 

(回答先: 「宇宙兵器」開発プロジェクトを進める米国防総省 [Wired News] 投稿者 外野 日時 2004 年 12 月 19 日 01:48:35)

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 「ベクテル社が上陸した、どうするニッポン!?」江戸雄介著(1988年刊)より

 「SDI」構想も主導権をにぎる

 ”強いアメリカ”の意地がある

 アメリカ政府のトップたちは、つねに世界一の王座をめざし、アメリカのトップ企業はアメリカ政府を手中におさめ、まさしく世界の覇者にならんとする。
 アメリカという国は膨大なスケールでその力をみせつけているが、ベクテル社もそのアメリカにあって例外ではない。一建設会社が世界をめざす位置にあるのだ。
 ロックフェラー財閥とのつながりを広げながら、積極的に世界進出をはかるベクテル社は、世界をねらうアメリカ企業群のなかで先陣を切ろうとしている。
 これまで、ベクテル社がかなり広範囲にわたってアメリカ政府とかかわりをもち、まるでベクテル社と政府共和党が一心同体であるかのようだと述べてきたが、その頂点ともいえることについて語りたいと思う。
 レーガン大統領は、「レーガノミックス」で強いアメリカを宣言しただけに、経済の立て直しには必死であった。その標的になったのが日本であるのだが、公然と東芝ココム事件などをスッパ抜き、ジャパン・パッシングに徹したのも、なにものにも譲ることのできない”強いアメリカ”のためである。
 日本はコンピュータのソフトなどの技術分野で急速な発展をみせている。これからの情報化時代、大国アメリカはハード面でも、ソフト面においても、ますます日本に負けるわけにはいかない。
 ところが、負けはしないと思う反面、現実には日本の情報分野での急速な発展をアメリカとしても認めざるをえない現状がある。
 是が非でも勝たねばならないアメリカは、対抗上の見せしめもとれる、日本への制裁措置を断行するにおよんだのだ。その背後には隠しようもない大国アメリカの意地があるといっていい。
 ジャパン・パッシングのひとつに防衛費拡大要求がある。サミットでもとりあげられ、同時に、アメリカの強引さがめだちはじめたレーガン時代の最大の課題であったのが、防衛の分野なのである。
 東芝ココム違反はその防衛・軍事技術の面でも餌食になったといえる。軍事技術の点でコンピュータ関係は必要不可欠であり、ソ連に対抗するアメリカとしてはどこにも負けられない背景がある。
 それには日本の発展ぶりは目の上のコブであった。
 また、軍事面の強化はレーガン政権の目玉であるだけに、アメリカ国内においてもかなり無理をしている。防衛費は日本では考えられぬほどの枠があり、強引に押しすすめる観もなきにしもあらずである。そのなかでも、とくに強調してきたのがSDI(戦略防衛構想)である。
 技術的な面での日本の脅威というものはアメリカを十分に脅かしてはいるが、世界の頂点に立ち、世界を東西に二分してきたアメリカの最大のライバルといえばソ連をおいてほかにない。

 米ソの緊張は本当に緩和されたか

 最近やっと、10年つづいたアフガニスタン侵攻にソ連は撤退という形をとった。この理由としては、

 (1)ソビエト国内の不況
 (2)アメリカとのデタント実施
 (3)アフガニスタン侵攻の目的消滅

 があげられる。(3)のアフガニスタン侵攻の目的というのは、西側のサミットの成立理由である”石油”だ。
 ペルシア湾近辺の第三国、リビア、イラン、イラクなどといった中東諸国を舞台にして、米ソは石油をめぐって対立した。
 そのひとつがアフガニスタン侵攻である。数々の争いのもととなった石油だが、現在ではダブツキをみせる状態である。そのため、多額を投じてアフガニスタンにこだわることもなくなってしまったのである。
 この裏には、イラン・イラクをめぐっての米ソのデタント、一九八八年五月のモスクワでの米ソ首脳会談といったものがからみ、米ソの微妙なかけひきのなかでおどらされた観が大きいということも耳にする。
 ともあれ、現在の米ソ関係は表立っての対立はすこしずつ消滅するかのように思われるが、実際のところはどうなのか?
 ソ連のミサイル戦略に対抗するため、レーガン大統領が強固にすすめるSDI構想。これについてはサミットに参加する西欧諸国からも怪訝な趣がみられ、対日本の制裁措置といった問題などは度外視されてしまう。
 アフガニスタン侵攻の際にソ連制裁をいいだしたレーガン大統領に対して、このときも西欧各国は対立するほどの強い姿勢をとる場面がみられた。こと米ソの対立というものは世界の緊張につながる。
 先進各国の首脳としてはなんとか穏便にすませたいところである。しかし、当事者の米ソとしてはたがいに譲れない。アメリカの意地も最高潮となる。
 レーガン大統領の軍事面強化の動きとしては、それ以前にもアメリカ国内で、軍事予算を5年間で350兆円という常識をはずれた要求をして、この巨額の軍事予算要求にあきれかえってしまったヘイグ国務長官が辞任したといういきさつもある。
 国内外の反発をかっても巨額を投じたかったのが「SDI」である。
 ニクソン大統領以来のアメリカ首脳のモスクワ訪問が実現し、東側に隣接するヨーロッパ各国のミサイル撤去などもすすめられてはいるが、一九七〇年代後半からのアメリカの軍事面強化は、なんといっても”強いアメリカ”を実証するためのレーガン政権の最高の課題であった。同時に、ベクテル社にとっても大きな飛躍のための絶好のチャンスでもあった。
 強気のレーガン大統領はヘイグ国務長官にかわってシュルツという男を国務長官に任命することで、あくまでも「SDI」をすすめる方向へと運んだ。
 これはベクテル社に幸運の女神がほほえんだことになる。再三述べているように、シュルツ国務長官というのはベクテル社の社長であった経歴をもっている。
 ニクソン時代に米ソ日の天然ガス開発計画という大きなプロジェクトで、ベクテル社がシベリアの長いパイプラインを敷設するという表舞台に立ったとき、シュルツ氏はニクソン政権の財務長官であったコナリー氏の後任となり、この大プロジェクトに熱心に参加した。
 ここでの努力が大きく評価され、ニクソン政権を去ったあと、ベクテル社入りしているのだ。
 シュルツ国務長官の誕生で、ベクテル社のアメリカ政府を牛耳るうえでの太いパイプラインができた。SDI構想はベクテル社の手によって押しすすめられることになったのである。

 これがSD1(戦略防衛構想)だ

 では、SDIとはどんなものなのか?
 一九八三年三月二三日にレーガン大統領が提唱した「SDI」の骨子は次のようなものである。

(1)増大するソビエト戦略ミサイルの迎撃防御。
(2)宇宙空間で核弾頭を捉えて粉砕。
(3)多層防御方式で、それぞれの段階(ブースト段階、ポストブースト段階、ミッドコース段階、夕ーミナル段階)をもって迎撃する。

 ソ連の戦略ミサイルというのは、全射程1万キロにもおよぶ大陸間ミサイルである。これを4段階に分け、ミサイルの弱点、迎撃方法を計算し、このミサイルに対抗させるシステムが「SDI」なのである。
 大陸間1万キロをソ連のミサイルはたったの30分で目標に達する。そのため、アメリカ側の勝負も30分となる。
 この30分を4段階それぞれ、3分、7分、18分、20分に分け、各種の探知、捕捉、誘導の攻撃ミサイルを用意する必要がある。
 この現実ばなれした巨大な構想にどれだけの費用が必要になるのか?これがじつに、概算で1兆ドル強ときわめて巨額なのである。
 このプロジェクトを手がけるとすれば、やはり、ケタちがいの仕事ということになる。ここにベクテル社の目的があり、レーガン大統領、シュルツ国務長官が強引なまでにすすめたひとつの要因でもある。
 この構想はシュルツ国務長官が誕生して着々とすすめられている。すでに、技術のフィジビリスタディとしての研究は発注され、現在進行中のSDI技術計画としては、次のようなプログラムが伝えられているのである。

a SATKA計画……戦略ミサイルが発射されてから着弾するまでのあいだにミサイルを探知、捕捉、追尾して破壊するまでの技術研究
b DEW計画……レーザー兵器、微粒子ビームなどの迎撃兵器の研究
c KEW計画……宇宙または地上から迎撃ミサイルを発射する研究。宇宙空間での戦闘管理、通信のソフトおよびハード技術
d SLKT計画……各機能が攻撃されたときの残存性、所要電力、宇宙間輸送方式、その他の新技術の開発研究

 これらの計画にともなう必要な兵器などには、以下のものがあげられる。

ア 指向エネルギー兵器(DEW)
  エネルギーを時間的、場所的に集中して目標に照射し、機能を破壊する兵器。射程距離5000キロ、電磁波、または粒子ビームをもちいるといわれる。
イ 運動エネルギー兵器(KEW)
  高速物体の運動エネルギーで、目標を破壊する兵器、迎撃兵器(誘導して高速衝突させる)、電磁砲をもちいる。秒速20キロまでにもちいる(従来の火砲の10倍の速度に相当する)。
ウ 高エネルギーレーザー(HEL)
  炭酸ガス(ガス、ダイナミック・レーザー)をもちい、水素とフッ素の化学反応(化学レーザー)を利用したもの。高速電子ビーム(自由電子レーザー)による核エネルギー(X線レーザー)をもちいて、エネルギーの総量は10[6]ジュール以上になるといわれている。
エ 粒子ビーム(PB)
  SDI多層防衛システム。電子、陽子、イオンを高速に加速して放射する。
オ 発電プラント衛星(EP・PS)
  宇宙基地のエネルギー源となるもので、SDI兵器、監視・通信のエネルギー源として、赤道上空3万6000キロの静止衛星上に設置。
カ ミラー衛星(MSI)
  ビーム反射機能をもつ衛星で、地上からのレーザービームを発射させて、ミサイル弾頭を迎撃する機能をもつ。ミラー全体の直径は10メートルくらいのもので、赤道上空高度3万6000キロの中継ミラー衛星と、高度数百キロの戦闘ミラー衛星の2種類がある。
キ 大気圏外再突入迎撃システム(ERIS)
  地上または航空機から発射される運動エネルギー兵器で、地上1000キロの大気圏上空で夕ーミナル段階で弾道を高速衝突で破壊する。

 これらは「SDI」構想のごくごく一部にすぎない。
 目的が軍事的なものであるだけに、この構想のほとんどはべールにつつまれているのが実際のところである。
 だが、こうした研究のためにペンタゴン(国防総省)の外局として「SDIO」が設置され、着実に巨大な構想が実現の一途をたどっているのである。
 ひとくちに「SDI」といい、ただ、ソ連の大陸間ミサイルを迎撃するためのミサイルをつくりだそうというものではない。
 目的はそこにあることには変わりないのだが、失敗の許されないものだけに複雑な構想である。
 ひとつひとつの計画をならべてみても理解しがたいかもしれないが、あらゆる場面を想定し、どんな場合でも身を守ることのできるように綿密に計算された研究であることはおわかりいただけるのではないだろうか。
 そして、この構想が複雑なだけ、莫大な費用が必要になってくることもご想像いただけると思う。ここにベクテル社が登場するのだ。
 建設、エネルギーなどを幅広く手がけてきたベクテル社にとって、宇宙を舞台にしたこの巨大なプロジェクトはもっとも望まれる絶好のプロジェクトであるのだ。なにしろ、われわれの想像もつかないほどの巨額の利益を得ることは間違いないのである。

 ベクテル社は宇宙開発における政府御用達業者だ

 ベクテル社がアメリカ政府と密着した関係であるため、この巨大な構想にタッチできることは明らかだが、それとともに、ベクテル社にはこれまでにも宇宙兵器産業に数多くかかわり、手がけてきたという実績がある。
 宇宙というと、人工衛星やロケットというものが想像できると思う。一八九八年にソ連のチオルコフスキーが「ロケットによる宇宙空間の開発」を発表してから、われわれの生活にも宇宙の広大な空間が身近になってきた。
 数多くの人工衛星が打ちあげられ、気象観測のうえでは欠かせないものとなり、いまでは世界各地で放送による生中継で世界じゅうの人と対話することが可能となった。同時に、はげしい米ソの宇宙の争いも生まれた。
 人工衛星は放送や気象観測といったわれわれの生活に直接関係した事柄だけではなく、東と西のかけひきのうえでもあらたな緊張を生むものとなった。
 近年、各国の防衛費が拡大され、高度技術による宇宙を舞台とした防衛構想が広がりつつある。防衛とはいえ、ひとつ間違えば大きな危険をともなう。
 あらゆる利害関係も大きい。世界各国の反応はさまざまで、アメリカのSDIに反対する国も多いが、すでに、こうした宇宙軍事産業は動きだしているのである。たとえば、軍事衛星をとりあげてみても、次のようなものがあげられる。

a 迎撃衛星……敵の弾頭または衛星に接近し、会合して破損する。
b 偵察衛星……現在アメリカには3か所ある。ソ連ではコスモスの名前で多数あり、広い地域の画像偵察と望遠レンズでの精密な写真撮影が可能である。
c 早期警戒衛星……SDIとも関係するもので、敵の大型ミサイルを探知、警報する。
d 電子情報衛星……エリント衛星ともいわれ、現在アメリカにはフェレット、ヒッチハイカーと呼ばれるふたつがある。
e 海洋監視衛星……アメリカではノースと呼ばれ、4個でペアを組んで作動し、ソ連ではコスモスと呼ばれ、2個でペアを組む。
f 航行衛星……航行する船舶、航空機、ミサイル、軍隊の移動を探知、監視する衛星。アメリカではトランジット、ノバ、ナブスターがあリ、ソ連ではコスモス、グロナスがそれである。
g TACAM0……海軍弾道ミサイル原潜に直接指令を伝える戦略通信システム。
h OTHレーダー(超水平線レーダー)……水平線を越えて目標を探知するレーダー。
i ステルス技術……レーダーによる航空機ミサイルの早期発見を困難にする技術。
j 防空武器体系……侵攻してくる敵のミサイルや航空機を識別して迎撃する武器体系。

 これらの技術や詳細については最重要軍事機密であるからまったくわからない。しかし、こうした兵器の存在を明かされるだけでわれわれにとっては超現実の世界であり、驚くことばかりである。
 これら軍事産業の発展には巨額の予算が投じられ、なによりも重要視されているプロジェクトである。
 取りあつかいに関係する民間企業側としても、すべて軍事技術は特命業者が独占し、その取扱高ですら未発表なのである。
 そのため、特定業者は巨大受注であっても国民の目からはいっさいみえず、政府の保護のもとで莫大な金額が動いているのである。
 ベクテル社はこうした政府の最高機密にかかわる特定業者である。いったいどのくらいの金額でこれらのプロジェクトを請け負っているのか、国民にはおよびもつかないことだが、表だっておこなってきた原子力発電建設の独占的事業などとは比べものにならないほどであろうことはたしかである。
 日本において、東芝や三菱、NECなどの企業が、原子力設備関係から衛星通信、バッチ・システムに進出しているのと同様のことであるが、アメリカと日本では軍備にかける防衛費がケタちがいである事実をみても、ベクテル社がSDIをはじめとする宇宙軍事産業にかかわることがどれだけの利益になるかは想像できると思う。
 ベクテル社の営業案内のなかで、「ソーラシステム、エネルギー貯蓄システム、石炭ガス発生装置、ガス、タービン、水力発電所」といったものが業務内容としてあげられているが、実際に利益をあげ、ベクテル社をささえる業務内容が、字宙軍事産業の分野なのである。
 アメリカ経済は伸び悩み、国内財政についてもけっして強く出られる数字ではない。そのため、海軍でも大幅に予算が削減され、一九八八年二月二二日にはウェップ海軍長官が予算カットに反対し、力ールリッチ国防長官と対立したあげくに辞任している。
 対ソの関係においては、レーガン大統領がモスクワのゴルバチョフをたずね、米ソ首脳会談にのぞんだ。
 米ソ関係に積極的な両国ではあるが、おたがいに「強い国」を自認するかぎり、両国の武器を排除することはできない。
 つねに、軍備を敷き、緊張感をもってたがいをみつめあっている状況である。財政困難といわれても、宇宙軍事産業に対するあつかいに変化はない。むしろ、徐々にこれらプロジェクトの開発は加速されつつある。
 ベクテル社の仕事も拡大することはあっても失われるものではないということになる。そして、SDI構想は着実に、ベクテル社の手によって完結への道を歩んでいるのである。
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