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【ロンドン=飯塚恵子】英政府は、国際テロの脅威や世界的な組織犯罪の広がりに対応するため、来年から、テロ対策と治安対策を抜本的に強化する。
エリザベス女王が23日、今後1年間にわたる施政方針演説を英議会で行い、英国内の全住民を対象とした身分証明カード(IDカード)の導入や、犯罪捜査に強力な権限を与える米連邦捜査局(FBI)スタイルの新組織設置など、各新法案の提出を表明した。
「私たちは、国際テロや組織犯罪の脅威の高まりにより、世界的な不安の中で暮らしています」
国家元首として、ブレア政権の来年度の施政方針を示した女王は、演説の冒頭でこう述べた後、治安・テロ対策関連の法案を次々と列挙した。
目玉の一つは、住民の個人情報をデータベース化するIDカードの導入だ。想定されているのは、クレジットカード程度の大きさで、指紋や虹彩(こうさい)、顔写真を刷り込むほか、氏名、生年月日、住所、国籍、就労資格などを電子チップに記録し、個人番号で情報を蓄積する方式。
カードは、パスポートや運転免許の取得や更新の際に自動的に発行され、当初は希望者を対象とするが、英国居住の約460万人の外国人には当初から所持を義務づける。さらに、約10年後をめどに全住民に所持を義務づけるという。法案提出は、来年春が想定されている。
また、組織犯罪対策としては、新たな政府組織「重大組織犯罪庁(SOCA)」を設置し、麻薬犯罪や密輸などを取り締まる。諜報(ちょうほう)機関の任務も併せ持ち、捜査員には強力な権限を付与し、米FBIをモデルとするという。初代長官には、国家保安部(MI5)の元長官の就任が取りざたされている。
さらに、テロ対策としては、捜査当局に強力な権限を与える新たなテロ対策法案の提出にも言及された。盗聴を合法化したり、陪審員抜きでテロリスト容疑者を裁判にかけられる新制度が盛り込まれる見通し。
ブレア政権がこうしたテロ・犯罪対策を強化する背景には、強力な対米関係を維持することで、英国がイスラム過激派などテロ組織の重大な標的となっているとの認識がある。
一方で、ブレア政権は、社会秩序を守るための規制強化も図ろうとしている。「地域環境清浄化法案」がそれで、壁の落書きやゴミの散らかし、夜間に大声で騒ぐなどの反社会的行動を規制するための法案だ。
英国では来年5月に総選挙が予想されており、テロ対策や社会倫理を前面に出したブッシュ米大統領が再選されたことをモデルに、ブレア首相もテロ・治安対策への取り組みを選挙の争点にし、国民にアピールする狙いがある、との見方も出ている。ただ、膨大な個人情報が政府に管理され、「管理社会」が強化されることから、与野党双方で反対意見も強い。
◆英国王の施政方針演説=英国の国家元首である国王(現在はエリザベス女王)が年に1度、議会の招集日に行う。例年11月に行われ、総選挙の直後には改めて行われる。事実上、首相の施政方針演説にあたり、首相が書き上げたものを国王が「私の政府は……する」との表現で読み上げる。国王は君臨の象徴である王冠をかぶる。「君臨すれども統治せず」の原則を守る英国の政治体制を象徴的に示す行事ともいえる。
(2004/11/25/01:33 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20041124i216.htm