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Baghdad Burning
バグダードバーニング by リバーベンド
... I'll meet you 'round the bend my friend, where hearts can heal and souls can mend...
友よ、私の心が失われあなたさえ見分けることができなくなったら、どうか私を偉大な文明をはぐくんだ、チグリス・ユーフラテスの胸元に連れて行って欲しい。そこで私は心を癒し、魂を再生させるでしょう。
2004年11月29日(月)
憔悴のバグダード・・・
ファルージャは凄まじい状況にある。とても言葉で表現できない。ものすごく恐ろしい悪夢の中にだけ存在する、そんな町になってしまった。死体の散乱する破壊された街路、崩れ落ちた家々、倒壊したモスク・・・が、何が恐ろしいといって、この数週間ファルージャで米軍が化学兵器を使っていると伝え聞くことほど恐ろしいことはない。今日、イラク保健省の調査団は、ファルージャに入ることを許可されなかった。理由はわからない。
私には化学兵器だという確信はもてない。そんなことがあるのだろうか。米軍が化学兵器を使うはずがないと思うからではなくて、そんなことをするほどまでに狂うということがありうるだろうかという思いをいまだに捨てきれないのだ。テレビで見た米軍の撮った映像を、繰り返し思い出してみる。モスクと一面の死体。同じモスクを、その前日に写した短い映像も見た。散乱する死体の多くは同じだ。だが、生きている人もいた。それが一日後には、生きていた老人は壁にもたれ、目から血が流れ出ていた。まるで血の涙を流して泣いているかのようだった。いったい目から出血させる「通常」兵器があるだろうか。バグダードの遺体安置所には、見たところ、どういう状況で死んだかわからないファルージャ市民の遺体が次々運び込まれているという。
ファルージャの負傷者は、治療を受けることができないでいる。今日は、ファルージャで爆撃を受けた、子どもが6人いる家族のことを聞いた。光速でブログし、メールし、通信するこの時代に、ひとつの都市がまるごと破壊されようとしているというのに、大虐殺(ジェノサイド)が今まさに行われているというのに、なぜ全世界は知らぬ顔をきめこんでいるのか。わからない。ダルフールですって?
アメリカ人よ、自分たちがファルージャで何をしているかちょっと見てごらん。
(訳注:2003年初め、スーダンのダルフール地方で、反政府集団と政府軍の衝突が起こり、政府の支持するアラブ系民兵が地域の黒人住民を殺害、レイプ、略奪など迫害するに至った。これまでに5−8万人が殺され、百万人以上が難民となったと言われている。今年9月9日、パウエル米国務長官は上院外交委員会で、ジェノサイドが行われたと証言した。)
バグダードの状況も、さしてよくなってはいない。電力事情はこのところ特に悪かった。電話は先週いっぱい切れた状態で、連絡ややりとりが(それにブログも)一段と困難だった。バグダードのどこでも、電話が通じないというのは珍しくもないことだ。新たに爆撃を受けると、いつもそうだ。新しく参入した携帯電話会社とすべて示し合わせてるのさと、みんなこっそり冗談を言っているが、本当のところその携帯電話だって、さほど頼りにはならない。数週間前から、海外から SMSを受信できるようになった(以前にはできなかったのだ)。遠く離れた地にあって、心配してくれている親戚や友人からときどき便りをもらうのは、うれしい。特に暗くなった居間で電話機が妖しく光りはじめたときなど。
(訳注:SMS(Short Message Service:ショートメッセージサービス)とは、携帯電話間で短いテキスト(通常100から200文字)をやり取りするサービスのことで ,Eメールとは異なる。送られたメッセージは一度サービスセンターに保存され、相手の携帯電話が受信可能状態になると送られる。)
先週は家を修理して過ごした。10日ほど前、この地区で立て続けにものすごい爆発があり、3回目か4回目の爆発で、家の片面の窓3つが吹っ飛んだのだ。家族総出で(もちろんリバーベンドもよ)、2日かけて飛び散ったガラスを集め、かつては窓だった四角い穴にビニールシートを張った。 E(弟)を窓修理屋にやったのだが、3日間予約でいっぱいだったのだ。この窓修理屋さん、毎日々々20もの窓を修理して、しっかり儲けたってわけ。
バグダードは現在、ほんとうに恐ろしいことになっている。多くの地区は、いまやミニ戦闘地域だ。いくつか名をあげると、アメリヤ、アーダミヤ、ガザリヤ、ハイファ・・・。そのほかの地区の住民はというと――毎日いつもの量の爆発と銃撃を浴びているだけのこと。
選挙は謎だ。ほんとに実施されるのかどうか誰にもわからないし、多くの人は関わりたくないと思っているようだ。どっちみち法律上有効なものとはならないだろう。選挙に参加する政党は、数ヶ月前まで統治評議会を構成していた連中とまったく同じ――アラウィのグループ、チャラビのグループ、 SCIRI(イラク・イスラム革命最高評議会)、ダーワ党などなど。アラウィは、いかにいい格好をしてみせようとも、ファルージャの一件以来おぞましい人物に変貌した。彼が政権についている限り、アメリカはイラクを占領し続けるだろう。そのことはもう、みんな思い知っている。アラウィは、ブッシュのお気に入りだ。何度も何度もそれを見せつけられて、アラウィの政府から何か独自の見通しが出てくるかと待ち続けるのは、もうみんなうんざりしている。
この頃、寒くなった。外出するときは、上着がいる。バグダードの空っ風の寒さは有名。吹きはじめるのはもっと後だが、いったん吹きはじめるや、どこまでも――骨の髄までも吹き込んでくる。ここ数週間、私は灯油ストーブと仲良し。日はどんどん短くなり、暗い季節が始まると少しばかり気が滅入る。特に停電のときは。まだ燃料不足なので、以前のように発電機を使えない。
バグダードに住む人々すべてが深い疲労にからめとられているようだ。疫病が蔓延しているようだと感じることがある。
午後10時10分 リバー
(翻訳:池田真里)