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社説：
イラク派遣延長 自衛隊撤収のシナリオ示せ
政府は９日の臨時閣議でイラクに駐留する自衛隊の派遣期間を１年間延長することを決めた。
小泉純一郎首相は記者会見で、（１）自衛隊の活動が現地で高い評価を受けている（２）サマワは治安が比較的安定し今後も「非戦闘地域」の状況が続くと判断した（３）来年はイラクにとって大事な１年になる−−などと派遣延長の理由を国民に語り理解を求めた。
小泉首相の約３０分の記者会見で、果たして派遣延長に反対する人たちの気持ちを動かすことができただろうか。
首相はサマワの治安が比較的安定している例として、自衛隊が一発の弾丸も発射していないことを挙げたが、自衛隊の宿営地内とその周辺にロケット弾など計８発が着弾したことには言及しなかった。ファルージャなどでの激しい戦闘や暫定政府が出した非常事態宣言がサマワの治安にどんな影響を与えたかも、首相の口から説明はなかった。
サマワの治安を担当するオランダ軍は来年３月に撤退する。その後はどこの国の軍隊がどのように治安確保の活動をするのか。英国の軍隊が担当するなら、どの程度の軍隊がどんな活動を行うのか。外交レベルで早急に詰めなければならない。
小泉首相が言うように、治安確保は自衛隊の任務ではない。オランダ軍の撤退後、治安を担当する外国の軍隊が駐留しない事態となったらどうするつもりか。そんな突っ込んだ話も聞きたかった。
自衛隊の給水活動では、これまでユーフラテス川の水を計４万４０００トン浄化し、現地の人たちに供給した。きれいな水を供給するようになって乳児の死亡率が大幅に減少したという話を聞いた。現地の人たちが自衛隊の駐留延長を望んでいるのは理解できる。
一方で、日本のＯＤＡ（政府開発援助）で新たな浄水施設の建設が進んでいる。来春に浄水能力がけた違いに大きい施設が完成すると、自衛隊の給水活動がほとんどいらなくなる。そのこと自体、歓迎すべきことだ。自衛隊の活動を民間技術者などが肩代わりしたり、現地の人たちが継承、発展させられるような事態になれば、自衛隊は胸を張って撤退できる。
イラクは１月末の移行国民議会選挙から１２月の正式政権発足まで重要な政治日程が目白押しだ。イラクにとって大事な１年である。同時に駐留する自衛隊にとって危険度が増す１年になる可能性がある。政府は基本計画に撤退の条件を明記したが、治安の悪化、安定などさまざまな事態に迅速に対応できる自衛隊撤退の具体的なシナリオを描くべきだ。
自衛隊は国会の承認を得てイラクに派遣されたにもかかわらず、政府は派遣延長をあえて臨時国会終了後に決定した。国会の議論を避けたとしか思えない。
政府は１３日に衆参のイラク復興関係の特別委の閉会中審査で基本計画を報告するが、国会には閉会中審査をその日だけで終わらせず、日程を延ばしてでも徹底論議する責任がある。
毎日新聞 2004年12月10日 0時37分
http://www.mainichi-msn.co.jp/column/shasetsu/news/20041210k0000m070162000c.html
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。