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社説
12月10日付
■派遣延長――大きな不安を残しつつ
いつもぶっきらぼうな小泉首相にしては、随分と低姿勢な語り口だった。
「国民のみなさまのご理解とご協力を心からお願い申し上げます」。自衛隊のイラク派遣1年間延長を発表した記者会見で首相はそう言って頭を下げた。
各種の世論調査で6割以上の人々が延長に反対している。イラクの秩序再建の展望も開けない。それでも自衛隊を引くことはできない。首相の言葉と表情からうかがえたのは、決断の苦しさとともに前途へのぬぐいきれぬ不安だった。
朝日新聞は今月2日付の社説で、国民議会選挙が終わり、オランダ軍も引きあげる来年3月までに自衛隊を完全に撤収させるよう主張した。
サマワでの実績は評価するが、自衛隊にできることの限界が見えた。米国を支えるより、イラクの再建策を国際社会とともに作り直し、日本も出直した方がいい。そう考えるからだった。
首相の言葉に、それをしのぐ説得力はなかった。日本外交の基本は日米同盟と国際協調であり、それを具体的に実施している。首相は自衛隊派遣の意義をこう説いた。日米同盟についてはその通りだろう。だが国際協調に実体はあるのか。
復興をうたった全会一致の国連決議はできたが、多国籍軍への参加は30カ国で、仏独もロシアも中国もいない。撤収する国も続く。米軍だけが開戦以来最大の規模に膨れ上がろうとしている。
イラクの混迷の大きな原因は、実質的な占領状態に対するイラクの人々の反感と、亀裂が入ったままの国際社会の無力さにある。それが来月の国民議会選挙を危ぶませてもいる。首相の説明は、この現実からあえて目を背けている。
「日の丸の旗をつけた車に乗ると、住民が手を振って歓迎してくれる」とも首相は言った。サマワ周辺ではそうかも知れない。だが、イラク全体を見なければ本当に意味のある役割は果たせない。
自衛隊の宿営地に向けた砲撃は8回を数える。延長の決定にあたり、活動を停止する場合として4点を挙げた。だが、対米関係を錦の御旗にここまで無理をしてきた首相が、不測の事態が起きたからといって自衛隊を引きあげさせるだろうか。そんな不安が国民の間にはある。
そのこととイラクの現状への厳しい見方があいまって、世論の延長反対がこれだけ膨らんだのではなかろうか。
「日本国の理念、国家としての意思が問われている」。自衛隊の派遣を決めたとき、首相は悲壮な表情でこう語った。
あれから1年、戦争の大義は否定され、自衛隊員の労苦にもかかわらずイラク情勢は好転するどころではない。
延長決定の直前、防衛庁長官と自公両党の幹事長がサマワを視察した。たった5、6時間の滞在だった。延長のアリバイづくりにしか見えなかった。
みずから区切りをつけて、いったん退く。その勇気と賢さを政治が持てなかったことが残念でならない。
http://www.asahi.com/paper/editorial20041210.html