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社説
12月11日付
■防衛大綱――この選択でいいのか
日本は重大な曲がり角を曲がった。自衛隊のイラク派遣延長に続いて、小泉政権が決定した新しい防衛計画の大綱がそのことを如実に物語る。
この大綱は、自衛隊の発足から半世紀のなかで3度目である。
米ソの冷戦時代につくられた76年の大綱は、ソ連の侵攻から国土を守ることに主眼があった。95年の大綱は冷戦終結後の世界の変化を踏まえ、日米の防衛協力を日本の「周辺」にまで広げるものだった。
ところが、こんどの新大綱はそんな地理的なことは問題にしていない。むしろ、日本の防衛政策を、小泉首相が言う「世界の中の日米同盟」に積極的に組み込もうとする。大量破壊兵器の拡散や国際テロなどの新たな脅威に地球規模で対処しようとする米軍にどう協力するか。重心はそこに置かれている。
安全保障の目標は、日本に対する脅威の排除とともに「国際的な安全保障環境の改善」にある。それを「米国との緊密な協力関係を一層充実させる」ことで達成する。そう明記された。
それは、今後備えようとする兵器や編成にも表れている。北朝鮮の脅威に備えたミサイル防衛の配備、テロなどの緊急事態に常時備える防衛庁長官直轄の即応集団の設置などは一例に過ぎない。ミサイル防衛のための対米協力として、武器輸出3原則も緩和された。
ブッシュ政権が進める米軍の再編にも触れ「新たな環境の下での戦略目標に関する日米の認識の共通性」の重要さを指摘し、米側が「不安定の弧」と呼ぶ中東から東アジア地域が日本にとってもきわめて大事だと強調してもいる。
だが日本の防衛政策は、新大綱が示す方向にこのまま突き進んでいいのか。
日米は同盟関係にあるにしても、脅威の見方から脅威への具体的な対処まで、米国の軍事戦略をそのまま受け入れ、協力することが、必ずしも日本の利益になるわけではない。今の米国と世界の現実を踏まえれば、日米同盟を強化しさえすれば何事もうまくいくほど単純ではないのだ。
米国が始めたイラク戦争をめぐって、世界は分裂している。米国に付き従っているだけでは、これを修復して国際協調態勢を立て直そうにも思うに任せない。
米国と一体化しつつ、自衛隊の海外への展開を広げる日本に向けられたアジア諸国の微妙な視線も、考慮しなければならない。
さらに大きな問題は、米国と国連の対立だ。大綱はその基本方針の中で「我が国は、国際の平和と安全の維持に係る国際連合の活動を支持する」としている。しかし、核実験の禁止や国際刑事裁判所などでも、多くの国連加盟国と米国との亀裂はあまりにも深い。それが、紛れもない現実ではないか。
小泉首相は「世界の中の日米安保」と言うが、「日米安保の中」だけに世界があるわけではない。
http://www.asahi.com/paper/editorial20041211.html