潜水艦事件──ドイツの報道から

日本では「領海侵犯」で各紙とも中国への非難轟々みたいですが、ちょっと引
いて、第三者の目から見たらどういう図かを紹介します。

「中国と日本で膨らむ対立：深海からの脅威」
　　　　SZ 2004/11/18　　　　Von Henrik Bork

１８日南ドイツ新聞１１面半ページに報じられたこの記事では、まず潜水艦事
件の概略と中国側が「遺憾の意」を示したことが報じられていますが、記事の
大半は日中の軍拡競争の解説です。

１９９６年３月、米国が台湾に空母を派遣したのち、中国はロシアから４隻の
潜水艦を購入、さらに８隻を注文。

「しかし、太平洋岸の国で中国だけが潜水艦艦隊の増強と演習を強化している
わけではない。政治的に不安定なこの地域では、危険な軍拡競争が始まってい
る。先日、Far Eastern Economic Review誌は、日本は『アジアで最大で最も
近代的な潜水艦艦隊』をひそかに建造していると伝えた。この２０隻の潜水艦
は、日本の戦後民主主義の著しい後退と結びついて、北京ではアメリカ太平洋
艦隊とともに脅威として感じられている。ジョージ・ブッシュ合衆国大統領は、
台湾に新しい潜水艦を約束した」

つぎに領土問題・ガス田開発問題を概説して、中川経産大臣がそれと今回の潜
水艦問題を結びつけた発言を紹介。さらに、日本での中国軍事脅威論の台頭を
受けて、北京の首脳部はその「誇張」を懸念しているとされます。

「こうした争いが特に大きな注目を集めるのは、ここ数年、日本と中国の間で
真の話し合いが──少なくとも首脳レベルでは──なかったためである。これ
まで、小泉氏が首相になって以来の時期ほど関係が悪化したことはほとんどな
かった。同首相は極右の支持票に配慮して、３年前から毎年、靖国神社に参拝
している」・・・

「日本がその最も重要な近隣国である中国との関係をおろそかにしていること
は、この地域のあらゆる重要な問題に影を落としている。北朝鮮の核問題の解
決に向けた話し合いに成果をもたらすには、北京と東京のより緊密な協議が必
要であろう。また、アジアの経済統合もこの主導権争いに苦しんでいる。両国
は、共通の将来プランを展開する代わりに、それぞれ別個にアセアン諸国に取
り入っている。対話の欠如と緊迫化する対抗関係という背景のもと、今回の潜
水艦事故は、両サイドの扇動家にとって歓迎すべき論拠を提供している〔終〕」

小椋による註：最後の「両サイド」って、日本の中のことだけしか見えない人
は、一瞬「ウヨ」と「サヨ」のことかと思うかもしれませんが、ここでは日本
と中国のことですね。どっちの国にも「扇動家」がいて、今回の潜水艦事件は
かれらの格好の材料にされているという。日本の皆さん、そのへん、どうなん
ですか？

小椋

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