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イラク派遣延長:
同盟重視 見えぬ出口
小泉純一郎首相は9日、自衛隊の派遣延長を閣議決定した後の記者会見で、具体的な「出口戦略」については言及せず、来年12月に延長期間が切れた後の再延長も否定しなかった。自衛隊宿営地へのロケット弾攻撃やファルージャ掃討作戦などの治安の悪化を受けて、延長方針の明言を避けてきた首相だが、実態は日米同盟重視からくる「選択肢なき自動延長」だった。1年前と同様に対米協調姿勢が際立つ中、首相には自衛隊員の安全確保とイラク復興への主体的な関与という重い課題がのしかかっている。
◇首相に選択肢なく
記者会見で小泉首相は「自分たちの政府を作ろう、民主的な政権を作ろうというイラクの方々を手助けしたい」との思いを、派遣延長の第一の理由に挙げた。
ちょうど1年前の12月9日、最初の派遣決定に際して「米国は日本の同盟国であり、日本も信頼に足る同盟国でなければならない」と対米配慮を前面に押し出したのを修正したかに思われたが、会見の途中から「米国も苦しいと思う。同盟国としてお互い協力しながら信頼関係を醸成していくことが日本の平和と安定にも必要だ」と再び日米同盟を持ち出した。
11月にブッシュ大統領が再選を果たした時点で首相に撤退の選択肢はなくなっていた。「同盟国として、米国にとって一番大事な時に見捨てるという判断はありえない」(政府関係者)からだ。
ブッシュ氏再選直後の11月5日、首相は参院イラク・武力攻撃事態特別委員会で「イラク人は自衛隊の活動を評価している。国際社会の一員として行うべきだ」と述べ、派遣延長に強い意欲を示した。選挙結果が判明する直前の同2日、衆院本会議の答弁で「国会や国民世論の動向を踏まえ、総合的に判断したい」と慎重姿勢を見せていたのとは対照的だった。
それでも首相は「派遣延長」と明言することだけは慎重に避け続けた。11月20日の日米首脳会談でも「どのような支援を行うかは日本に任せてほしい」と告げただけだった。先の臨時国会でイラク問題の論議が深まらなかったのは、首相のだんまり姿勢によるものだ。
他方で連立のパートナーである公明党への配慮は欠かさなかった。支持母体の創価学会に根強い派遣慎重論がある同党の神崎武法代表は撤退条件の明示を要求。派遣延長の正式決定に際し基本計画に「必要に応じ適切な措置を講じる」と盛り込んだことについて、首相周辺は「公明党への配慮」と解説した。
11月末、首相は国会内で公明党の東順治国対委員長を見つけ「イラク、広報。もっとやるから」と同党の要求に応えてイラク復興特集の政府広報紙を大幅に増刷したことを得々と伝えた。今月6日付のイラク特集は前回の8倍以上の約1640万部だった。
9日の記者会見に向け首相は自分の言葉で語ろうと執務室にこもり、原稿を練ったという。迷いはなかったのかという質問に首相は「判断する際にはあれこれ考えるが、いざこうと決めた後には迷いはない」と言い切った。しかし、派遣延長か、撤退かを両てんびんにかけて熟慮した形跡はない。【徳増信哉】
◇「米と連携、外交に幅」 外務省
イラク多国籍軍からの脱落が続く中での派遣延長は、日米の「運命共同体化」を一歩進めるものになりそうだ。「世界の中の日米同盟」を標ぼうする政府は、同盟強化が日本外交の選択肢を広げるとプラス面を強調するが、他方で日本がブッシュ政権の単独主義的な世界戦略により一層組み込まれていく可能性をはらんでいる。
町村信孝外相は11月30日の参院外交防衛委員会で、派遣延長を決める閣議について「来週金曜日(今月10日)になるのではないか」と早々に予告した。小泉首相が「(期限切れの)12月14日が近づいた時点で判断する」と繰り返していた中でのフライングだったが、延長を既定路線とする外務省の「前のめり」姿勢を物語る発言だった。
外務省は、核開発問題や日本人拉致問題を抱えた北朝鮮との交渉や対中国政策、国連安全保障理事会の常任理事国入りなどの外交課題で、日米の強固な連携が生かせると考えている。外務省幹部は「孤立しかねない米国をバックアップした延長方針は、日本の発言力を高めることにもつながる」と期待している。
しかし、日米の「運命共同体化」と日本外交の独自性発揮という二律背反的な問題について、政府内で実証的な議論がなされた形跡はほとんどない。別の外務省幹部は「どこまで米国に付き合うのかが十分に議論されていないのは事実」と話している。【高塚保】
◇米政府は歓迎
【ワシントン佐藤千矢子】米国防総省は9日、日本が自衛隊派遣期間の1年延長を決めたことについて「日本の人道的努力は、イラクの安定化にとって価値ある貢献だ。米国はイラクの平和、安定、民主化に貢献するため今後も喜んで日本と協力していく」と歓迎する声明を発表した。
米国は来年1月30日に予定されるイラク国民議会選挙を乗り切るため、イラク駐留米軍の約1万2000人増員を決めるなど苦しい状況にある。自衛隊派遣は米国のイラク政策に対する「政治的支持の象徴」と位置づけられており、米国にとってその延長は支持の継続を国内外に誇示できるという点で意義がある。
◇「日独、意見相違ない」 首脳会談で首相繰り返す
9日の日独首脳会談は、日本がイラクへの自衛隊派遣の1年間延長を決めた直後に行われた。国連安保理常任理事国入りに向けた日独連携をアピールすることが主目的だったが、むしろイラクへの派兵を見送ったドイツと日本の違いがクローズアップされかねない会談だった。
「イラク復興支援活動について意見の相違は、シュレーダー首相と私、ドイツと日本にありません」。小泉首相は共同会見で「意見の相違はない」を4回繰り返した。
対するシュレーダー首相は会見で「ドイツはイラクに軍隊を派遣しなかったが、それはそのまま今後も継続していく方針だ」と語り、両者の温度差は否めなかった。
毎日新聞 2004年12月9日 23時23分
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/kokkai/news/20041210k0000m010153000c.html