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社説:
新防衛大綱 多機能防衛に厳格な節度を
政府は10日の閣議で新防衛大綱を決定した。同時に次期中期防衛力整備計画(次期防)も閣議決定したが、ミサイル防衛(MD)システムとテロなど新たな脅威への対処を防衛力整備の柱に加え、自衛隊の国際協力に重点を置いているのが特徴である。
大綱を見直すのは、防衛政策を大きく転換するからだ。今回は向こう10年の安全保障の道筋を示すものだが、国の守りの形態が大きく変わり、自衛隊の海外での活用のあり方も変容する可能性が大きいだけに、通常国会では十分な議論が必要だ。
防衛大綱は米ソ対立の76年に策定され、冷戦崩壊と自衛隊のPKO(国連平和維持活動)参加を受けて95年に改定された。
今回は、昨年12月の政府のMD導入決定を受けて、理屈を後付けする形で大綱を見直した。北朝鮮の弾道ミサイル攻撃を想定して導入されたMDは、純粋に専守防衛の兵器であるというのが政府の考えだ。だが、米軍のミサイル防衛構想に組み込まれることで、日米の軍事一体化は確実に進行する。専守防衛の域を超えることはないのかどうか。政府にはそうした懸念を払しょくする責任がある。
01年9月の米同時多発テロや北朝鮮の武装工作船などを踏まえたテロやゲリラへの対処では、防衛庁長官直轄の新たな部隊を設置することが次期防に盛り込まれた。テロ組織の動きなどに対しては、ふだんからの情報収集はもとより警察、海上保安庁などとの緊密な連携が不可欠である。
軍の近代化を進める中国について新大綱は「動向には今後も注目していく必要がある」と注意を促している。しかし、たんに「注目」するだけでなく、実際にはその動きを「脅威」とみているとも受け取れる。島しょ部侵略への対応に初めて触れたのは、将来の台湾海峡での武力衝突の可能性を懸念してのことではないか。日中の緊張が高まらないよう外交努力が必要なのは言うまでもない。
新大綱は自衛隊の活動について、「国際的な安全保障環境の改善」に積極的に活用する考えを示し、国際活動を自衛隊の本来任務にすることを示唆した。ただ、イラク派遣にも根強い反対論があるのを忘れてはならない。海外派遣を本来任務にしたうえで恒久法を策定しようというなら、改めて国民的な議論が必要である。
新大綱では、MD導入に伴い戦車など冷戦型の主力兵器を大幅に削減した。次期防の予算(05〜09年度)は24兆2400億円で初のマイナス予算だ。厳しい財政事情の中で防衛庁は、よりコスト意識を高めなければならない。
新大綱は従来の「必要最小限」と「節度」を重視する「基盤的防衛力構想」の考えを継承するとしながらも、「多機能」で「弾力的」な防衛に重点を移すという。
確かに、さまざまな脅威に対抗するには「多機能」な防衛力を整備しなければならない。だが、専守防衛が基本理念であり、多機能防衛もおのずから節度あるものでなければならない。
毎日新聞 2004年12月11日 0時09分
http://www.mainichi-msn.co.jp/column/shasetsu/news/20041211k0000m070155000c.html